65.レベル上げ
森にはあんなに沢山いたトカゲも蛇も姿を消していた。
『鑑定』で探してもやはり魔物しかいない、というか魔物だらけだ。
旅の途中にやたらいたゴブリンの様な二足歩行の魔物は見かけない。
これまでの奇形動物のような気持ち悪い魔物がうろうろしている。
いや、グロさが増している。
魔物のレベルはざっと見た感じで平均して50、つまり俺より強い。
俺より強いという事は・・・・近距離戦は避けるべきだな。
そういう訳で、俺は今、主に魔法を使い戦っている。
前衛の2人の隙を狙って飛んでくる蜥蜴頭を持つ黒い鳥が、後衛の俺の獲物だ。
魔族を倒した時も思ったけど、ボン爺が使う魔法の威力は凄いな。
ほとんど動く事もなく襲い掛かる魔物を一撃で仕留めている。
ロイ爺は、逆に動きが早すぎる。
しかもいつの間にか今まで見たことない鎌を手に魔物が襲い掛かる前に首を切り落としている。
まるで死神だ。
そして俺は、襲い掛かる魔物の攻撃を躱しながら
一匹ずつ魔法を使って頭上を旋回している鳥の頭を潰すか 焼いて撃ち落とす。
魔物よりも鳥の方が一匹倒すのに使う時間とMPが少なくて済むからだ。
せこい方法かもしれないが、この方法でも倒せば確実にレベルとポイントが手に入る。
鳥は一匹あたり、ポイント倍増のスキル込みで500P。
俺は今レベル上げをしているんだ。
死んだら生き返れるセーブポイントが無いから、地味にせこく安全に行うしかない。
唯一の回復ポイントも失ったなら猶更、MP消費を抑えて倒せる敵を選ぶしかない。
だけどこう地味に同じ事の繰り返しだとしんどいな。
メタリックな感じの敵はこの世界にいないのだろうか。
魔物は倒しても倒しても沸いてくる。
倒すと魔物の姿は搔き消えて死骸が残らない。
そしてまた森の中から現れる。
はっきりいって異常だ。
レベルを上げるには好都合だが、一向に前に進む事が出来ない。
あの回復ポイントの泉がどうなったのか実際に見に行きたいのに、
森に入ってからまだ数メートルの場所に足止めをくらっている様な状態だ。
森の奥に進むためにはある程度の敵は無視して先に進むしかない。
だが、おそらく2人の目的も俺の修行が目的だから
何も言わずにこの場で敵を倒し続けているのだろう。
『魔素が濃過ぎるわ。核となる魔物がいるのは間違いないわね。
私、蛇の中にいた頃を思い出すからもう帰りたい』
どんな奴かも分かる?
『ここからじゃちょっと、もう少し奥深くにいると思う。
ねぇ、今日はもう帰らない? 私ここ嫌いだわ』
そうか、仕方ないな。
「今日のところはこのくらいで終わりにしてもいい?
ルッカが嫌がっているんだ」
「そうか、分かった。」
「すぐに帰れる位置にいて良かったですな
ルッカ殿は何を嫌がっているのですかな?」
「この森の魔素が濃すぎて蛇の中にいた時を思い出すんだって」
「なるほど、それは失礼いたしました」
『ロイ爺さんは悪くないわよ?』
「ロイ爺、気にしなくていいよ」
『はーぁ。これから毎日ここに来るの? 気が重いわ』
しばらくは森の入り口での修行だから我慢してよ。
それともルッカは置いて行った方が良い?
『そうね、明日は行けたら行くわ』
それ知ってる、行かないやつだよね。
『・・・そんなこと言ってないでしょ。とにかく考えさせて』
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ロイ爺から借りた本を抱えて自室に戻り、しばしの読書タイム。
あとは風呂に入って寝るだけだから、
さっき部屋に入る前に手渡されたエルフの物語を読んでみることにする。
・・・・・・
・・・・・・
『面白い?』
うーん。
子供向けの絵本だからあまり詳しい事は書いてないよ。
”エルフは森で狩りをして暮らしている”
”エルフが歌うと奇跡が起こる”
『それ、精霊を呼び出しているのよ』
ふーん。歌う必要がああるんだ。
ちょっとやってみてよ。
『いやよ、必要もないのに呼び出すなんて失礼な事できないわ』
・・・・・・
・・・・・・
”心優しいエルフは森に迷った子供のケガを治してくれました”
”エルフと子供は友達になりました”
『そういうことも稀にはあるかもね。
私も昔、助けたことあるわよ』
・・・・・・
・・・・・・
”村の人たちが子供の後をつけていきました”
”エルフの持つ力が欲しい”
”エルフの血を飲むと病気が治る”
”エルフの肉を食べると長生き出来る”
”恥ずかしがりやのエルフを捕まえにいこう”
『・・・・』
”エルフたちは逃げてしまい森にはだれもいませんでした”
”子供はもう二度とエルフに会うことはできませんでした”
『・・・人間はいつもそうよ、私達が人間が嫌いな理由はそういうところなの』
うん、たいした事は書いてない本だったけど
ルッカ達が大変だっていうのは伝わったよ。
・・・・・・・しまった。
ルッカがいない所で読むべきだった。
『いいわよ、別によくある話よ』
絵本に書いてあった事が本当なら、
あの蛇はルッカを食ったから長寿になったって事になるかもしれないな。
確か200歳のルッカを食った上に数百年生きていた事に なるはずだから・・
だとすると、森の魔物の主だか核だかってやつの中にもエルフはいるのかな。
『ふーん。・・なるほどね。
もし、仮にそうだとしたら・・・・
やっぱり私、明日からも参加するわ』