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70.アイゴン


そんな……アイゴンが消えるなんて。


『大丈夫。アイゴンはいるわ。良く見て』


 地面には、ドロドロのとれた5cmくらいの灰色の塊が草の中で小さく動いていた。

 あれ? 色が違う……

 目に優しい薄緑色だったアイゴンは、灰色になっていた。

 本当に、アイゴンなのか? 灰色って……まさか死にそうなのか?

 

「アイゴンっ!?」


 草むらで小さく動いているアイゴンを良く見るためそっと膝をつくと、アイゴンは俺の胸元に飛びついてきた。

 手も足もないのにどうやってくっついているのかは分からないが、俺の服に灰色のまりものようなアイゴンが小さくしがみついている。


「えっ!?」


 あの繊細なはずのアイゴンが?

 今まで懐いてたっていっても、俺の周りに集まるか近くでポンポンと飛び跳ねるだけだった。

 触れる事は一度もなかったのに。

 あの、アイゴンが?


『……主の核を取り込んだんじゃない? あのアイゴン』

 

 そっと胸元に手を差し出すと、アイゴンはしばらく俺の手をじっと見つめた後、ちょこんと俺の手の平に乗った。

 ふるふると揺れている。


「アイゴン! かわいい!」


 メイが近寄るとアイゴンは驚いて手の平のうえで慌てたように何度か飛び跳ねると、俺の服の中に隠れてしまった。


「もぅっ! にーにだけずるいよ! メイにもアイゴンみせて! みせて!」


「あっ……ああ。ちょっと待って」


 俺の前でぴょんぴょん飛び跳ねながら上目づかいで懇願するメイの為に、俺は急いで服の中に手を入れて、アイゴンを探す。

 だが、アイゴンは俺の手から逃れ俺の服の中をもぞもぞと移動して逃げ回っている。

 

「うぉっ! くすぐったい! ひぃっ……アイゴン、お願い。やめて」

 

 アイゴンが襟元に逃げ込んだのを何とかして捕まえると、そっと握って取り出した。

 ゆっくり手を開いて様子をみたが、ふるふると震えているだけだ。良かった、平気そうだ。

 

 アイゴンは体中にある沢山の目をしばしばと瞬きをして俺を見ている。

 やっぱり今までのアイゴンとは違う。

 以前のアイゴンが瞬きをするのなんて見た事なかった。

 体中の目が全て大きく見開かれていただけだったから。


「メイ、まだこのアイゴンは慣れてないから驚かさない様に離れて見れるか?」


「わかった…… このへんからならいい?」


 ぴょこんと俺から一歩ほど飛んで後ろに下がる。

 アイゴンの様子は、メイが視界に入っているはずだが、俺の手の上で小さく震えているだけだ。


「うーん…うん。大丈夫そう。メイ、その距離からも見える?」


「みえるよー」


「私にも見せて?」


 メイの側に他の3人も静かに寄って来た。

 当然のようにみんな興味深々だ。


「わぁっ。 この子、はねがはえてるよ! かわいいー」


「えっ!? 本当? どこ?」


「頭の辺りに何か生えとるな。メイ、これの事か?」


「うん! はね、かわいいね?! メイもはねほしいなぁっ!」


「ふむ。羽にも見えますが、耳の様にもみえますな」


「そうね。何か生えてるのは分かったけど、小さくて何なのか分かりにくいわ」


 アイゴンは球体だからどこが頭なのかは正直分かりにくいが、確かに現在おそらく頭だと思われる部分の左右に小さく突き出した羽のようなものがあった。確かに耳にも見える。

 こういう時は『鑑定』した方が早い。


 ---------------------

 アイゴンダーク(1)

 職業:レオン・テルジアの眷属


 『ステータス』

 Lv2

 HP2/3

 MP2/50


 『スキル』

 ・呪い無効 Lv4


 『ユニークスキル』

 ・浄化

 ・呪い吸収

 ---------------------

 なんだこれ、俺の眷属って……しかも呪い関係が充実してる。

 レベルは2なのに、しかもユニークスキルを2つも持っているなんて。


『うーん。このアイゴンは”主”の核を吸収したと思うから、何か力を得たんじゃない?』


 進化したって事か?

 でもこれだけじゃ、羽か耳の違いは分からないな。


『それはそのうちわかるんじゃない? 飛んだら羽だし、飛ばなかったら耳って事で』


 そうだな……とりあえず連れて帰っても大丈夫なのかな?


『うーん、泉の水を少しは持っていったら?』


「ボン爺、このアイゴン屋敷まで連れて行こうと思うんだけど泉の水を持っていきたいんだ。何か入れ物ある?」


「ありますぞ?」


 ロイ爺がいつの間にか木の桶を手に持っていた。


「ロイ爺……いつも思うんだけど、色々出し過ぎじゃない? どこから出してるのか聞いてもいい?」


「まやかしです」


「大方、魔法道具マジックアイテムでも持っとるんだろう」


「ほっほっ……秘密ですが、そのような物です」


 ロイ爺のことだから、空間魔法辺りが怪しい。

 便利そうだけど、今の俺は特に必要ないからな。

 先日の王都までの旅の荷物も少なかったし。


 ひとまず皆で泉に向かい、それぞれ泉の水を飲んで回復。

 ロイ爺から受け取った木桶に水を汲むとその中にアイゴンを入れた。


「フッ……ゴォォォォォオァァ」


 目玉だらけのアイゴンのどこに口があるのか、そして小さな体のどこからそれだけの音が出せるのか。

 アイゴンは体中の全ての目を瞑り、温泉に入ったオヤジ並に唸り声をあげると気持ち良さ気にぷっかりと浸かった。

 ……あの声は、そこらおっさんより酷どいな。


「きゃあああああああっ! かわぃぃーーーー!!!!」


 ……メイよ、どうしてあれが可愛いんだ?


「本当、可愛いわね! 泉の水に浸かって喜んでいるみたい」


 はっ? ディアーナまで!?


『……アイゴン可愛いっ、可愛いーー』


 ルッカは棒読みだな。


『そんな事ないわよ? あー可愛い可愛いわーーーー』


 いいよ、ルッカは大幅に世代違うんだし。

 無理して年頃の女子に合わせなくてもさ、こういうのは。

 正直、俺も分からないしさ!


『レオ……やっぱりいつか取り殺してやるから……覚悟しなさい』


 へっ? なんで?!

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