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74.魔法道具


うさぎのぬいぐるみがない。


 誰かいるのか、それとも魔法か呪いなのか。

 屋敷中を隈なく鑑定して回った所で何も見つけられない。

 ルッカなら、視えていたかもしれない、そう考えると急いで自室へと戻りオーブを探す。



 ない。


 ない…?


 ない!!


 ルッカ!!?



『…はいはい、ここにいますよー』



 オーブは、なぜか置いていた机から落ちていた。

 さっきはなかったような。


 ルッカ! どうした、大丈夫か?


 『……レオ、あなたの言っていた馬鹿皇子だけど頭おかしいんじゃない? さっきここへ来てたわよ?』


 は?


 『私をオーブごと持っていこうとしていたわ。あやうくさらわれるところだったわよ』


 は?!


 『メイちゃんが鳥に攫われている所を、あいつ…この部屋からバカみたいににやにやしながら見ていたわ。でもメイちゃん、すぐに自力で敵を倒したじゃない? それが予想外だったみたい。狂ったように暴れて私の事を床へ叩き付けたのっ……』


マシンガントークからのブレス。…死んでも息継ぎは必要なのか……?


『それで、急いで妖精を呼び出して今まで姿隠しをしていたのよ。久しぶりにやったけど成功したわ! 私ってば、多分天才なんだと思うの。…だって考えてみて? もう数百年この技を使ってなかったのにすぐに出来るって、レオが良く言ってる”チート”ってやつなんじゃないかしら! しかも霊体のまま出来たし、出来たし、出来たのよ!』


 うん。ルッカ……分かった。落ち着いて。是非その前の話を詳しく聞きたいんだけど、


『……ふぅ。仕方ないわね。一つ教えてあげる。そのバカ皇子と思われる人物が、現在この部屋の中にいます!』


 何だって?!


『場所は、あの衣裳棚の中よ。……むやみに開けるのは止めなさいよ。多分逃げられるから』


 どういう事だよ。何だよあのバカ皇子がここにいるって?! 考えがついていかないんだけど。


『事実を受け入れなさい。奴は、いる。衣裳棚の中に』


 分かった。いや分からないが…とりあえず切り替えるか。

 で、何で開けちゃいけないんだよ!


『あの人、変な服を着ているの。姿の消える服を。この部屋では私がオーブの中から見ているなんて知らないからフードみたいなものをはだけていて顔が見えたのよ。だから、むやみにドアを開けたら逃げられるわ』


 ……情報が多いな。で、じゃあ炙り出せばいいのか?


『そうよ。衣裳棚の扉の上から剣を突き立ててみてもいいんじゃない?』


 そうだな、やってみるか。


 以前窓際に設置してもらったロープを外すと静かに裳棚に静かに進み、そして衣裳棚の周りをロープで縛った。

 静かだ。物音ひとつしない。

 ルッカ、この中に本当に入っているのか? 俺かなり荒く棚を動かしたけど。


『レオ、私はずっと視えているの、私を信じなさい』


 分かったよ。

 ……衣裳棚をギチギチに縛り上げると、ナイフを突き刺してみた。

 反応ないぞ?


『もっと下狙えば?』


 この辺?


『そうそう』


 よっ。思い切りドアにナイフを突き刺した。


いたっ!!!』


 いた。


「な、なにをするである?! ……ん? 出られないぞ?

 貴様! 何をした!? この私に…この私に無礼であるぞ!!!」


 バカ皇子の声だ。…本当に中にいるのか。


 今こそ人を使って試す時が来た。まぁ間接的にではあるが。


 重力魔法を発動。衣裳棚を軽く持ち上げる様に、綿の様に浮かび上がるイメージで衣裳棚に向けると……浮いた。

 成功だ!

 やった。これで俺は重力を支配した!!!


『はいはい、早く運んで』


 俺は衣裳棚を運んで屋敷の外へ運び出した。

 安定のロイ爺もちょうど良いタイミングで登場。この棚運びミッションに参加し、使用人みんなに気付かれない様に外に出た。

ロイ爺は部屋の壁に扉を出現させて、良く分からない空間が現れた。そこを通ると、空間の奥に更に扉を出現させて、気付けば一瞬で外に出た。

 ……前権撤回。 空間魔法、必須スキルだ。


『出せ! 出せ! 早くここからだせ!!!!』


 無視。


 棚近くで焚火を作り、棚の隙間へ風を作って煙を送り込む。


『グホッ! ゲホッ!……何をするであるか! この私を何と心得る!?』


「魔物を呼んできたのはお前か?」


『……早く出せ!? 私はこの国で最も尊き者なるぞ!!』


「あの魔物を呼んできたのはお前か……?」


『……そんなものは知らん! 早くだぜ!!!』


「……燃やすか」


『まっ待て!!! 止めろ!!!』


「……いつからいたんだ」


『そんな事は私に知る由もないであろう! 気付いたらここにいただけだ!!!!』


「やっぱり燃やすか……」


『待て!!! 止めろ!!! 神殺しに近い行為であるぞ!!!』


「……詳しい話を聞かせろ。そして、着ているローブを寄越せ」


『知る事などない!!!! むしろこの私に説明せよ!!!! ……ん? ローブ?……っ!? なんだこの肌触りの悪い服は!? こんなもの私にふさわしくない!!!!』


 中でごそごそと服の擦れる音がする。

 俺はナイフで棚に小さな穴を空けると、その穴からローブを出す様に言った。


 グリグリと穴を通して捻り出されたそれは、何の変哲もない古びたローブだった。


 『試しに着てみなさいよ』


 うわっ!!! 消えた。

 ローブに袖を通した腕が景色に同化して消えてしまったかのようだ。

 

 「国宝級の魔法道具マジックアイテムですぞ?」


 なんだって? ……とうかなぜ、コイツはこんな所まできて簡単に捕まった挙句に国宝級の魔法道具マジックアイテムを俺に差し出すんだ? 目的が分からない。


 その後、どんなに尋問しても、バカ皇子は知らぬ存ぜぬの一点ばりだった。

 しかもどうやってここに来たのかも分からないだとか、なぜ一人なのかだとか意味不明の事を言っている。

 だが、このまま衣裳棚から出すのは危険過ぎる。



 それに、ルッカの証言からは”メイを襲わせたこと””オーブ”を奪おうとしたこと”は事実だ。

 そう考えると、許せない。生かしておきたくない程に許せない。



 『早く出せ! この田舎者が!!! この私を誰と心得る!!! 野蛮なテルジア家め!!!!』



 ……このまま、近くの川に流そう。


 死んだら死んだでそれでも国にとって害はないしな。


 ロープで縛った衣装棚の上から杭打ちをして完全に扉が開かないようにするとロープに重りをくくりつけ川に浮かべてみた。地味に沈むか沈まないかというギリギリの絶妙なバランスを保ちつつ流れていった。

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