6.スキル
厨房に入ると料理人達が夜メシの準備をしているところだった。
「おぉ、レオン坊ちゃん、こんにちは!」
「レオン様、こんにちは!またお外にいかれるのですか?」
「「レオン様、こんにちは!」」
「レオン様、こんにちは!もうすぐご夕食になりますのでお早めにお戻り下さいね。」
一斉に厨房のみんなが俺に挨拶してくれる。
そうなんだ。
俺の挨拶週間が始まってから、みんな、俺(3歳)の最近のブームだと思ってしまっている。
特にしょっ中勝手口を出入りしている厨房のみんなは率先して俺に挨拶してくれる様になってしまったのだ。
俺は負けじとみんなにそれぞれ挨拶と返事を返して庭に出た。
厨房のみんなも地味にポイントが稼げているんだぜ、と考えると気分が良い。
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
庭に出ると日が沈んできている。
屋敷の周りを走ったら夜になってしまうだろう。
素振りにするか。
俺は、お気に入りの木の下に置いてある木刀を持って素振りを開始した。
この木刀は、先日庭師のボン爺に作ってもらったものだ。
角のないように表面を丸く削られた、短くて軽い木の枝で、持ち手に滑り止めの革が張り付けられている。
木刀っていうよりは、『ひのきのぼう』って感じだな。
これなら俺みたいな小さな子供でもケガをせず危なくない。
前世の記憶を取り戻した初日に、庭で剣代わりの木の枝を探そうとしたが庭は木の枝どころかゴミ一つ落ちていなかった。
ボン爺に頼んだところ翌日プレゼントされたものだ。
ついでにその時簡単に教わった素振り方法を毎日練習している。
棒を上で構えて前方に下す。これだけだ。
だがやっていると修行をしている気分にもなれる。
優れた武人は基本を怠るまい。コレである。
……だけど、『スキル』に『剣術』が入ってこないんだよなぁ……
魔法剣士への憧れはあるが、今のところあまり手応えもない。
ちゃんと本通りに呪文も言わずに適当に出したショボい風で『風魔法Lv1』を取得できたのに、毎日素振りをしているのに『剣術』のスキルが手に入らない。
俺に剣術の才能が無いってことなのか?
それはヘコむ。
あのカタログから『剣術Lv1』を取得するしかないのだろうか。
『剣術Lv1』の必要ポイントは100だ。
そんなに高くないし、今の俺の所持ポイントからでもすぐに取得できるスキルではある。
だが、『風魔法Lv1』も必要ポイントが100なのだ。
実は、今の段階で狙っている『スキル』がある。
-------------------------
『身体強化Lv1』:300
『回復魔法Lv1』:500
『鑑定』:1000
-------------------------
『身体強化』は、現時点で弱すぎる俺に必須中の必須。
所持ポイント的にはもう取得できるスキルだが、もう少しポイントを溜めてから取ろうと思っている。
『鑑定』も絶対取るって決めてる。
ある程度魔法の修行をしたら、こっそり屋敷の外へ行き魔物退治をするつもりだ。
魔物の力を知る為にも必要ポイントは少し高いけど取っておきたい。
回復魔法は他の魔法よりも取得ポイントが高いから取得が難しいのかと思って狙っていた。
でも今日、拍子抜けするほど簡単に風魔法のスキルを取得してしまったから案外簡単なのかもしれないとは思っている。
まぁ、これはまた書庫に行って魔法書を探して試せば良い事だ。
「……剣術かぁ〜。はぁ。」
ため息も出る。
「素振りだけじゃ意味がないのかなぁ…」
ん? 今なんて言った俺。
”素振り”だけじゃ意味が無い?
俺は何となく棒を手に持ち立ち上がり、庭の端の方まで歩いていった。
一つの木を前にして、俺は棒を構える。
前を向き腰を落とす。そして棒を持った右手を斜めに構え、力を溜める。
「レオン・ストラーーーーッシュ!!!」
俺は勢いよく木の幹に棒を叩き付けた。
つもりだった。
棒が身近過ぎて木の幹の前をかすっただけだった。
「・・・・」
周りには誰もいなかった。
良かった……そうだ、何だか暗くなってきたな。
そういえばもうすぐ夜メシだったな。
俺は急いで屋敷に戻った。
^^^^^^^^^^^
夜メシ後、自室に戻り今日のポイントを確認する。
「ログ」
************************
レオン・テルジア(3)
職業:テルジア公爵の長男
------------
『ステータス』
Lv:1
Hp:8
Mp:2
『スキル』
・風魔法Lv1
・言語能力(自国語)
・算術Lv1
・礼儀Lv1
『ユニークスキル』
・繰り越し
『エクストラスキル』
・ポイント倍増(10)
『所持ポイント』
409P
************************
あ・・・MPが回復してる!
ゲームみたいに一日寝ないと回復出来ないシステムかと思っていたからこれは嬉しい。
時間の経過が鍵なのか、メシを食った事が鍵なのか、また検証しなくちゃな!
俺は今度は風呂場で水魔法を試してみた。
湯船に湯が張っていあるだけの乾いた風呂場だ。
広い洗い場の中央にて、湯桶の前に両手の平ををかざす。
何だか既にベテランぽくて申し訳ないが、無詠唱でチャレンジ。
水、水、水、水……滝が勢いよく滝つぼに水を叩き落とす映像を頭に浮かべ、集中する。
ポタ……
2滴くらい水が出てきた。
俺は『水魔法Lv1』を取得した。
地味にステータスをなおしました。(´・ω・`)