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36.城下町

翌朝は、両親が慌ただしかった。


どうやら兄妹が神殿を出て、北にある山脈の祠に向かう事になったらしい。


北の山脈は、正体不明の魔物が住みついており、付近の村は全滅。

まだ王都でもこの情報を知る人は少ないらしい。


国民の多くに不安を与えないよう、極秘裏に魔物を退治しようとしたが、討伐に向かった者で帰ってきた人間は1人としていないという。


業を煮やした国王率いる大貴族達と大神殿の長との間で対策を考えた結果、

兄妹の『力』を使いその魔物を山ごと封印しようという作戦を決めた様だった。


父上は抗議していたが、多くの貴族達が強く望んだ為、決定してしまった様だった。


今朝、屋敷に国王のサイン入りの書状が届いたらしい。


2人の出立予定は一月後。


父上と母上は、行くだけ無駄なのを承知で神殿へ嘆願に行くという事だった。


俺も行きたいと言ったが、”絶対に駄目だ”と言われた。


その代わり、ボン爺が付き添う事を条件に今日も城下町へ行っても良いというスペシャルな許可をもらった。


やったぜ!


俺は、朝食後、両親を見送ると、さっそくボン爺と一緒に城下町へと向かった。


「よう、坊ちゃん久しぶりだなぁ。

 ずいぶんと大人しくしていたと聞いたぞ?」


「ボン爺こそ、あんまり見かけなかったけどどこにいたんだよ。

 父上と母上に会えたのは嬉しいけど、王都はやっぱり窮屈だよね。

 用も終わったし、早く領地に帰りたいよ。」


ボン爺は昨日の貴族エリアじゃない庶民エリアに連れて行ってくれた。


貴族エリアと違って建物もみすぼらしいし、人の着る服も粗雑なものだ。


だけど、よっぽどこっちの方が活気が良い。

人が明るくて楽しそうだ。


俺にとってめぼしい物といえば、まずはとにかく食い物だ。


今日は本当のお忍びだから、メアリに質素な服にしてもらった。

ボン爺も旅人みたいな格好をしているし、あまり貴族っぽくないはずだ。


領地に戻らないと出来ないかと思った食べ歩きが、早くもここ王都で実現した。


異世界の街ときたらまずはこれだ。


名物の謎の肉の串焼き!


クッソ固かった。

味も大味。

ま、香辛料で何とか食べれるレベル。


ヘビの方が旨い。


ボン爺にそう言うと、「言うようになったな」とニヤリと笑った。


次は紫色のバナナみたいな形の果物を食べた。

店の前に人だかりが出来ててみんな店先で食べていたからアレは旨いと確信したんだ。

味は、すごく甘めのトマトって感じかな。

ま、口の中がサッパリしたぜ。


色がしょっ中変わる氷のお菓子も食べた。

街の広場の噴水と同じ要領で、食べても体に害のない、軽い魔法がかかってるんだと。

添加物みたいな魔法だな。

味は、甘い氷ってだけな見かけ倒しの商品だ。


後は、ボン爺おすすめの蒸し焼きにした魚、お好み焼きに似た味のスープ、長細い紐みたいなものをカラッと揚げたものを食べた。


ボン爺が勧めてくれた物はどれも旨かった。


魚はハーブで包まれて蒸しただけのシンプルな物だ。

身は柔らかいのに歯ごたえもあって素朴に旨い。


スープも最初は色は澄んでるしサラッとしてるのに

濃いめのお好み焼き味というギャップに違和感があったけど、慣れれば旨い。

素朴味の魚との相性が良い。


長細い紐みたいなやつはカリカリしてて食べるとホックリ柔らかくほのかに甘い。

一番旨かった。

全部食べた後に、ボン爺から紐の正体がデカミミズだと聞いてぶっ倒れそうになった。


ボン爺は楽しそうに笑っていた。


買うつもりはなかったが、武器屋にも入った。


ナイフ、剣、斧、弓、槍、投げ道具、爆竹、煙弾、小爆弾、手袋に鉤爪が付いているようなものや、鎖の付いた鉛の弾などが狭い店内に雑然と置かれていた。


どれもこれもワクワクするな。


冷やかしのつもりだった癖に、俺は良い事を思い付いた。


『鑑定』を使って見たら掘り出し物が見つかるかもしれない!


俺の『鑑定Lv4』は人に対してはさらに家族?構成が見られる様になっていた。

子供が何人いるとか、その程度だ。


昨日は人混みに酔ってほとんど『鑑定』を使えなかったけど、

あのムカつくドゥルムの野郎の愛人関係は把握した。

下世話な機能である事には変わりない。


そういや、昨日『鑑定』使えば両親を見つけられたかもな。ま、今更か。

とにかくまだ相手のステータスも見れないし『鑑定』はそこまで使えないスキルだ。


ところがどっこい。

この『鑑定Lv4』は、コト物に関しては比較的真面目なのだ。

家具や食器などの材質まで教えてくれる様になっている。


俺は意識を集中して品定めを始めた。


お目当ては剣だ。

ディアーナへの土産をまだ買ってないからな。


『剣:鉛』『剣:銅』『剣:銀』『剣:ガン鉱石』『剣:ザダタ水晶』『剣:ブラックドラゴンの牙』・・・


剣だけでも色々あるな、鉱石や水晶やドラゴンの牙が材質になるとバカに値段の数字がが跳ね上がっている。


頭がクラクラしてきた。


うん?なんだこれ。


『剣:トゥール古代石、バルザレッティ作』


かなり錆び付いて朽ちた感じの黒い刃の剣が片隅に飾られていた。

これだけ材質と一緒に『バルザレッティ作』と製作者の名まで表示されている。


金額は、110ナリュ金貨だ


昨日の母上のネックレスが250ナリュ金貨、ミラ先生達へのネックレスが90ナリュ金貨だった。

俺は1ナリュ金貨=1万円と踏んでいる。

さっきの食い物がだいたい2ナリュ銅貨〜15ナリュ銅貨だったから、、、


この錆び付いたボロい剣が日本円換算で約110万円。

高いな。なんでこんな高いんだ?


俺は店主に声をかけた。

ガタイの良いプロレスラーの様なヒゲおやじだ。


「あの、このボロボロの剣はなぜ110ナリュ金貨もするのですか?」


「うん?ああ、それなぁ。剣の柄に宝石が付いとるんだ。

 他に価値はないんだが、宝石だけ外そうとしてもどうやっても取れんから、そのまま売ってる。

 だが、宝石はまぁまぁ価値のある魔石だから、悪くはないぞ?

 石だけ外せれば儲けモンだ。

 坊ちゃん、どうだい?

 あんた、なかなかいいトコの坊ちゃんだろ?」


確かに柄の部分に赤い石がついている。

ディアーナの髪の色みたいだ。


だけど、外れないんだろ?

じゃ意味ないじゃないか。

子供ガキに不用品売りつけようとしてるんだろうが、俺は騙されないぞ。


しかし、ボン爺が俺に耳打ちした。


「坊ちゃん、コイツはとんでもない値打ちモンだ。買おう。

 刃の部分はわしが領地に帰ったら叩き直してやる。

 剣の嬢ちゃんへのいい土産になるぞ?」


「でも、高いよ?ボン爺お金あるの?」


「なに、金なんかガルムからたんまりとせしめてあるわ。

 掘り出しモンは迷わずに買え。鉄則だ。」


ボン爺の言う事は信用できる。

俺は、ボロい剣を買うことにした。


その他に俺は、忍者が使うクナイのような物を数十個、爆竹を数十個、煙弾を数十個買った。


クナイは材質がドラゴンの牙で一つ20ナリュ金貨。

20万円と考えると高いが、同じ材質の剣が1000ナリュ金貨もするんだ。


金銭感覚がおかしくなっている気もするが、お得な感じがするだろ?


爆竹と煙弾は領地に帰ったら遊びに使うんだ。

クナイと煙弾で忍者ごっこだ。


爆弾も欲しかったけど、ボン爺に止められた。


「そんなもん、欲しけりゃもっといいモンをわしが作ってやる」


だそうだ。


クナイは、ロイ爺にも何個かあげよう。

アサシンぽいし。


ロイ爺がクナイ使ってるのを想像するだけでもしっくりくるぜ。

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