31.パーティー2
国王陛下、王妃殿下の登場だ。
全員で一斉に礼をし、国王の合図でもとに戻る。
おおう、ハンナの言った通りだ!
国王は、60代といったところか。
明るい金髪で、鋭い眼光、遠目にみても威厳のある、THE国王といった感じだ。
王妃様は、それより若く見える。
少し色素の薄い金髪で、優しく見えるがやはり目は鋭い感じがする。存在感すごい。
国王陛下が『自由にするように』と一言いい軽く手を挙げると、広間中に美しい音楽が流れだした。
それに合わせてそろそろと動き出す貴族たち。
父上は、様子を見てそれとなく国王からあまり離れていないテーブルに移動した。
母上と共に後をついて歩く。
いまのところ、挨拶は完璧。
後は黙って時を待つのみ。
国王様、王妃様の座る席の辺りには、貴族たちがぞろぞろと集まっている。
みんな、挨拶をする為に並んでいるみたいだ。
「ふむ、、、潮時か。
やはりこの場で国王に挨拶に行かないわけにはいかないな。
やはりお前を少しだけ紹介しよう。
レオン、先ほどの様に挨拶してくれれば良いからな。」
父上は、俺の耳元でこっそりと言うと、あの行列に参加した。
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みんな無駄に長いな。
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順番が来るのが遅い。
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待ちくたびれたぜ。
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やっと俺達の番になった。
「ナリューシュ王様、デリア王妃、この度はお招きいただきましてありがとうございます。
私、ガルムと妻リリア、次男のレオンにございます」
「おおきたか、挨拶など良いと申しておったのに。
リリア久しぶりだな。その子が病弱で療養中の息子か。」
「国王陛下、女王陛下、この度はお招きいただきましてありがとうございます。
お久しぶりでございます」
母上に背中をそっと撫でられた。
合図だ。
「国王陛下、女王陛下、この度はお招きいただきましてありがとうございます。
私は、テルジア公爵家が次男、レオン・テルジアと申します。
お初にお目にかかれまして大変嬉しく思います。」
はぁ、疲れた。
でも終わった。
俺の仕事は終わったんだ。
「レオンか。良い名だな。
ガルムより病弱とは聞いていたがなかなか療養が効いている様でなによりである。
テルジア領はよほど空気が良いと見える」
その後、また当たり障りのない作り話で父上が話を切り上げ、王様達から少し離れたテーブルへと戻った。
遠くからこっそり見ると、国王女王両陛下への挨拶の行列はまだまだ続いていた。
しばらくして、また国王陛下が立ち上がり、軽く手を振ると音楽が変わった。
これからは、ダンスタイムになるらしい。
ハンナの忠告をよそに、少し気の抜けた俺達家族は、そのダンスを見て楽しんだ。
母上はなんだか踊りたそうだ。
「父上、私はこの端におりますゆえ、母上と一曲踊られてはいかがでしょうか。
ぜひ、父上と母上のダンスが見てみたいのです。」
俺ってばナイスアシスト。
父上と母上は遠慮しながら、広間の中央に向かうと手を取り合い、踊り始めた。
うわぁ。綺麗だ。
こうやってみると、ダンスも出来た方が良いかもな。
ぼんやりと見ていると、 背中に衝撃があった。
振り向くとどこぞの貴族のお嬢さんがぶつかったようだ。
「大丈夫ですか。お怪我はないでしょうか、お姫様」
俺はそういうと、ぶつかった少女の顔を覗き込み、ごまかしスマイルで様子をみた。
ハンナ曰く、女子にはとにかくへりくだれ。
そして名前が分からなければそれは全てお嬢様かお姫様と呼ぶように。
そして、上級テクニックは何か美しい物に例えーこれは無理だから却下されていたんだった。
少女は一瞬ぼけっとした顔の後すぐに顔を赤らめ、「大丈夫です。私の方こそごめんなさい」というと去っていった。
なんだか急いでいたな。トイレか?
曲が終わろうかという頃に、広間中に不思議な鈴の様な音がなった。
『大神殿より!光の御子様、月の御子様が参りました!
国王陛下、王妃殿下に御目通り許されたく!』
誰かがバカでかい声を張り上げると、王様の返事もまたず、兄と妹が白いコートみたいな物を着た付き人に囲まれて登場した。
昨夜の白子よりはマシだけど、何だか怖いな。
遠くから見る兄は静かに微笑んだ表情で輝きながら歩いている。
その後ろを歩く妹はやっぱり無表情だ。
今日のパーティーを経験した俺には分かるぜアニキ!
その笑顔、愛想笑いなんだろ?
よく見りゃ胡散臭い感じがするぜ。
昨日会って、兄妹の苦労を知らないままこの光景を見たら、俺は嫉妬と劣等感に苛まれただろう。
今は静かに応援出来る気がする。
兄と妹が国王と王妃の前に着くと静かに礼をした。
何か話をしている様だが聞こえない。
兄と妹は再度王に礼をすると振り向き、なにごとかをつぶやき両手を広げると、広間全体に光の粒が舞い、春の様な温かい風が優しく吹いた。
その光景をみて、広間全体がわぁっと盛り上がった。
同時に多くの貴族達が兄と妹を一目近くで見ようと押し寄せ、俺はもみくちゃにされた。
気がつくと、ダンスを中断して反対側の方に認めていた両親を見失なってしまった。
やばっ!
俺は慌てて両親に待っているといったテーブルの辺りに戻ろうとしたが、ちょうど仕事を終えた兄と妹が帰る為にまた歩き出したところだったので、貴族達も同じ様に広間の外にに向かって押し寄せていたので俺はその逆流に飲まれてしまった。
うわぁ、マジでハンナに怒られる。
早く両親を見つけないと!