63.呪い2
気が付けば朝だった。
『レオ、レオン。起きて』
起こしたのはメアリではなく、ルッカだ。
う、ルッカ?・・・何?
『レオ、ちゃんと起きて。
あなたの呪い、解いておいたわ。』
へ? マジで!?
目が覚めた。
『マジよ。古っ臭い呪いだったわ。
でもかけ方が稚拙なものだったから、楽勝でした!』
本当に?
ありがとう、ありがとうルッカ。
『原因はね、レオン。あなたが持っていた手紙よ。
そこに呪文が仕組まれていたの。色の無いインクでギッシリとね。
悪いけどすぐに燃やしてくれない?
もう解呪はしてあるけど、持っていない方がいいわ。』
え? 父上の・・・?
じゃなくてあのバカ皇子のか!?
『その辺は良く分からないけど、多分それでしょうね。
悪意だけは無駄に強く込められていたわよ。
その割には稚拙も稚拙、あらかた古文書でも丸写ししたんでしょう、
ところどころ間違いもあったし。
でもね、レオ。そのおかげであなた命拾いしたわよ。
もし完璧に呪文が書けていたら、あなたは手紙を読んだ瞬間に死んでいたわ。』
は、はぁっ?!
何してくれたんだあの野郎。
・・・・ぜぇってーーーーーに殺す!!
『まあ、とにかく良かったね。私がいて。
あんな稚拙な呪いでもしっかり効いてたんだもの。
しかも弱い呪いだから誰も気付けない。
あのまま気付かなければ数ヶ月もあれば子供の体のあなたは死んでいたでしょうから。』
なんだよそれ。
俺、死ぬところだったの?
・・・・はぁ〜〜〜。
本当だよ、本当にルッカがいてくれて良かった。
ていうかその呪いさ、どうやって解いたの?
『おーおー。よくぞ聞いてくれました!
私達エルフは昔から精霊の力を借りる事が出来るのです。
この霊体の状態で使えるかはカケだったんだけどね、
あなたの魔力も少し借りたら何とかなったわ。
だけど次からは本当に気を付けて。
あなた自身の力を霊体の私が使う事があなたの体に負担になるかもしれないし』
精霊・・・すっげぇ!
精霊もいるのかよ、この世界。
・・・っていうか、ルッカって凄いんだな。
『人間と精霊は相性悪いわよ?
精霊ってエルフと同じで人間嫌いだし。』
いや、とにかくありがとう。
その辺はポイントで、いや何でもない。
命の恩人だよ、ルッカ。
父上だけじゃなく俺も助けてくれて。
むしろルッカがもう既に我が家の神様だよ。
『えっ? えぇっ?!
やだっ!!
ちょっと待って!!
言い過ぎじゃない?
とにかく、以後呪いには気を付けるように! それだけっ』
慌てたようなルッカの声はそのまま消えて枕元に置いていたオーブが静かに光って消えた。
え?
まさか、成仏・・・
『してないわよ! ちょっと忙しいの、ほっといてっ、また後でね!!
あ、手紙は早く燃やしなさいよ!!』
オーブが淡くチカチカと光ってまた消えた。
おお、なんだか面白いな。
自室に置いてある、いつ使うんだか良く分からないデカい灰皿みたいなガラスの皿を取ると、
窓を開けて、窓際に置いた。
皿に封に入れたままのバカ皇子からの手紙を置くと速攻で火をつけた。
手紙を燃やす程度の炎など、この屋敷の中だって楽勝で出せる。
手紙は無駄にどす黒い煙を出していて気味が悪い。
煙を吸い込まない様に魔法で風を送り外へ散らす。
手紙は全てが灰になるまで燃やし続けた。
灰は・・・森に埋めるか。
後でもう一度ルッカに確認しよう。
領地での日課だった筋トレをしていると、メアリが入って来た。
「レオン様、お早うございます。
もうお目覚めでしたか、長旅からのお帰りですのに。
昨日もお疲れの様でしたが、お体は大丈夫ですか?」
「メアリ、おはよう!
一晩寝れば大丈夫さ!!
お腹が空いたんだけど、もう朝食って食べられる?」
「ふふ、お元気そうでメアリは安心しました。
朝食の準備はすぐに整いますよ、参りましょうか。」
呪いの問題がなくなれば、全然元気だぜ!!
昨夜はあんまり食べられなかったからな、ガッツリ食ってボン爺に会いに行こう。
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「・・・・なるほどな、呪いか。迂闊だったな
おい、レオン。貴族の世界じゃ毒も呪いも日常茶飯事だ。
半年以内に少しは習得しておけ。」
おお、ボン爺のレオン呼びが戻っている。
よかった、ダニエルとか言われなくて。
「うん、ロイ爺にも呪い関係の本を借りて勉強しておくよ。
ところで、行きに通ったあの蛇がいた山ってエルフの村があったって本当?」
「いや、知らん。少なくともわしが知っている限りはあの山は人が住めるような所ではなかった。
だから、そのルッカとかいうエルフが住んでいた村は相当昔の話になるだろう。」
「そっか、それも調べないと。」
「ロイにも聞いておいた方が良いな。
それにしても不思議だな。死んだ者が話かけるなど聞いたことがない。」
ボン爺も知らないってことは、あのオーブの力なのかエルフの力なのか両方なのか・・・
調べる事が多すぎる。
「・・・・ルッカが、もし呪いに気付かなかったらお前が数カ月で死ぬと言ったんだよな?」
「うん、それは俺も考えたよ。半年後に死ぬかもしれない奴って俺の事だったのかな?」
「わからん。だが、魔法薬も薬草も大人2人分だからな。
しかも呪いに魔法薬が効くともかぎらんじゃろ?」
分からない事が増えてきた。
ボン爺からロイにも話をする事になり、この話は夜に持ち越しとなった。
夜は、オーブも持っていく。
俺を通じて年長者のルッカにも参加して貰う予定だ。
ボン爺の小屋を出ると、庭では既にディアーナとメイが稽古を開始していた。
ディアーナが手加減しているのは分かるけど、メイがナイフを両手に持って互角にやり合っている。
メイの動きが早い、っつーか、早すぎるだろ。
ステータスを見ると、レベルもスキルも上がっている。
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メイ(5)
職業:レオンの友達
ロイ・ジャンの弟子
好きな物:虫、野菜、お菓子、屋敷のみんな
嫌いな物:肉
『ステータス』
Lv:12
HP:64
MP:45
『スキル』
・体術 Lv2
・双剣 Lv2
・火魔法 Lv1
・水魔法 Lv1
・風魔法 Lv1
・土魔法 Lv1
・狙撃 Lv2
・暗殺 Lv2
・隠密
・身体強化 Lv4
・言語能力(ダグロク語)
・言語能力(ナリューシュ語)
『ユニークスキル』
『可愛いは正義』
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ほら、やっぱりぃいいいいいいいいいいい!!!!!
ロイがやったんだこれ、絶対にロイが仕込んでるじゃねーか。
俺の可愛いメイタソがなんで暗殺特化するんだよぉおおおおおおお!!!
分かってたけど! 予想もしてたけど!!
メイに暗殺スキルはなんて物騒なモノ持たせないでくれ。
しかも、好きなものの中に前まで俺いたのに、一括りにされてるし。
やばい・・・・呪いどころじゃないショックが半端ない。
つーか、今更こんなとこでロイの本名を知ったし。
だからってこの程度の情報、全然嬉しくねーし。
メイの瞬発力と動体視力は半端ないもんな。
俺、勝てるかな。
一応すごいレベル上がったんだけど、・・・やべっマジで負けてらんねぇ。
メイの前では強い俺でありたい。
尊敬されたい。
・・・そして愛されたい。
「奇襲攻撃ぃぃいいいいいいいいっ!!!!!」
剣を持っていなかった俺は、クナイを懐から取り出すと2人に飛びかかって行った。