33.家族で外出
パーティーが終わり一夜が明けた。
迷子に指輪拾いに喧嘩を売られるという、よく分からないパーティーだったが、まぁ結果うまくやれたと思う。
俺を起こしに来たメアリに連れられて、両親と朝食を食べた。
食後のお茶を飲んでいる時に父上が言った。
「レオン、昨日は頑張ったな。
パーティーに行く前は、・・少し心配していたが、流石だな。立派だったぞ」
「そうよ、私も少しだけだけど心配していたの。
それなのに、本当によく出来ました。
ネルヴィア伯爵夫人から、大層褒められたわ。
礼儀の正しい、もう立派な紳士だって。
私もお父様もとても嬉しいわ。」
おお!嬉しいな。
ネルヴィアってきっとあの時ぶつかったおばさんだな。
「ありがとうございます。きっとハンナのお陰です。
・・・でも、僕が迷子になっちゃったの、きっと怒られちゃうな。」
嫌な事思い出しちゃったぜ。
「ハッハ。大丈夫だぞ、レオン。
私達があのくらいの事を言うものか。
安心しなさい。
レオンは良くやったんだ。」
「そうよ。確かにはぐれてしまった時は本当に心配したけれど、すぐにまた会えたのだもの。
もしも怒られるとしたら、私達の方よ。
大丈夫よ、レオン。私達3人の秘密にしましょうね。」
父上も母上も悪戯っぽく笑いながら優しく言ってくれた。
「良かった。ありがとうございます。父上、母上。
ハンナは怒ると怖いからさ。」
「ハハハ。そうだな。
ところで、今日は午後に少しだけ街に行ってみよう。
昨夜リリアと話して決めたのだが、どうかな?」
「昨日頑張ったレオンにご褒美をあげないとね。
レオンはもう少ししたら、領地に帰ってしまうでしょう。
私も滅多に街の方へは行かないから、楽しみだわ。
どうかしら、レオン。」
「えっ!本当ですか?嬉しい!行きたいです。」
両親と同行って事はあんまり自由には出来ないな。
でも、家族でお出かけってのも悪くない。
お出かけの準備で、俺はまた母上の着せ替え人形となった。
今日はダークグリーンの上着に紺色のズボンだ。
シャツは相変わらずのヒラヒラだ。
午後の予定が、俺があまりにもワクワクしていたから少し早めの出発となった。
昼食は、城下町でも貴族専用の高級な店で取るらしい。
俺初めての外食だ。
3人で馬車に乗って出発!
昨日はパーティーへの緊張であまり喋れなかったけど、
馬車の中では両親と色々話した。
街の店とは到底思えない高級な店で高級な料理を食べた後、馬車で街を見て回った。
店にもいくつか入った。
父上と母上セレクトの店だからどれもが高級な店ばかりだった。
どこでも店に入ると、何だか豪華な小部屋に通されてフッカフカのソファに座って品物を見た。
完全なるVIP待遇である。
チョコレートの専門店では、幾つものチョコレートを目の前に用意されて自由に食べさせてくれた。
とろける様に旨かった。
父上も母上も紅茶を優雅に飲みながらにこにこしていた。
あんまり旨かったので領地のみんなにお土産にしたいと言ったら、店にある全ての種類を何ダースも買ってくれた。
後で屋敷に届けてくれるらしい。
いや、そんなに食い切れないだろう。
宝石店では、母上のネックレスを選んだ。
綺麗な緑色の石にダイヤがちりばめられている物にした。
母上はとても喜んですぐに付けてくれた。
「ありがとう、レオン。あなたからの初めてのプレゼント。
とても綺麗。お母様はとても嬉しいわ。」
「良かったな、リリア。白い肌によく似合っている。
レオンはセンスが良いな。私に似たのかな」
父上も母上も喜んでいるけど、父上、あんたの財布で買ったんじゃないのか。
この店では、ミラ先生とメアリと、あと不本意だがハンナにもそれぞれ小さな石の付いたネックレスを買った。
ハンナにも世話になってるし、ちょっとした賄賂の意味もある。
父上も母上も、「レオンは使用人想いの立派な紳士」だと褒められたが、だからあんたらの財布だっての。
あ、そうだ。
「ねぇ、これをネックレスにできないかな。」
俺はそう言ってポケットにあった透明の魔石を取り出した。
「おや、お坊っちゃま。これは、、!見事な聖クルニヤ石ですな。」
「おや、聖クルニヤ石とは。レオン、どうしたんだい?」
「え?高価な石なのですか。ボン爺が御守りにとくれたんです。」
「そうか、ボンがくれたのか。
レオン、その石はとても珍しい石なんだよ。
後で私からもボンに礼をするとしよう。」
「素敵な贈り物ね。その石は不思議な癒しの力があるの。
大切な人の無事を想ってプレゼントされる貴重な物よ。
だからレオンも大切になさいね。
私からもお礼をしないと。」
そうか、そんなに凄い物だったんだ。
ボン爺の気持ちに胸がジンとくる。
俺は、明後日には領地に帰るから、間に合うように最優先で加工して貰える事になった。
ボン爺に何かお礼をしたいと思ったのだが、なかなか見つからない。
ボン爺は普段質素な暮らしをしているから、城下町とはいえお貴族エリアの高級店が立ち並ぶ店では何をあげたらよいか分からないし見つからない。
悩んでいると、父上がボン爺やロイ爺は酒が好きだと教えてくれた。
よし、それにしよう!
父上に選んでもらい、ボン爺とロイ爺におそらく高級な酒をお土産に買って、俺たちは屋敷に帰った。
屋敷に着いて馬車に戻るともう日が沈むところだった。
もうそんな時間なのか、あっという間だったな。
なかなか楽しかった!
大満足で屋敷に入るといつも静まりかえっている屋敷がなんだかざわついている。
メアリとハンナが慌てた表情で俺たちのところに向かってきた。
「旦那様、奥様、レオン様!大変でございます!」
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