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77.よそ見


 夜更けまで地べたに座っているとケツが痛い。

 ホームレスのごとく横になってみるとかなり楽だ。

 ディアーナは軽く顔をしかめたが特になにも言わなかった。

 ディアーナもケツが痛いのか? 無理せず俺の様に横になればいいのに。


 陽が落ちて夕暮れ時になると、黒光りした虫が羽音を立てて俺の顔目がけて飛んできた。

 ヒィッ……

 顔に当たる前にキャッチ。……ああ、触ってしまった。

 伝達虫だと分かっていても怖いものは怖い。キモいものはキモい。


 『アイゴンの方が見た目はグロくない? ただの虫じゃない』


 そういう問題じゃないんだよ。

 

 俺の手の中でモゾモゾと動くそいつを恐る恐る耳に当てる。

 耳にヤツの足が当たって鳥肌が立つ。


 『にーに! メイだよ! きこえる? ようじはないよ! それじゃあね!』


 メイの声が聞こえる。

 鳥肌は止まらないが、たった一言の何でもないメッセだったがメイの声には癒された。

 俺に近づき一緒に聞いていたディアーナも珍しくほっこりした表情を見せている。

 メイの癒しは世界を救うかもしれないな。


領地の方は大丈夫そうだと一安心。

まずいのは王都チームの俺達だ。

俺達は今回2人。

ルッカとアイゴンがいるが実質2人だ。

これだけ治安の悪くなった王都を見せつけられたら不安になってくる。


 俺は虫に、王都の城下町の様子や周辺の情報のメッセージを込め虫を放つとブーンと音を立てて勢いよく飛んで行った。


ルッカ、何か視えるか?


『っていうか明らさまにマズいでしょ。これは』


だよなぁ。

アイゴンは……寝てるな。

呪いの類いは大丈夫なのか。


『……私、呪い担当はアイゴンに取られるわ、姿見消しの術はあのローブに取られるわでレオに会ってから良い事がない』


なっ? …なんだよいきなりのネガティヴになるなよ。

ルッカは可愛いからいいじゃん!


『……可愛い担当はメイちゃんがいるじゃん』


いやいやいやいや! 大丈夫だよ!

ルッカ色々視えるじゃん?

あと可愛いから大丈夫だって!


『可愛い可愛いって! 私ってそれだけなの!? もう生きてる価値ない! ……って死んでるし! もうっ』


ルッカよ、……いきなりどうした。

なんだよ……俺どうしたらいいか分かんねーよ。


『私もチート欲しい。私も眷属欲しい。……ねぇ。私と入れ替わって?』


まさかの悪霊発言!?

いいか、ルッカ。その発想は極めて良くないぞ?

だいたい楽には成仏出来なくなるやつだ。


『!!? ……そうなの?! 私、どうかしてたわ』


そ、そうそう。落ち着いてくれ。

スキルに何かいいのがあるかもしれないから屋敷に着いたら後で一緒にカタログ見ようぜ?


『うん、そうする』


「さっきから何やってるの?」


「いや、ルッカとちょっと」


「ルッカね……私には見えないし聞こえないけど、幽霊ってのがいるって知ると私もルッカと話してみたいわ」


「俺、通訳するよ? 」


「それはいいわ。レオには聞かれたくないの」


はい。分かりましたよっと。


ディアーナは本当に謎が多いな。

見た目は元気はつらつ女子な割に中身はミステリアスだし。

結構長い付き合いなはずなんだけどな。

相変わらずディアーナは自分の話もしないし家族の話もあの剣の時だけだ。

ルッカと話したい内容は多分死んだ家族の事かな。

それなら……ディアーナが話したくないなら俺は聞いてはいけない事だ。


シンと静まり返った暗い城下町は乾いた風の吹く音とアイリーン達の小さないななきだけ。

鑑定には何も引っかからないし気配もない。

懐で気持ち悪くゴソゴソ動く虫の違和感を感じながらの待機時間はする事も無く、そのせいで悪いことばかり考えてしまう。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


「そろそろ行きましょう」


ディアーナが耳元に顔を近づけそっと言うと、側に止めていた馬に乗り静かに城下町を後にした。


「おい、旅人か冒険者か知らんが通行料を払え」


貴族街までの一本道に差し掛かった時、ゴロツキに囲まれた。

ここまで治安が悪くなっているのか。

鑑定を使えば今までの敵よりも断然弱い。

俺達は無言で通り抜けようとしたがゴロツキはナイフを差し出し馬を襲おうとしたので咄嗟に魔法で風を出してナイフを払い落とした。


「テメエッ」


むやみな面倒ごとは避けたい。

ディアーナは何もする気がないようで無視を決め込んでいる。

俺に対処しろってことだ。


俺は黙ってアイリーンから降りると、ゴロツキの懐に入っては順番に殴って気絶させた。

魔物に比べたら動きも予想出来るし遅い!

メイとの体術戦が役に立ったな。メイには一切の攻撃は出来なかったがこいつらには躊躇なく出来た。

そしてロイ爺のアサシン特訓のおかげで急所に一撃を喰らわす事が出来た。


子供の俺が、こんな小さな俺が……図体のデカいゴロツキを一瞬で倒したぞ!


倒したゴロツキ達と自分の拳を交互に見ながら感動してディアーナを見上げたが、ディアーナは無表情で「顔は見られてないわね、行きましょう」と顎をクイッと動かして俺にアイリーンに乗るよう促しただけだった。


ルッカ……ルッカ見てた? 今の見てた?


『あっ? えーっと、ちょっと見てなかった。ごめん。考え事してたわ。何?』


いや、もういいよ。


俺達は無事に屋敷に到着した。

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