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82.隠し通路2


 まさかディアーナまでロイ爺と同じ事を言うなんてな。


 確かにあのローブは大人1人分の大きさだ。俺はまだ子供だから何とかもう1人は隠せるかもしれない。

だけど、国王と王妃、つまり俺の爺ちゃん婆ちゃん2人はローブだけでは無理。

 今回は偵察だけのつもりだが、もしもうまく2人を連れ出せる機会があるとしたら……隠し通路を把握しておかねばなるまい。


 だけどなぁ……

 

 身を隠しての行動となる今回は、馬を使えないので徒歩での移動が決まっている。

 ここから王城まで走ったとしても30分以上はかかるんだ。

 『マップ』で確認したところ、廃村までの距離はざっと20kmはある。

 いったん城下町まで戻って、廃村まで行くのに……どのくらいいかかるんだろう。

 修行のおかげで体力にはまあまあ自信はあるけど最近平坦な直線距離を走ってないからなぁ。いまいち見当がつかないぜ。

 

 ……ルッカ、この辺りに王都の抜け道とかないかな。何か視えない?

 

 『残念ながら。せめて抜け道の近くまでいけば分かるかもしれないけどね』


 うーむ。どうするか。

 ローブがあるから、本当は余裕の正面突破をかますつもりだったんだよなぁ。


 『廃村に、行くしかなくない?』


 時間かかるからやだ。

 ……なあ、重力魔法使って俺の体を極限まで軽くして、この懐に潜む虫に運んでもらうってのはどうかな。


 『は? レオがさんざん怖がってるその虫に運んで貰う?……性質的に伝達相手がその廃村にいなきゃ無理でしょ』


 虫の移動速度を考えるとさ……ルッカ頼む。通訳してくれ。


 『虫に? そんなの出来ないわよ』


 出来る。

 ルッカはアイゴンの気持ちが分かるエルフだ。

 ルッカなら出来る。

実は物分りの良いヤツかもしれないだろ?


 『出来ないわよ! アイゴンだって受信のみなんですけど?』


 頼むよ。

 ……俺だってまだ自分に重力魔法使った事ないんだぜ?

 こないだバカ皇子入りの箪笥で試して大丈夫そうだったから言ってるだけなんだからな。

 本当はやるのめっちゃ怖いんだぞ!?


 『はあ……”アイゴンの視線がちょっと怖い”って』


 誰が?


 『虫がよ! 一応、運んで欲しいって頼んでみたけど ”何言ってるのか、ちょっとよく分からない” って呆れられたわよ。私が、虫に!』


 へー! ルッカ、虫とは念話出来るんだな。

 分かった。無理なんだな。

 ……しょうがない。走るか!


 『……だから最初から無理って言ったでしょ!』


 ローブが風でひるがえりうっかり姿が見えてしまう事の無い様に、がっつり着込み、裾を縛ると俺は屋根伝いに全力で廃村へと移動を開始した。


 舗装された道を行かずに最短距離を狙って移動してみれば、体の軽さも幸いしてか2時間ほどで廃村に到着!

 メイならもっと早く到着してたかもな。

 ……メイに早く会いたいぜ。


 『はいはい、雑念はいいからさっさと行く! あの家でしょ?』


 ロイ爺が言っていた柵のある家は、割と入り口近くにあった。

 廃村なので人はいないはず。

 気配も感じないし、鑑定でも人の反応はない。村はずれに魔物がちょっと巣を作ってるくらいだ。

 念のためにルッカにも視てもらおう。


 『問題ないわよ』


 サンキュー。

 アイゴンも大人しいってのは安全の証。


 キイィ……


 そっとドアを開けて急いで入る。

 家の中は簡素なテーブルと椅子、小さな棚があるだけ。

 人はもちろんいない。

長年人が住んでいないのを実感させる砂埃と蜘蛛の巣にカビの臭い。


 『こっち、奥の部屋に地下階段があるわ』


 分かった。

 ルッカの先導に付いていく。

 サラサラの細くて淡い青色の髪はルッカが歩いても揺れる事はないが、とても綺麗で触ってみたくなる。

 ルッカの姿が見えるのは本当にいいな。


 『ありがとうございます。でも気持ち悪いから変な感想はやめて下さい』


 ……ごめんなさい。


 奥の部屋はおそらく寝室だったのだろう。古びた開きっぱなしの箪笥が2つ。部屋の中央にはこれまた古びたベッドがある。

 ベッドをどかし、敷いてある絨毯を剥がすと明らかに人の手で無理やり作った階段が現れた。


隠し通路、発見!


 『さ、探検の始まりね!』


 そうだな! わくわくするぜ。


 『王族の逃げ道なら罠は無いはずだけど、きっとあるわよ。気を付けてこのルッカ様に付いてらっしゃい!』


 オッケー!

 ……ふん。ロイ爺の改良版SASUKEで鍛えた俺だぜ?

 鑑定もあるし、余裕余裕!


----------------------


 ……お、おい。

 どうなってんだ……ここ罠だらけじゃんか。


 さっきから、正規ルートはひたすら人が一人歩ける程度の幅しかない。

 それがあみだくじの様にくねくねくねくね……。

 道は単純な一本道のはずなのに、なかなか前に進めねぇ。


 ……俺もルッカみたいに、宙に浮かんで進みたい。


 『レオも死ねば飛べる様になるわよ? ほら、さっきから何度も言ってるけど雑念は不要です。無駄口叩く暇があるなら粛々と歩きなさい』


 う……無理。


無理だ。


無理無理無理無理!


 この細面倒臭い道はうざ過ぎる!


 ごめん、ルッカ!

 俺は、俺は……重力魔法を使うぞーーーっ!!!


 『ちょっ! バカっ』


 前世から鍛え上げた妄想力を使い、ふわっと宙に浮かぶナイスな俺を想像して……発動。


 ……う、浮いた。浮いたよ!


ルッカ、俺、浮いてる!


 『……』


死んだらどうしようかと思ったけど、やってみるもんだな!

だけどこれじゃ浮いてるだけで前に進めない。


 そうだ、風! 風を起こして俺を運ぼう。


 よっ……う……


うぎゃあああああああああああ……


 軽くなり過ぎた俺は自分で起こした風に吹っ飛ばされ、見事に王城入り口の手間の壁に激突して止まった。


 い、痛でぇよ……鼻が……鼻が折れた。


 ……早く、回復……


 ……ふうっ。


 この程度の痛手、大したことないぜ!


この技、もっと練習すればパフォーマーとしても生きていけるんじゃね!?


 後からきたルッカが残念そうな表情で俺を見ている。


 だが大丈夫だ。

 新技をモノにした俺の凄さを見せつけてやれば、ルッカも例の如く羨ましがるに違いない!

あ、ルッカはもう浮いてたか。

まぁそんな事はどうでもいいや。


 さあ、王城の探索といこうじゃないか!

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