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71.謎


『……今回は、オーブは無しかな』


 屋敷への帰路、ルッカがポツリと呟いた。


 ルッカ……?


 ……いや、あるよ! オーブは木の根元辺りじゃないかな!?

 ごめん! 忘れてたよ、早く探しに行こうぜ!


『えっ、大丈夫よ? ……オーブが無いのはもう分かってるから。

 それより”主”が退治出来たのはラッキーじゃない?

 レオには可愛いペットも出来たし、良かったわね!早く帰って色々調べてみたら?』


 久しぶりに無駄にマシンガントークで喋るルッカに違和感を感じる。


 俺は足を遅めて皆と距離を取って歩いた。

 

 前を歩くディアーナとメイがアイゴンの話題で楽しそうに笑っている。


 ルッカは、エルフ仲間に会える可能性から俺に付きあって貰っているからな……

 

『そういうのいいから。私はもうずっと一人だと思ってたし気にしてないの。

 アイゴン、いいんじゃない? 可愛くて、眷属で、良かったわね』


 ルッカは一人じゃないよ。俺がいるじゃないか。


『それはちょっと……』

 

 今回は……残念だったけど、エルフだって本当に絶滅したのか分からないし。


『……次に私に同情するような事考えたら本当にレオを殺して道連れにしてやる』


 なんだよ、分かったよ。ごめん。


『私は成仏までの間楽しければいいの。外の世界をある程度満喫できればいいの!』


 ルッカはそう言うとオーブの中に引きこもった。


 ……そんな寂しい事言うなよ。

 分かった。それなら、俺が探し出してやるから!


 オーブからの反応はなかった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 屋敷に戻ると、俺は自室の机にそっとオーブを置くと部屋を出た。

 ルッカの”視える”範囲がどこまでか分からないが、少し離れて考えたい。


 オーブを鑑定しても、ただの『オーブ』としか表示されない。

 その中のルッカは鑑定すら出来ないんだ。

 ルッカは死んでいるから、魂を鑑定する事はできないということなのかもしれない。


 俺は裏庭で、アイゴンをもう一度鑑定した。

 ……前と変わらない。


 あれは、本当に魔物の”主”だったのか?

 確かにあの大木のせいで周囲に凶暴な魔物ばかりが増えた。

 だけどつい最近まであんな大木は無かった。

 たった数日で泉が水たまり程度になっていたのだって異常だ。

 

 大木はこの数日の間に突然生まれたのか、泉はどうして消えそうになっていたのか。


 そして、なぜ俺の屋敷の森に起きたのか。


 意図的になんじゃないか。


 あの泉は屋敷の裏にあるから、屋敷の人間、しかもその一部の俺達しか知らないはずだ。

 ほかの使用人みんなは森に近づくなんて事をしないのはもうずっと前から知ってる。

 泉は周囲を浄化してくれるだけじゃなく、貴重な回復ポイントだ。

 それを消すことにメリットがある人間は屋敷には誰もいない。


 何で消えた?


 誰かに気付かれたのか?


 それにあの大木まものの出現。

 泉が枯れたから、生まれた……ていうのはないよな。


 だって、あの泉が現れたのも昔からじゃない。

 泉の存在に気付いた時、あのロイ爺も知らなかった。

 俺はあの泉は神様しょうじょが作ってくれたものだと勝手に思っているのだが、それならここ数年の話になる。

 泉が出来る前に魔物だらけの森でしたなんて話も聞いた事がない。

 むしろ、昔からあの森は魔物と動物の共存する普通の森だと聞いてきた。


 凶暴な魔物が増えたのだって、俺が旅から帰って来てからなんだ。


 何者かに仕込まれたんじゃないか?


 だとするとあの魔物の目的は……


 俺……か!?


 ……俺なのか?


 いくら、俺の家を潰そうとしている奴らいるとしても、俺は産まれてこのかた”病弱の息子”で通されてきたんだ。

 王都の使用人にすら名前も忘れられがちな、存在感のない役立たずの”息子”だぞ。

 自分で言って虚しくなるが、ポジティブに考えれば、つまり目を付けられにくい安全な立ち位置に俺はいるはずだ。

 一度はパーティーに出席したから俺の存在を知っている人間も少なくないかもしれないが、あれから俺の領地にプレゼントが届いた事も無いほどだ。



 そんな俺を殺したいのか。



 ……そんな奴いるかよ。

 まともに王都行ったの人生で一度きりだぜ?



 俺を殺したいなんて思った奴はあのバカ皇子くらいのもんだし。



 ポトッ



 胡坐をかいて座っている俺の後ろに、何かが落ちる音がした。


 首をあげて空を見渡したが、雲一つない空が見えるだけだ。


 だけど何か……落ちたよ、な?


 体を捻って音がした地面を見ると、



 グシャグシャにはらわたえぐられたウサギの人形が落ちていた。 

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