表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/169

40.領地へ

昨夜はメイと一緒に寝た。

でかいベッドの真ん中でくっついて寝た。


メイはベッドに入るまで、今日起きたあれこれや屋敷の豪華さに興奮していたが、ふかふかの布団にくるまれた途端に寝息を立てた。


メイの体は温かくて柔らかくて耳はモフモフでぬいぐるみのようだ。

そして寝顔からも分かる顔面潜在能力の高さ。

幼女の今ですらこんなに可愛いんだ。

これは将来が楽しみだ。


メイは俺に抱きつくように眠っていた。

体温が高くてあったかい。柔らかい。

メイは懐っこくて可愛いな。

我慢できなくてついそっとメイの耳や髪を撫でるとくすぐったそうにもぞもぞ動くと寝返りを打った。


もしアイリスと一緒に育ったら、アイリスとも仲良くなれたのかな。


今日は、王都を出発する日だ。

両親と朝食を食べるのも今日が最後だ。

別れの朝はいつもと違い、重苦しい空気


俺との別れを悲しむ母上を見ていると辛い。

少しでも一緒にいられるように母上が俺の髪や頬を撫でるのにされるがままだ。


父上から昨日の話を聞くと、

やはり両親の願いは空しくアンドレアイリスの決定は覆せなかったらしい。


・・・でも、家族がやばいのは2年後だろ?

2人の出発は1か月後だから、今回は無事だと思うんだけど。


今回、ハンナは王都に残る事となった。


「一緒に付いて行きたい気持ちはございますが、レオン様なら、もう大丈夫でしょう。メアリもいますし。

 この状況ですから、今は旦那様と奥様にお仕えしなくてはなりません。

 また、お会い出来る日を楽しみに・・・・心待ちしております。」


うん、・・2年後にきっと会うよ。



それにしても、これから一体何が起きるってんだ。

メイとの運命的な出会いに浮かれてたけど、2年のカウントダウンはもう始まってるんだよなぁ。


父上も妙に思い詰めた顔してるし。


領地に早く戻りたい気持ちとこの場に残りたい気持ちに激しく揺さぶられた。

それでも、両親はレオンを領地に保護していたいらしい。


馬車に既に乗り込んでいるメアリ達をしばらく待たせる事になってしまったが、

俺達家族は長いこと熱い抱擁をして別れた。


2年後までは元気でいて欲しい。

あの予言が外れて、2年後も元気でいて欲しい。


俺達は出発した。


^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^


帰りの馬車は3台体制だ。


俺とメイ、メアリ、お土産の3台だ。


ボン爺は行きと変わらず、馬に単独で乗って俺の馬車を警護している。

メイはちょこんと俺の隣に座っていたが、すぐに俺の膝にコロンと頭を乗せてごろごろと甘えだした。


ただただ可愛い。すごく癒される。

両親との別れや暗い予言が俺を感傷的にさせていたけど、メイの無邪気さに救われるよ。


「ねぇ!にーに、りょうちはどんなところ?」


「メイもひろいおにわであそんでぃい?」


「にーにきいて!さっきね、メイはメアリのおてつだいをするやくそくしたんだよ!」


メイは、馬車の中ですっかりはしゃいでいた。

小さな体で狭い馬車の中で転がるように喜びを表現しているのが可愛かった。



ボン爺との最初の約束では、帰りも街の中は出歩かないという事だったが

メイの服を買う必要があった。


ボン爺は「俺が買ってくる」といったが、とんでもない!


まだ日の高い夕方に最初の宿泊予定の街に着くと、俺達は店に駆け込んだ。


なぜかメアリも参戦した。

どうやら俺が両親と食事をし別れを惜しんでいる間に、

面倒を見ていたメアリまでもがメイの虜になっていたようだ。

ボン爺がメイと手を繋いで店の端っこで待っている間、俺とメアリは真剣にメイの服を選んだ。


俺が選んだ服はことごとく却下されていき、

メアリによる無難な可愛い服が選ばれていった。


「なぜそんなにひらひらした物ばかり選ぶのです?

一つ一つは良いとしても、合わせたらおかしくなりますわ」


「それがいいんだよ! これも、いいな」


「そんなに淡い赤色の服ばかり、こんなリボンだらけの服、町の女の子でも着ませんよ。」


「メイなら似合う。メイは出来る子だから」


「レオン様は・・・もう少しセンスを磨かれないといけませんね」


違うのに。

メアリも分かってないな。


・・・・


今なら、母上の気持ちが少し分かる。


宿屋に着いてすぐに

俺とメアリは、メイのファッションショーを開催しようとした。


だが、


メイは「ぃやっ!」といって下着姿で逃げ回った。


どうやら、メイの種族、モルグ族は普段からだいたい裸に近い格好で生活をしているらしい。

つまり、そもそも服を着る事が嫌いなのだ。


俺に気を許して、あられもない姿を見せていたわけではなかったのだ。


クソッ!


早くビュイック諸島に行ってみたいぜ!


ついでにいうと、メイはお風呂も嫌いだった。

俺はメイと一緒にお風呂に入ろうと何度も試みたが、

メイは逃げるし、俺のしつこく誘う姿を見てメアリからは冷ややかな目で見られるしで

諦めざるをえなかった。


^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^


そんなこんなで、帰路も何の問題もなく領地へ着いた。


屋敷のみんなが、嬉しそうに出迎えてくれた。


ディアーナだけは、かなり冷たい対応だった。


ほんの数分前まで一人修行をしていたようで、ディアーナは汗だくだった。


「レオ、あなた。私の言った事を守っていなかったようね!」


むしろ怒っていた。


「さっさと着替えてらっしゃい。そして、走り込みよ!

 ・・・全く、一からやり直しじゃない!舐めてるわ!」


見送りに来ていたみんなが、笑顔のまま静かに屋敷に戻っていった。


ボン爺もしれっときびすを返すと自分の小屋に帰って行った。


誰も、助けてくれなかった。


俺は、長旅からの久しぶりの帰郷だというのに、走った。

自分ディアーナから言ったくせに着替える時間など与えてはもらえなかった。

その場で着ていた服を脱いで、下着姿で走った。


ずっと走った。


ディアーナからは「遅い!」「手を抜くな!」と厳しい声が続いた。


なぜか、メイも一緒に走った。

メイはとても楽しそうに、走る俺の周りをぴょんぴょん飛び跳ねて踊るように満面の笑顔で走っていた。


『身体強化Lv3』の俺が息が切れてきてもメイは終始元気いっぱいだった。


そのうち、メイについていくのがやっとになった。


「あら、モルグ族の子ね、あなた!

 レオよりあなたの方が鍛えがいがありそうね!」


俺は4歳のメイに負けた。


「レオ、分かった?

 少しでもサボると体はすぐに鈍るのよ。

 凡人は特にね!

 明日からは走り込みと柔軟に戻すわ。」


ぐぬぬ・・・・。

ディアーナにボロクソに言われてもなおへばって何も言えない俺とは反対に

メイは遊び足りなそうに倒れて息を整えている俺を耳をぴょこぴょこさせながらしゃがみ込んで見ていた。


しばらくして迎えに来たボン爺に連れられて、メイは小屋へ行った。

この領地では、ボン爺がメイの面倒をみるらしい。


ボン爺は、倒れている俺に「明日から厳しくやるぞ」と言うとメイを連れて去っていったのだ。


くっそー。


メイは俺の自室へやじゃないのかよ!



何とか起き上がって屋敷に入ると、使用人のみんなが今度こそ出迎えてくれた。

離れたところで涼しげに微笑んでいるロイ爺以外のみんなが

汗だくで汚い俺をなんのそのと思い切り抱きしめてくれた。


その日は、俺の好物ばかりの御馳走が用意されていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ