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32.パーティー3

結局、人の流れに逆らえずに俺は広間の外まで押し出されてしまった。

田舎育ちにこの人混みはつらい。


人が多過ぎて、兄と妹の帰る姿は見えなかったし。


さてと。


ボッチになってしまった俺だが、決して迷子になった訳ではない。


兄と妹が帰り、まだ熱気はすごいが人の動きは落ち着いた。


これからさっきの場所に戻れば良いだけだ。


俺は気持ち早足で歩きだした。


「キャっ」


「おっと失礼。美しい姫、大丈夫ですか?」


「え、?・・・!あ、あの大丈夫ですわ。」


「人が多くて危ないですね。

 こちらなら大丈夫ですよ。では、私は少し急ぎますゆえ。」


「キャっ」


「おっと、失礼致しました。これは美しい姫君、

 怪我などございませんか」


「え・・・?っ!!!だ、大丈夫ですわ。私こそ、助けて頂いてありがとうございます。」


「このような美しい姫君が傷ついたりしては大変だ。

 どうぞ、この椅子にお座り下さい。

 では、私は少し急ぎますゆえ。」

「キャっ」


「おっと失礼。これはこれはなんと美しい姫君。

 怪我などございませんか。」

「キャっ」


「おっと失礼・・」


「キャっ」


「おっと失礼・・」


なんなんだ。

さっきから歩けば歩くほどお嬢さん達にぶつかるのだが。


年齢は俺くらいの年からお姉さんまで色々だが、

この国の貴族令嬢は周りが見えていないのだろうか。


それにしても『貴公子Lv3』はすげぇな。

歯の浮くような言葉がナチュラルにスラスラ出てくるぞ。


似た様な会話をひたすら続け、内心イラつきながら俺はなんとかテーブルに戻った。


いない。


父上と母上がいない。


辺りを見回したけど、良く目立つ母上の綺麗な銀髪を探したけど、

広間はさっきより人の数も多いし動きも大きい。

両親が俺を呼ぶ声がないか聞き耳を立てても、周りがザワついていて分からない。


広間の真ん中はまたダンスが始まっているし。

余計に探しずらい。


父上も母上も俺を探しているのかな。


弱ったな、これじゃ本当に迷子じゃないか。

ハンナに殺される。。。


・・・


そうだ、外に出よう!


出入り口は一つ。


その辺で待っていれば、両親が帰る時につかまるはずだ。


俺はまた、扉に向かう事にした。


っと!


「あらっ・・、ごめんなさい。」


今度はおばさんか。


「失礼致しました。美しい方、初めて来たパーティーで周りを良く見ていなかったようです。

お怪我はございませんか?」


「あらあら、可愛い貴公子さん。大丈夫よ。私の方こそごめんなさいね。」


「お怪我がなくて何よりでございます。

私は、父上のところへ戻らねばなりませぬゆえ、失礼致します。」


「あら、ふふふ。こんなに礼儀の正しい小さな貴公子様のお父様はどなたなのかしら」


「テルジア公爵にございます。

それでは、急ぎますゆえ、、」


俺は、満面の笑みでごまかして会話もそこそこに逃げ出した。


あぶねぇ、あっぶねぇ!

あのおばさん、話長そうだったもんなぁ!


あれ以上話していたら俺が迷子だってバレちまうぜ!


何とか無事に広間から出れた。


むろん・・・何人もの貴族令嬢にぶつかりながらな。



広間を出ると、大きなバルコニーが広がっている。


その真ん中にでかい階段があって、俺たち家族はここを登って来たんだ。


でも、ここも人が多いな。

なんか若いカップルが何組もいちゃついている。

ここで待っていても邪魔かもな。

居心地も悪いし。


階段の下も大きな広場になっていて、デカくて綺麗な噴水があった。

王都の城下町にあった広場の噴水よりゴージャスだ。

お城ってのはすごいな。


あそこがいいかな。


うむ。あの噴水の前で待とう。


噴水に着くと、3人の少女達が噴水の方を向いていた。

どうやら真ん中の子が1人泣いているようだ。


なんだ、・・・イジメか?

前世で、不良達ヤンキーどもに虐められていた記憶が蘇ってきた。

虐めはダメだ、絶対!このレオン様は許さんぞ!


俺は3人に近づいて行った。


「失礼。お姫様がた、どうなされたのです?」


少女達が振り返り、俺に気がつくと泣いている真ん中の子以外の2人の顔が赤くなった。


なんだ、怒ってるのか?

お、俺は怖くないぞ?


「あの、ミーニャの、、いえ、この子の大切な指輪が噴水の中に落ちてしまったのです。」


「私達が、見せて欲しいと外して貰ったせいで、、、」


ふーん。なんだ。


「そうでしたか、それでは私が取って参りましょう。

この辺りですか?」


噴水の水は綺麗で透明度も高い。

あ、あれかぁ。なんだ見えるじゃん。


俺は上着を脱ぎ、ヒラヒラしたシャツを捲ると噴水に手を突っ込んだ。


げ、思ったより深いでやんの。


8歳児の俺のリーチじゃ届かねぇ。


だが、ここでムリでしたじゃさすがに恥だ。恥さらしだ。


俺は指先に軽く魔素を集めるように慎重に意識して、

噴水の底の方に水を押し出す様に水魔法を発動させた。


思った通り、水圧で指輪が浮いてきたぞ!


よっほっ、よっ、、、よっと。


キャッチ、成功!


はー、良かったぁ。取れて。


水魔法の発動先を間違えてたら指輪が遠くに行ってしまうかもしれないから緊張したぜ。


ボン爺の”一撃必殺!”の訓練が効いたかな。

あの訓練はナイフだけど、集中力と獲物への狙いのつけ方は変わらないな。

生き物相手より動かない指輪モノ相手なら楽勝、楽勝!


俺はにこやかに振り返り、泣いていた少女に手渡した。


「何とか取れましたよ。この指輪でお間違いはないですか?」


「あ、あの、、、ありがとうございます。」


泣いていた少女が驚いたようにお礼を言った。


「良かっわね!ミーニャ!」


「良かったわね!ミーニャ。

 あの、私達からも、お礼致します。ありがとうございます。」


うんうん、気分いいな。


「いえ、大した事ではございません。」


「宜しければ、お名前を教えて下さいませんか。

 後にお礼を、、、」


泣いていた少女も嬉しそうだ。

拾得物のお礼はたしか一割・・いやいやいや。


「いえ、本当に礼などー」


「やっと見つけた。そんな所で何をしている?」


後ろから子供の声がして振り向くと、俺と同じ位かもう少し年上の少年3人組がこっちに向かって歩いてきた。


「アンヌ、どうしたんだ?」


「サラ、探したていたぞ?

 おやっ!ミーニャ嬢、どうされた?」


「ミーニャ!どうしたんだ。涙なんか流して」


「ドミニク様、、申し訳ありませんわ。

 あの、この方が、、」


「え?っ!!うわ、いつの間にこんな所にいたんだ?」


「本当だ、 誰だ、お前?」


「なんだお前、驚かせるな!いつからそこにいた?」


えっ?最初からずっといたんだけど。


「あの、ドミニク様。この方が私のー」


「なに!この者がミーニャを泣かせたのか?!」


一斉に振り向く少年3人。

ドミニクとやらの目には怒りがこもっている。


え?おーい。もしもし?


「ち、違いますわ。この方が、」


「貴様!・・・見た事のない顔だな!

 私の許嫁フィアンセに何をした!許さん!」


「どこの家の者だ!?

 私の許嫁フィアンセにも何かしようとしたのではないか?!」


「初めて見る顔だ。辺境の下位貴族の者か?

 我ら許嫁フィアンセを侮辱した卑劣な行為、許されんぞ!」


えぇー。


「あの、私はー」


「レオン!探したのよ!!?」


面倒くさい場面に、麗しの母上、登場!

あっ父上もいる!


ママン、パパンたすけてー!


「レオン。探したぞ。悪かったな。

 先ほどネルヴィア夫人からレオンの話を聞かれてな。

 やっと見つけた。

 おや、早速友人ができたのかい?」


「あら、良かったわね。レオン。

 心配していたけど、お友達が出来ていたなんて。

 でも、ごめんなさいね。私達はそろそろ帰りましょう。」


おぉ!ナイス!



「父上、母上、ご心配をおかけしました。

 それでは、皆様。私は帰りますゆえ、失礼致します」



何だかポカンとした顏の少年少女をよそに、俺は父上を半ば促してそそくさと馬車へと向かった。



こうして俺の初めてのパーティーは終わった。

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