39.メイ
ウサ耳の女の子の名前はメイといった。
鑑定の結果。
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『メイ』(4)
職業:奴隷
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4歳か、こんなに小さいのに職業:奴隷か。
家族構成が出ないから孤児なのだろうか。
切ないな。
俺が領地でたくさん遊んであげるからな!
メイは真っ白でふわふわなうさぎの耳が頭から生えている女の子だ。
ウサギの獣人だ。
この世界に生まれて、いつか会いたいと夢見ていた獣人だ。
まさかこんな早く会えるなんて!
瞳の色は赤とピンクの中間色で宝石の様にキラキラしている。
顔の面積に対してかなり目が大きく鼻と口は小さい。
アイドル顔の黄金比を見事に兼ね備えている。
生前の俺が中学時代推していた、PINKGSの立山三夏
通称みかニャンのような守ってあげたくなる、そんな雰囲気もバッチリ備えている。
合格だ!
メイの髪の色は耳の毛と同じで白く、肩下まである髪は柔らかくふわふわと風に揺れている。
肌の色も白いが、まだ子供で体温が高いせいかピンクがかっている。
背中やお腹のところどころに、綿毛のように白いもふ毛が生えていた。
現在、ボン爺は俺とメイを置いて、メイの服を調達に行っている。
メイを領地に連れて行くにしても、
やはり一度両親の許可を貰わなくてはいけないとボン爺が譲らなかったのだ。
過保護の父上と母上の元に突然メイを連れて行って反対されたくない。
この宿屋に一晩匿って、明日回収しようという案は華麗にスルーされた挙句、「戻るまでここで待っていないとお前をハンナの元に預ける」とまで言われて黙った。
メイはずっとボロ布を纏ってベッドの上にうずくまっている。
俺の両親の前でさすがにボロ布はマズイよな。
俺は元アイドルヲタとして、メイの服は俺が決めたかった。
ボン爺のセンスは分からないがどうせ野暮ったい服を買ってくるに決まってる。
違う。
そうじゃない。
アイドルの私服は、一つ一つは可愛いのに、
なぜかコーディネートにそれを全て取り込んじゃった♡
というところに意味がある。
頑張ってお洒落しているのに、トータルではちょいダサになってしまう所が大事なんだ!
俺なら出来る。
俺なら、それを再現出来るのに。
ボン爺は、奴らはもう街の外に出たと言ったくせに、
外の様子が分からないからという理由でメイをここに置いていくと主張した。
そして俺はメイを1人にしないようにする為、お留守番になっている。
だが、メイと二人きりになってみるとそれも悪くないとやっと気がついた。
というわけで、俺は現在、風魔法でメイの髪を乾かしている。
柔らかい髪が風にフワフワと舞って触りたくなる。
メイは最初、俺がメイの全裸をガン見していた件で多少の警戒をしていたが、
俺もメイとそう年も変わらない子供だし、俺がただ驚いていただけという良解釈をしてくれたようだ。
それにずぶ濡れだったのが余程気持ち悪かったのか、
魔法の風を出して乾かし始めると、意図が伝わった様で静かに風にあたり
今は無防備にも俺に背を向けて完全に身を委ねている。
ちゃんと魔法が発動するか心配したが、問題なく出来た。
領地の屋敷を出てからというもの、失敗知らずだ。
俺ってやつは、やっぱ天才なのかもしれないな。
俺は貴公子スマイルを意識してメイに話しかけた。
「そういえば、モグル族って、みんなメイみたいなの?
ケモナ・・じゃなくて、メイみたいな子は初めてみたよ。」
「うん。もっとみなみの小さなしまにすんでいたの。
そこにはたくさんいるよ。
だってただのニンゲンのほうがすくないもの。」
南の島って、もしかして・・・・
「それって、ビュイック諸島のこと?」
「えっ?うん。しってるの?えっと」
「あ、俺はレオン。レオンでもレオでも、にーにでもいいよ?好きに呼んでくれ。」
「レオンっていうの?にーに?って?」
「それは、お兄さんって意味だよ。・・メイより俺のほうが年上だしね」
「ふーん。じゃ、にーに!
にーには、わたしのしま、しってるの?
「言葉もしってるよ。習ったんだ
ベニャリガン(こんにちわ)、メイ!
「わあぁっ!ベニャリガン、にーに!」
人と人を繋ぐのは言葉だな。
俺とメイは仲良しになった。
メイの故郷の言葉、『ダグロク語』を通して。
ミラ先生に、感謝。
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ボン爺が帰ってきた。
ボン爺が買って来たメイの服は、簡素な青色のワンピースとフードのついた上着だ。
あーあ・・・
せめて髪か目の色に合わせて白か赤のワンピースにすれば
良かったのに。
俺とボン爺に早くも心を許したメイは、被っていた布を自らバッとはがして堂々と着替えた。
嬉しいけど、ちょっと気を許し過ぎな気もする。
にーには心配だ。
暑いかもしれんが、とボン爺はメイに上着も着せてフードを被せた。
今日はこれ以上ぶらつくと何があるか分からないから、
まだ日も高いけど屋敷に帰る事にした。
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屋敷では、既に両親は屋敷に帰って来ていた。
疲れ切った顔をしている。
隠していても仕方ない。
俺はメイとボン爺とともに、両親の近くへ行った。
「ただいま帰りました。父上、母上。」
「おお、思ったより早かったな。・・楽しかったか?
・・・・・・その子は?」
「レオン、お帰りなさい、あら・・・?」
「父上、母上、この子はメイです!
街で奴隷商に捕まっていたところを助けました。
身寄りがない様なので、僕と共に領地へ連れていこうと思います!」
俺は真っ直ぐに両親の目を見て言った。
「なんとも、急な話だな。
・・・すまないが、ボン。詳しく聞かせてくれないか?」
ボン爺は簡潔に、街であった事を説明をしてくれた。
「そうか、この国にも、奴隷商が増えたな。
レオンも無事で良かった。
ところで、その奴隷商はどうした?」
「なーに、ちっとばかし仕掛けしておいたし衛兵にも伝えてある。
今ごろは全員捕まってるだろう、あとはお前さんとこの部下にでも何とかしてもらうさ。」
「えっ!!?」
俺達、メイ以外は全員見逃したんじゃなかったの?
俺が驚いてボン爺を見上げると、ボン爺がニヤリと笑った。
「あの現場を見て、このわしが見逃すと思うか?
子供たちは全員無事に決まってるだろう。」
ドヤ顔だ。
「坊ちゃんがいると面倒だったからな、悪者退治はお前さんにはまだ早い」
そう言って笑った。
メイは意味が分からないらしくぽかんとしている。
「メイ!つかまった子供みんな無事なんだって!良かったな!」
俺がメイに教えてあげると、「ほんと?うれしいっ」と言ってにっこり笑った。
なんて邪気のない笑顔なんだ。
「おや、もうそんなに仲良しになったのかい。
急な事でおどろいたが・・・領地に連れていくというのは、少し考えさせてくれないか?」
「レオン、あなたはまだ小さいからまだ分からないと思うけど・・・
奴隷というのは、あまり良くない制度なのよ?」
は?
なに言ってるんだ?
「メイは奴隷じゃありませんっ! 僕の友達(嫁候補)です!
困っている友達(嫁候補)を助けるのは悪い事じゃありません!
友達(嫁候補)だから、ずっと一緒にいるんだ!!」
俺は側にいたメイをしっかりと抱きしめた。
メイの体は熱く、柔らかかった。
「おお、・・・すまなかった。レオン。
私はお前の事を勘違いしていた様だ。
そうだな、後でもう少しボンから話を聞くとしよう。」
「レオン、ごめんなさい。
そうよ。あなたにはずっとお友達もいなかったものね・・・・」
この後の話し合いで、領地チームのボン、メアリ、ハンナが俺に味方してくれた。
なぜかハンナが俺よりも積極的に両親を説得してくれたおかげで
明日の出発にメイも一緒に行ける事になった!