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51.説得


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


「メイ、すぐに帰ってくるから」


「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ

 メェェェェェェェェェもぉぉぉぉぉぉぁぁぁぁ」


「俺だってメイと離れたくないよ!

 だけど、ほんの数日なんだ。絶対すぐ帰るから!」


「イヤァアアアアアーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」


夕方ボン爺の納屋近くで荷造りをしながら、

メイに今回の旅の話をしたらメイが泣き出してしまった。


もうずっとずっと泣き通しだ。

泣き声も悲鳴のようになっている。


「メイ、残念だけど我慢なさい。

 行きたかったら、強くなるのよ。」


「ディアァァァァァァァァァァァァバカァァァァァァアアアアアアア」


見かねたディアーナがメイの肩を抱いて諭そうとしてくれたが、ダメだった。


ボン爺は無言だ。


メイは風呂上がりだったせいで、現在パンイチである。

パンイチの裸の女の子が納屋で大泣きをしている。


状況を考えると服を一枚でもいいから着て欲しいところなのだが

今のメイはそれどころではない。


メイの大好きな俺、ボン爺、ディアーナの3人がメイを置いて出て行ってしまうのだ。



『モルグ族にとって仲間は家族同然です。

 離れる事をとても嫌います。

 モルグ族は人気があるので攫う賊は多くいますが

 ペットのように途中で捨てられる事もしばしばあります。

 レオン様はメイを途中で捨てたりなさいませんよう』



王都からメイを連れてきた時にロイ爺に言われた言葉だ。


メイと離れるつもりなんて全くない。

一生一緒にいるつもりだ。


だけど今回は俺でも足手まといだと言われてるところを無理に連れていってもらう旅だから

メイを連れていけないんだ。ごめん、メイ。


「メイごめん。絶対にすぐに帰ってくるから。

 その間はメアリがずっと一緒にいてくれるから、少しだけ待ってて」


「ヤァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!」


メイは俺の顔を思い切り引っ掻いた上に突き飛ばすと納屋を飛び出してしまった。


って! ・・・メイッ!!!!」


慌てて俺も外に出ると、メイは既に庭の端まで走っておりしかも軽々と塀を飛び越えて外へ飛び出して行ってしまった。


まずい!


もう日が落ちてる。

裏の森は魔物がいるのに!!!!!


俺もダッシュで追いかけ、塀を飛び越えた。

メイは確か『暗視』はない。

もう、ほとんど何も見えないはずだ。


すかさず『鑑定』でメイを探す。


えぇ、もうあんなとこにいるの?


メイはかなり森の奥深くまで行ってしまったようで、『鑑定』で表記される『メイ』の文字が遠くに見える。


俺はとりあえずメイ近くに魔物がないか『鑑定』を続けて追いかけた。


・・・・追いついた。



「ああああああああああああああああああああああああああん」



メイは木の下で泣き崩れていた。

夜の森は虫も毒を持っているのが多い。

俺はメイを抱き上げて、パンイチのメイについた土を払い落とした。

・・・なんだか冷たい感触。・・きっとメイ、漏らしたな。


「メイ、ごめんな。・・・この辺は怖い魔物が多いんだ。

 帰ろう。あっケガしてない?」


パッと見汚れているだけでケガらしいケガは見えなかったけど回復魔法を使った。

そういえば回復魔法を人に使うのは初めてだ。


「やだぁぁぁぁぁぁぁっぁ」


「・・・メイ、周りをみてごらん? 見える?」


「うわぁぁ・・・?・・・・・? み、、えなぃ。」


「だろ? これから行くのはちょっとこういう危ないところなんだ。

 俺もボン爺もディアーナもみんなメイの事が大好きなんだよ。

 だから、メイにはお留守番をしていてほしいんだ。」


「っくぅぅ・・・・ぁぶなぃところなのに・・・みんなぃっちゃうの?」


「うーん。・・メイちょっと見てて?」


俺は魔法で小さな火を作ると、周囲を照らして見せた。


俺とメイの周りに、蛇や蝙蝠や魔物が距離をとって狙っているのが見えた。



「っキャァアアアアアアアアァアアアアアア!!!!!」


「メイっ大丈夫だから! 見てて。」



メイを抱きしめて、火の矢を大量に作ると放射状に飛ばして全て焼き殺した。


手で口を押えながら、赤くて大きな目をぱちくりさせて驚いているメイに言った。



「俺もさ、けっこう魔物を倒せるようになったんだ。

 ボン爺とディアーナは俺よりもっと強い。

 だから大丈夫なんだよ。」



驚きで声も出ないメイを今のうちだととっとと屋敷に連れて戻った。





あぁ、、、、昔の俺みたいだなぁ。





ボン爺もきっとこんな気持ちだったのかもしれないな。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「ボン爺、メイがちょっと汚れちゃったよ。また風呂に入れないとね。

 そういえば、俺もちょっと汚れたからメイと一緒に入っちゃおうかな」


「あら、ちょうど私お風呂入るところだからメイも連れていくわ!

 いらっしゃい。あら、ほんとに汚れたわね!

 私がしっかり洗ってあげる。」


「・・・メイもディア洗う!!!」


「そうね、洗いっこよ。」



「おい、お前さんは身支度があるじゃろ。さっさとしろ。」



きゃっきゃうふふと屋敷へと向かう女子2人の背中をしばらく眺め、諦めて納屋に戻った。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ボン爺、あの魔女に言われて買った薬草と魔法薬持っていった方がいいよね」


「ふむ。そうだな・・予言は半年後だが、

 北の魔物とやらの討伐にどのくらいかかるかわからん。

 北の山脈から王都へは馬なら1日半もありゃ着く。持っていけ」


「メイに、すぐ帰るって言っちゃったけどどうしようかな。」


「そりゃ、行ってみなきゃ分からんからなぁ。

 ロイからは北の山脈だろうと連絡が付くから事情はすぐに伝えられるだろう。安心せい」


「ボン爺もロイ爺も・・・なんだか凄いよね。」


「そうか? お前さんが何も知らなすぎるだけかもしれんぞ?」


うーむ。なんだかまたごまかされた感じがするな。


「ボン爺、荷造りが終わったら特訓する?」


「いや、今日はもう終わったら寝ろ。

 明日の早朝には立つ予定だ。

 ベッドで寝れるのは今日が最後だ。

 明日以降は覚悟しておけ」



そう言うとボン爺は顔を上げてニヤリと笑った。

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