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29.兄と妹

アンドレアイリスが到着した様だ。


両親と俺の待機する部屋まで、使用人たちのお迎えの声が響いている。


絶対俺が来た時より声の数が多い。


父上も母上もそわそわしている。

あれ、俺の時はホールまで会いに来てくれたのに、行かないんだ?


しばらくして、部屋の扉の外から使用人の声がした。


「旦那様、奥方様・・レオン様。光の御子アンドレ様と月の御子アイリス様がご帰着されました。」


・・わざと俺の名前遅れて言ってるのか。


「よい。すぐに通しなさい。」


父上がそう言うと、扉が厳かに開かれ、アンドレアイリスが登場した。


後ろから黒子の白い版、白子とでもいうのか?いやそれじゃ食い物だな。

まとにかく目の部分だけ網目状になっている全身を白い布で包んだ人達が付いてきた。



アンドレは、人間ではなかった。


・・・言い方が悪いな。


アンドレは、とてもじゃないが人間には見えなかった。



全身から金粉を撒き散らしてるのかそれとも自家発電でもしてるのか、ぼんやりと光っていたのだ。


髪は柔らかな金髪で、肩辺りまでの長髪。身長は高いが線が細い。

肌は絹の様な肌の白さに、顔出ちは柔らかい中性的な顔立ち。

・・・まごうことなきイケメンだった。

そしてアンドレは真っ白なローブを身に纏っており、本当に神様の様だった。

女性っぽいから女神様といわれても絶対に疑われないだろう。


あの神様しょうじょよりも神様っぽさは上だ。


「か、みさま?」


つい、ぽつりと声が漏れた。


兄は、それが聞こえたのか目を細めてかすかに微笑むと


「初めまして。君がレオンだね。私はアンドレ。

 神様なんて恐れ多いさ。

 ずっと会ってみたかったんだ。やっと君と会えるときいて楽しみにしていた。会えて凄く嬉しいよ。

 さ、こっちはアイリス。聞いていると思うけど双子の、君の妹君だ。アイリス。」


「初めまして。お兄様。お会いしとうございました。」


妹は、兄の背後から一歩出ると、俺にそう挨拶をした。


アイリスは、アンドレの様に、体を発光させてはいないがストレートの銀の長い髪は母上と同じで

シャンデリアの光を複雑に反射させてキラキラと輝かせていた。

身長は、俺と同じくらいかな。

顔立ちは、確かに俺に似ているが、目は俺よりも丸く女の子らしい。

アイリスは確かに美少女だ。


神様しょうじょにひけをとってない、同じくらいの美少女だ。


妹は無表情だ。目が虚ろなのが少し気になる。夜だから眠いのかな。

気さくに話しかけてくれた兄に比べて、妹は塩対応だった。


「初めまして。わ、私はレオン。

 兄上と妹君の事は父上、母上より聞き及んでおりました。

 お会い出来て光栄にございます。」


ハンナの特訓が少しは効いたかな。


「はは。いいよ、レオン。そんなにかしこまらないで欲しいな。私達は家族じゃないか。

 アイリスは緊張しているのかな。レオン、すまないね。」


「いえ。私も同じですから。」


兄の高対人スキルにより、俺は兄とはなかなかすぐに打ち解けた。


兄は領地の話を聞きたがった。


近くに白子つきびと達がいるから、

領地では庭で遊んだり勉強して過ごしていると当たり障りのない話をした。


これは、アンドレアイリスが来ると分かってから急遽行った

父上と母上との事前の打ち合わせによるものだ。


それでも、兄は目を羨ましそうに輝かせて俺の話を聞いた。


「いいな、レオン。君が羨ましいよ。

 私は王都にいるとはいえ、子供の頃から神殿での隠遁生活をしているからね。

 私もいつか領地に行ってみたいよ。」


兄は少し寂しそうに言った。


妹は相変わらず無口、無表情だ。


「領地は自然が多いですが、面白いところは特にありませんよ。

 私は今日初めてきた王都の豪華さに驚いています。」


アンドレも大変そうだな。

何だか悪いな。

俺、領地でかなりエンジョイしてて。


「兄様、神殿ではどんな事をなさっているのですか?」


これも両親との打ち合わせ、というか両親からの依頼による代理質問だ。


必殺!田舎育ちの子供おとうとによる、単純で純粋な質問攻撃。


「面白いことなんて何もないさ。

 一日中お祈り。お祈りから始まりお祈りに終わるのさ。

 この国、この世界の平和を思ってね。

 だけど、僕らは本当に力になれているのか分からない。

 街の人達を見る機会も話す機会もないからね。」


「一日中、ずっとお祈り・・・?」


「そう、私やアイリスの持つ力は人々を幸せにする為の力なんだそうだ。

 だから毎日多くの人が幸せになる様に心を込めて祈っているよ。

 ・・・でも、少しは家に帰ったりレオンに会う時間は私も欲しいと思っているよ。」


アンドレが心の内を話すと、後ろの白子つきびと達が妙にソワソワし始めた。

アイリスアンドレのローブの端をギュッと握った。


何かに気が付いたように父上と母上が話に入り、また当たり障りの会話が始まった。



うーん。


ここまでの会話からは、アンドレも苦労人なんだなって気がする。アイリスもか。

話が本当なら、俺がその立場だったら発狂もんだ。

俺の方が全然楽しく暮らしているぞ。父上も母上もナイス判断だったな。

ま、俺のは髪も肌の色も全然神々しくないし、どう頑張っても神殿とやらは見向きもしないだろうに。


しかし、神殿ってのは一体どんな機関なんだろうな。



時間にして1時間弱といったところで、早々に兄妹は時間切れの様だった。


あっという間だった。


兄妹に会う前は、俺は5分と耐えられないだろうと思っていたから意外だった。



最後にアンドレに、神殿に行ったら会えるか聞いてみた。


アンドレは嬉しそうな悲しそうな表情でほほ笑むと、会えない、と言った。


「私達は、いつも神殿の奥で祈りを捧げているんだ。

 そこは神殿の者しか入る事が許されないから難しいかな。

 でも、もしレオンが来てくれたら、それだけで私達は嬉しいよ。」


そう言うと、白子つきびと達に囲まれ2人は帰って行った。


どうやら、玄関まで送ったりする事はできない決まりらしい。


馬車の音が聞こえなくなるまで、寂しそうな表情の両親と共に静かにその場に立ち尽くした。



思っていたのと違う。


王都おうとに来るまで、兄妹はこの王都の屋敷で両親に甘やかされ贅沢して楽しく暮らしているに違いないと嫉妬していたのだ。


領地での生活に不満はないけど、俺だけ田舎に追いやって幸せに暮らしているものだとばかり思っていた。


まさか俺の方が恵まれていて、俺の方がよっぽど甘やかされていたなんて。。。


しかもアンドレアイリスの事情を目の当たりにしてしまった今は、

それを素直に受け入れて喜ぶ事はできない。



・・・重い。


・・・ちょっと重たいな、この兄妹。


あの2人が兄妹だと俺の8年が羽の様に軽い気がする。


^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^

慣れない部屋の慣れない寝台の中で、何度も寝返りを打った。


眠れない。


・・・今日は、なんだかすごかったな。


怒涛の様な1日だった。



容姿、性格、全てにおいて勝てる気が起きなかったけど、

俺はアンドレに嫌な気持ちも劣等感も起きなかった。


アイリスは終始無表情で黙っていたので俺はまだどういう感情を持てば良いのか分からない。


でも、アイリスとも話してみたかったな。


次はいつ会えるんだろう。


・・・・・・


スキルの事を思い出して、俺は「ログ」を唱えた。


カタログをパラパラめくる。


あった。


エクストラスキルの項目に兄妹ヤツらの加護を発見!


『光(聖)』:100000000ポイント


な、なんだって?!


いちおくポイントだと?!


これ取らせる気ないじゃん。


取らせる気、絶対ないスキルじゃん。


ていうか、こんなチート持ってて神殿の言いなりとか、兄妹あいつらバカなんじゃないの?!

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