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53.野営

昼になり、やっとのこと馬を降りたもののケツの痛みが治まらない。

しかも馬酔いで胃の中が重い。吐きそうだ。


このままでは目的地まで行くなんて無理だろ。


そこでやっと『回復魔法』の存在を思い出したんだ。

なにやってんだ俺。


俺の『回復魔法Lv6』は範囲魔法だから近くにいたボン爺やディアーナまで一緒に回復してしまった。

特に疲れてもいない2人を。


回復魔法の淡い緑色の光を放つと2人はびっくりしていたが、


「体が軽くなったわ!」


とディアーナは飛び跳ねて喜び


「おい、ダニエル無駄に魔力を使うな!

制御も出来んのか。練習せい!」


とボン爺にはガチめに怒られた。

ダニエル呼びがナチュラルに浸透している。


嫌だ。早く終わらせて帰らなきゃ。


ともかく超元気になってしまった2人はガンガン飛ばし旅は順調どころか予定より1日繰り上がって到着しそうだ。


ケツ痛え。ぎぼぢわりい…

昼に使ったせいでMPは半分まで減っている。

これ以上回復魔法は使えねぇ。


一応『回復』は善行なのかポイントがもらえる。

『ポイント倍増(10)』で1人80ポイント


だけどMP回復にかかる時間を考えるとそうホイホイと使えるかってんだ。

節約のためにマジで制御を覚えないと。



ケツの痛みに耐えながらMP回復を待つしかないな。

そして少しずつ練習しよう。



ただただ変わらないのどかな田舎風景が殺伐とした岩むき出しの舗装もされていない道に変わっていった。

アイリーンの揺れがひどい。


日が傾き始めている。


「こっから先は、魔物も出やすい。気をつけろ。」


ボン爺は前を向いたまま、俺たちに注意を促した。


この辺の魔物はどんな奴が出るんだろうか。

服に仕込んだクナイの取り出しやすさを確認する。

いつでもナイフを抜けるよう気を引き締めて周囲を警戒。


『鑑定』を使うと岩かげにチラホラ魔物がいるのが分かる。

だけどレベルが低いな。


MPが気になるから魔法はあんまり使いたくないんだが、、


俺は小さい火の矢を作ると魔物を岩ごと吹っ飛ばした。


「おいっ何やってる!」


「魔物がいたんだよ、だから燃やしたんだ」


「雑魚はほっといていい!

 キリがないからな。襲って来る奴だけ叩け」


「分かったよ。で、今日はどこまで進めるの?」


ケツがもう、


「おう、もうすぐだ。あの木の下で野営する」


ボン爺が指差した木は前世でも見た事があるような大きな不思議な木だ。

50m程先である。


「よし、降りろ」


ボン爺とディアーナがひょいっと身軽に馬から降りて木にくくりつけているのを横目に、ケツをいたわりながらそろそろと降りる。


て、って。


「ダニー?早くしなさい。ほらっ」


「わっ痛っ!やめろよディア!」


「あらダニー坊やはお尻が痛いのかしら?」


「いっ?・・・全然痛くねー!」


「ほら、早く馬をよこせ。姉弟喧嘩してる暇はないぞ」


なんなんだこの茶番は。

ディアーナとボン爺が楽しんでる様には見えるけどさ、ナチュラル過ぎて旅が終わってもダニー呼びが固定されたらたまったもんじゃない。


野営の準備は簡単だ。

木の枝に分厚い布をかぶせて広げ裾を石で固定するだけ。

虫が入らない様にするだけの簡易テントだ。


空はもう真っ暗だ。


既に外ではボン爺が焚火を用意しており、水を入れた小さな鍋を温めていた。


「夜メシにするからお前らはその辺の動物を狩ってこい」


「わかったわ。行きましょう。」


ディアーナは剣を剥き身にして走り出した。

負けてられるか。こっちには『鑑定』があるんだ。


この辺は修行していた森よりも弱い獲物ばかりだ。

後で食事と睡眠の邪魔をされたくないから手あたり次第ザクザクと殺しておく。

魔物はマズそうだから、動物がいいんだけどこの辺は全然いないな。


「ダニー! 何を遊んでいるの? 戻るわよ。」


ディアーナは2mはあろうかというワニのような見た目のトカゲと担いで戻ってくるのが見えた。

俺の方が毎日狩りの修行してたのに。悔しい。


2人で巨大トカゲの皮を剥がし解体している間にボン爺が枝を削って作った即席の串に刺して焚火で焼く。

トカゲ肉は肉汁と油が滴ってパチパチと音を立てている。小さな鍋にはその辺の草が煮込まれている。

あぁ、腹が減ってきた。なんだかキャンプに来たみたいだ。



・・・・・・・・・・・・・


食後はとっとと寝るのが野営の基本らしい。


俺達は1人ずつ交代で火の番をしつつ警戒することになった。

『鑑定』で見ても俺達を取り囲んで魔物が様子を見ているのが分かるから無防備に眠る事はできない。


ボン爺、ディアーナ、そして俺の番が来た。

ディアーナは旅疲れで爆睡していた俺をつまみあげるとポイっとテントの外に放り投げて

さっさと眠ってしまった。

爆睡してた俺も悪かもしれないが、投げられた衝撃で起こされる屈辱は一生忘れない。

それにしても、体のあちこちが痛い。フカフカのベッドが懐かしい。


周囲には魔物がいない。

正確には魔物の死骸の山しかない。

ディアーナが一掃したようだ。

なんだよ、ちゃんと燃やさないと余計魔物が寄ってくるだろ!



ん?



遠くの方に、『ダークウルフ』という表示がこっちに向かってきている。

目視できる限り『ダークウルフ』という文字が15はある。

絶対この死骸の臭いをかぎつけたんだ。ディアーナめ。


・・・来るぞ。

火の矢を敵の方向に向けて用意しながら、寝てる2人に迷惑にならない様にテント周りに土壁を作る。

よしこい! 何匹来たって関係ないぜ!


ダークウルフの群れが『鑑定』の文字ではなくその姿が見えてきた。

大型犬ほどの大きさだと思う。

まだだ、もっと近づいたら攻撃しよう・・・・・・今だ!


火の矢を一斉にダークウルフへ向かって放った。

よし!・・・じゃない、避けやがった!


矢が当たったのは3割程度で、ダークウルフは矢の当たる直前で軽やかにジャンプし回避された。

しかも遠目で見たよりもデカくジャンプ力も凄かった。既に3匹には回り込まれ、挟み撃ちの状態になってしまった。

ダークウルフは、闘気剥き出しで俺を殺す気満々だ。


森の中とちがってここは平地だから同じ攻撃をしても逃げられるだけだ。

魔法で風を作って俺も上にジャンプすると、ダークウルフ達も俺を追って一斉に襲い掛かってきた。

すかさず、クナイを投げる。3匹仕留めた。あと7匹か。


仲間が既に半分は殺されているのに逃げる気配が一切ないな。

さっきと同じ手を使い、もう一度ジャンプしたが引っかかったのは1匹だけだった。

学習能力もあるのかよ。


俺を取り囲む6匹がギリギリの距離で仕掛けるタイミングを探っている。

掛かってくれるか分からないが、、片足を一歩後ろにずらすと後ろの奴が飛びかかって来た。

やった!俺は即座に火の槍を作って突き刺した。

その瞬間に俺に一斉にかかって来たダークウルフを同じように纏めて突き刺してやった。


やった、倒した。


ステータスでレベル確認は忘れない。

レベルはまだか・・・でもポイントはウマウマだ!


次の交代まで、後2時間か。


よし、この際だからレベル上げとポイント稼ぎをしよう。

今のうちに周辺に罠でも仕掛けておくか。

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