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34.影響

「大変でございます!」


なんだなんだ、どうしたってんだ。


「ハンナ、メアリ、落ち着きなさい。一体どうしたんだ?」


両親も驚いた顔をしている。


父上の穏やかな声にハンナはハッと我に帰り、落ち着くように静かに息を吐くと話し出した。


「旦那様、奥様、レオン様、取り乱しまして申し訳ありません。

旦那様方が出かけられた直後から、レオン様宛の贈り物やお手紙が、それは山の様に届きました。

一体、これはどうした事かと屋敷中の皆で驚いておりましす。」


「なんと!それは一体どういう事かね?」


今度は俺たちが驚く方だった。


俺たちは、届いた贈り物と手紙をまとめて置いてあるという居間に急いで移動した。


本当だ。


無駄に広い居間に、大小様々な贈り物の箱、どデカイ花束、綺麗なリボンの付いたドラゴンのカッコイイ銅像、そして山の様な手紙の数々があった。

綺麗に整頓されて置かれていたが、床が見えないほどだ。


「これは、、一体、、?」


父上ですら言葉を失っている。

母上は立っているのもやっとな程の驚きぶりだ。


父上が母上を支えながら、俺たちは唯一スペースの空いているソファーに座った。


温かいお茶が用意され、いったん小休止。


ふぅ。。。


少し落ち着いたところで、

執事が巻物の様にやたら長い紙を取り出し、贈り物の送り主を読み上げていった。



送り主は、国王陛下、王妃殿下から始まり、昨日のパーティーの参加者達だった。


ネルヴィア伯爵夫人からのもあった。


指輪を拾ってあげた少女からのお礼もあった。

これまたバカでかいクマのヌイグルミだった。

手紙もあって、少女の両親からのお礼の手紙と少女の直筆の手紙の2通だ。


どうやらあの指輪は婚約者からのプレゼントだったらしい。


指輪少女の友人AとBからも贈り物と手紙があった。

俺、あなた達には本当に何もしていないんですけど。


俺にケンカを売ってきたやつらからの謝罪の贈り物と手紙もあった。

これも両親と本人からの2通ずつ。


許嫁フィアンセに暴力をふるっていると勘違いしてしまって申し訳ない”

”テルジア公爵家の御子息とは露知らず、息子が大変失礼をした”

という内容が、ひたすら書かれているらしい分厚い手紙だった。


あとは、、、大体俺にというよりも、俺のバックについている両親への媚びも大きそうな感じだ。


そして、手紙には貴族令嬢の親からの手紙も数多くあった。


その内容のどれもこれもが

”娘が転びそうになっていたところを突然現れた俺が助けてくれた”という謝礼と、

”娘が俺の事を忘れられなくなっている”というものばかりだった。


えっ、あれは女の子達からぶつかってきたのばっかじゃん。

しかも俺は目の前にいたのに。


あっそうか!


『隠密』のスキルのせいか!


あっ・・・そう。

みんな気がつかなかったワケね、俺の存在に。


あのケンカ売ってきたやつらも何で最初俺に気がつかなかったのか合点がいったぞ!


そうか、貴族令嬢はそそっかしいのが多いと飽きれていたけど、あれ俺が悪かったのか。


・・・


え、えっと、まさか、、、、


ぶつかった令嬢達がやたらと顔を赤くしていたのは、俺に惚れちゃったってこと?!


俺のイケメンに、令嬢たちが”頬を赤らめてた”ってこと?!


うわ、どうしよう、俺。

こんなこと初めてだ。

俺が、モテているだと?!


いやまて、勘違いするな。

”俺を忘れられない”って、俺に惚れたって意味じゃないかもしれないだろ!

いや、でも文脈的に俺に好意がある方の”忘れられない”だと思うんだけど。


でも思い出せよ。

お前は中学校の時に俺の前に座ってたクラス一可愛かった美園みそのさんが

前から俺にプリントを回してくれただけで、俺に惚れてる?って勘違いしたじゃないか!

一年後に、サッカー部のイケメンとずっと付き合ってたの知ってへこんだだろ?


また、同じ思いをしたいのか?

貴族の世界なんだ。お世辞と嫌味の世界なんだぞ!

あの贈り物の山はあの時の美園みそのさんのプリントと同じだ!


いやだ、俺は傷つきたくない!


レオンはその心に巣食う前世山田との葛藤で激しく動揺していた。

そして勝手に落ち込んだ。


そんな俺のぐったりした姿を両親は不思議がった。


「どうしたの?レオン。顔色が悪いわ。疲れたのかしら?」


「いえ、突然のこの贈り物の数々に驚いてしまって眩暈がしたというか、、」


「そうか、いや、レオン。凄いじゃないか。

たった一日で、いや一日も経っていないな。

 何通過は、レオンに婚約者がいるのかまで探る内容だぞ?

レオンが我がテルジア家の息子だと広まるのが早すぎるという懸念はあるが・・・・。

 まったく、我々と離れたのは少しの間だというのに、隅におけないな、レオン。」


「そうよ、私達が知らない間に。

 レオンはとても勇敢で優しい子に育ってくれたのね。

 お母さまはとても嬉しいわ。

レオン、 贈り物を貰ったらきちんとお返しをするのよ。」


この両親の反応を見ている限りでは、俺は、モテていると解釈して良さそうだ。


そうだよ、俺、イケメンだし!!!

公爵家の息子だし!!!

モテる要素しかないじゃないか!!!


多くの手紙には、茶会やパーティーの招待状まであった。

だけど、俺は明後日には領地に向けて出発するからなぁ。


茶会とかって、合コンみたいな感じなのかな。

俺、オタクだし苛められてたし、合コンなんて縁が無いと思ってたからなぁ。


どうすっかな。

帰る日、伸ばすかな。


俺の新しい出会いへの期待を余所に、

両親はかなり厳しい表情で、これらの招待状は全て欠席にするようにと執事に指示を出していた。


「こういった誘いは、まだ早いな。狙いが分からん。」


「そうね、目立たない様に行ったつもりだったけれど、

 レオンがもうこんなに知られてしまったなんて少し怖いわ。」


はぁ。

別に俺にも許嫁フィアンセとかいてもいいと思うんだけど、ダメっすか。

せめて文通とか出来る女の子の友達、欲しかったなあ。

・・・・

げ、限界だ。


もうそろそろマジで出会いが欲しい!


異世界転生の醍醐味を俺にくれ!!


こんな過保護にされてたら、FLAGすら生まれないぜ?


もう、俺は、8歳なんだ。


幼馴染的な出会いのギリギリなんだYOOOO!!!!



激しく落ち込む俺を、両親が心配して謝ってくれたので俺は今回は涙を飲んで我慢する事にした。

でも、次ってあるのかな。


プレゼントの品々は、執事や他の使用人がこれから仕分けして品定めするらしい。

怪しい物がないか、悪意ある魔法がかかっっていないか調べるらしい。


そんな事が出来る執事達の有能さにも驚きだが、両親の神経質さにもビックリだぜ。


これまでに、アンドレアイリスの事でよっぱどの事があったのかもしれない。


招待を全て断る徹底ぶりも凄いしな。


ま、俺をここまでに過保護にする何かはあるんだろう。


ひと段落ついたところで、俺はお土産の事を思い出して

プレゼント開封に立ち会っていたメアリとハンナに今日買ったネックレスを渡した。


メアリはすごく喜んでくれた。少し目に涙がにじんでいる。

大げさだなぁ。


ハンナは、終始いつも通りの仏頂面だったが、なんだか震えている。


「レ、レオン様、、これを私に?」


「そうだよ。ハンナ。いつもぼ、、、、私がちゃんとしてないから困らせてごめん。ごめんなさい。

 色々教えてくれ、下さったから、昨日もなんとかやれたよ、ました。

 どうもありがとう、、ございます。」


やべ、気を抜いてたからか、昨日みたいにスラスラ言えなかった。

俺の『貴公子Lv3』どうなってんだよ!


やばい、マジでくるぞ。

ハンナの怒り・・・


ハンナのカミナリが落ちるのを覚悟してギュッと目を閉じて身構えたが、何もなかった。


そっと目を開けてハンナを見ると、泣いていた。


仏頂面のまま、ハンナが、あのハンナが泣いていたのだ。


ハンナは、声も出さず、体を大きくふるわせてずっと涙を流していた。


俺は、俺達も驚きで何も言えず、ハンナが落ち着くまでずっとハンナを見ていた。


しばらくして落ち着いたらしいハンナが言った。


ハンナの独壇場だった。


「レオン様、わ、私は、レオン様にどんなに嫌われてでも立派な恥ずかしくない貴公子になって頂こうと

 ずっと厳しくしてまいりました。

 本当に、私の様な口のうるさい使用人など、嫌われていると思っていました。

 本当に、本当に昨日は無事にパーティーを乗り越えられるかと心配しておりました。

 それが、今日になって、このような贈り物の数々・・・・。

 レオン様は立派な貴公子であられたのですね。

 どんなに普段の授業で上手に出来ても、、初めて本当の社交場に出ると緊張して失敗してしまう子がとても多いのに、レオン様は多くの貴族から賞賛されるほどしっかりとなさっておられたと知って、ハンナは、このハンナは、嬉しゅうございます。

 それに、本日も本当にお久しぶりに会われた旦那様と奥方様とのお出かけでいらしたのに、私の事まで考えて下さったなんて、、、ハンナは、嬉しくて、、もういつ天に召されても構いません!」


そう言い切ると、ハンナはまた涙を流した。


父上と母上が、ハンナの肩を抱き、メアリも側で泣いていた。



うわぁ。



そんなつもりじゃなかったのに。



その日から、ハンナまで俺に激甘になった。



まぁ、俺にとっては、良かったのか・・・な?

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