58.魔族
「レオン、助けられてばかりだな。
ありがとう。驚く程強くなったんだな。」
「ボン爺とロイ爺がちょっとおかしいくらい強いからね。
ディアも。みんなの稽古のおかげだよ。」
「そうか。そういえばお前の剣の師匠は今回初めて会ったな。
あんまり可愛らしいお嬢さんで驚いたよ」
「でしょ?! お、僕も初めて会った時は驚いたよ。
父上も初めて会ったってどういうこと?」
「ディアはロイが見つけて来たんだ。
ロイは相手の素性を見抜くのが得意だからな、安心して任せたよ。
なにせお前の師匠を見つけるのに苦労していたからな」
「そっか、ロイ爺が・・・」
帰ったら聞こう。
教えてくれないかもしれないけど。
「それより、レオン。
私の足を治してくれたな。
あんな事を出来るのは相当高位の魔術師だけだ。
一体どうしたんだ?」
「あ、・・あれはロイ爺に本を貸して貰ってさ。
良くわからないけど、出来たんだ」
どうしてもこの手の話題は語尾が小さくなってしまう。
ボン爺にもディアーナにもかなり詰問されたが、これに関してはあんまり言いたくない。
つーか、ポイントでとったスキルはだいたい聞かれても困る。
なんだか知らんが出来たとしか言いようがない。
「そうか、・・・やはりレオンも特別な力の持ち主だという事か。
レオン、すまないが王都での力の発動は控えてくれ
あと私の足を治療したという話も言わないで欲しい。
すまないな。本心では皆にお前の事を自慢したくてたまらないんだ。
だが、私はお前まで奪われたくはない。」
「大丈夫、言うわけがないよ。
だって神殿の服を着た奴が敵だったんだぜ?」
しかも魔族だったしな。
「そうだな。私も驚いたぞ。
ドゥルムと神殿に繋がりが無いわけがないが、
神殿の者がまさか私を殺すのにも加担するとは」
そう、魔族を倒したあと恐らくあいつがドゥルムの手先で賊の所に向かっていたと俺達は結論づけた。
しかもあの魔族、金貨の一枚も持っていなかった。
多分あいつ一人で賊を口封じに殺す予定だったんだ。
「・・・・父上、王都に帰ったらどうするつもり?」
「そうだな。まずは国王への報告がある。
ドゥルムが何を企んでいるか知らないが様子を見てその事も報告した方がいいだろう」
「神殿の事もそうだけどさ、王都は危険な気がするよ。
国王への報告はお・・僕も付いて行っちゃ駄目かな。」
「そうだな。だがお前の髪の色がなぁ、それは確かあと数日戻らないんだろう?」
「あぁ、そっか。じゃ頭をケガした事にして包帯を巻いて隠そうかな」
「そこまでしてなぜ行きたがるんだ?」
「そりゃあ、心配だからに決まってるよ!」
「・・・・・・ははは。何とも頼もしくなったなあ、レオン。
本当に、助けてくれてありがとう」
父上が俺の頭を撫でながら涙ぐみ、つられて俺まで泣きそうになった。
「・・・そろそろメシにするか?
どうだ? 親子水入らずの話は終わったか?」
そう、魔族との戦いに疲労した俺達は今日はもうこのまま休む事にしたんだ。
さっきまで、ボン爺とディアーナは俺達に気を使って2人にしてくれていた。
色々と気が動転していて、父上との再会からのんびり話す事もなかったから
この時間をくれたのはありがたかった。
「そうだな。すまないな、ボン。さあ食事とするか!」
「うん。」
「さっき少し遠くまで行って獣を一匹狩って来たわ。
早く食べましょう!」
「へっ? この辺動物なんて全然いないのに?
一体どこまで行ったんだよ? ちっとも休んでないじゃないか。」
「ちょっと遠くよ。・・落ち着かなかったのよ、仕方ないでしょ。」
ディアーナの機嫌が悪くなった。
あの時、魔族にとどめを刺したのはディアーナだ。
ディアーナは魔族嫌いらしいし、確かに何か思うところがあったのかもしれないな。
「ごめん。」
食事を終えると、父上には早々に休んでもらい、
残る俺達3人も順番に寝る準備をする。
今日もまた風もない静かな夜になりそうだ。
昼間の激闘で皆それなりに疲労が溜まっている。
皆に回復をかけてやりたいけどMPが心もとなく2人からもいらないと言われた。
せっかく上位の魔法スキルを取ったのに情けない。
今日だって俺の攻撃なんて1発の重力魔法くらいで後は意味もなさなかったしな。
ボン爺とディアーナがいたから勝てただけだ。
レベルをもっと上げるしかないな。
今日の魔族を倒しても、俺達のレベルは1〜2しか上がらなかった。
ボン爺が1、俺とディアーナが2ずつ上がった。
もらえたポイントは1000ポイント。
ま、魔族1匹倒して2上がったのはすごいかもしれないけど、ちょっと前にボーナス並に上がったレベルとポイントを考えると物足りない。
あの巨大オロチが実はあの魔族よりも数倍どころかめちゃくちゃ強かったって事に今更ながらビビるぜ。
あの時無意識に先制攻撃していなかったら父上に辿り着く前に全滅してたって事だよな。
「ねぇ、ちょっといい?」
「ディア? 寝なくていいの?」
「眠れないのよ、ちょっと隣座るわ。
・・くっさ! あなた、まだ臭いわよ! 信じられない」
ディアーナは鼻を摘みながら俺と少し離れたところに腰を下ろした。
少し傷ついた。
王都に着いたらとにかくまずは風呂に入ろう。
・・・あ、まずい。その前にハンナに殺されるかもしれん。
「あなたの国の神殿には魔族が多くいるのかしらね。」
「どうだろうね。そんな気はするよ。
俺、兄妹が神殿にずっと囚われているから心配でさ。
出来れは2人を神殿から出したいんだけど、どうやったらそれが出来るかずっと考えてる。
神殿の内部があのレベルの魔族だらけだったら、返り討ちに合いそうだし」
「確認したいところだけど、難しそうね。」
「ところでさ、魔族って首を切ると倒せるの?
俺、後ろからあいつの心臓にクナイを刺したんだよ、ボン爺の援護付きで。
それなのにビクともしなかったんだ。」
そもそもあいつ、魔法で体が半分吹っ飛んだ癖に全く攻撃が弱まらなかったしな。
「・・・・・・・・・分からないわ」
「頭を狙えばいいのかな。次に戦う事があったら、頭を狙うよ。」
某ゾンビゲーでも頭を狙うしな。
おそらく魔族も急所は頭だ。
「・・・・・・・・・・・・・・・そうね。やってみなさい。
・・・・・・・ただ、・・・・私もその時は一緒に戦うわ。」
「それはありがたいけど、何で?」
「・・自惚れと思われるかもしれないけれど、少し思う事があるの。
私は、対魔族に対して何かしらの力があるのかもしれない」
何だって?
「えっと、それは、どうして?」
「・・・・うるさいわね!
あなた今、私を馬鹿にしたわね? 子供のくせに。
聞かれても分からないわよ。・・・ただそう思っただけ!
もう寝るわ。じゃあね」
ディアーナはなぜか顔を赤らめて行ってしまった。
・・・・・
なんだ?
まぁそりゃ自分に特別な力があるとかそんな厨二発言は
この世界でも恥ずかしい事なのかもしれないよな。
俺はこの世界に馴染んでしまったのか厨二全開で楽しんでた部分はあるけど。
テントはそう大きくないので、ディアーナは外でただの布にくるまって横になっている。
こっそり『鑑定』でステータスを確認したが、レベルとスキルレベルが上がった位で特に新しいスキルの変化はない。
・・・あれか? 『覇王の器』に何かあるのか?
今の鑑定レベルじゃまだ詳しい事は分からないな。
・・・・・・・・俺もあのスキル、欲しいかもしれない。