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27.前日の準備

両親が予告した通り、翌日は朝から大忙しだった。


まず、明日のパーティーに備えた俺の衣装選び。

どれもこれも同じヒラヒラにしか見えないが、母上の厳しい監修のもと、何度も着替えさせられた。

見知らぬ女中メイド達に服をはぎ取られては着せられ、またはぎ取られ、、、


俺は着せ替え人形と化した。


だけど、なんでだろうな。

面倒くさいとは思うけど、嫌な気持ちは全然起きない。


服を着るたびに、母親が俺の頭から足元まで体中をまさぐって褒めたたえてくれるのだ。


「レオン、素敵よ!とても凛々しいわ。

 男の子らしくて、この藍色もとても上品でレオンに似合うと思っていたの。

 でも、そうね。レオンの髪にはこっちの赤い服も似合うんじゃないかしら。」


「やっぱり!思った通りだわ。とても似合っているわよレオン!

 まるで太陽のよう・・・。

 あぁ、でもこれでは目立ち過ぎてしまうかしら。。

 そうね、やはり大人っぽく黒がいいかしら。」


「素敵よレオン。もう立派な貴公子ね!

 これならテルジア家として恥じない立派な大人の一員よ!

 でも、やっぱり地味かしら?まだ8歳ですものね。

 黒はもう少し大きくなったらいくらでも着れるもの。」


「レオンの髪と元気な小麦の肌を引き立ててくれるのは、

 ・・・・これかしら!

 レオン、これを着てみて。お母様にみせてちょうだい。」


最終的に決まった衣装は、シャツのヒラヒラはさることながら、白いスーツっていうのかな。

前世でも制服くらいしかちゃんとした服は持っていなかったから服の事は良く分からないけど、

なんだかカッコイイ服で決着した。


その後もやはり母上監修の元、靴下や靴やハンカチなんかの小物類だとか、髪型だとかが入念に決められていった。


8歳ってさ、まだまだ成長期なんだけど、こんなに服を用意して大丈夫なんだろうか。

この決まった服以外、一生着る事が無い気がするんだが。


いや、そんな庶民の考えは公爵家たるもの論外なのだろう。


それにしても、母上は綺麗だな。

銀色の髪がシャンデリアの明かりにキラキラ反射して、肌の色も陶器みたいに白くてきれいだし

一体何歳なんだろう。


「母上はなんでそんなに若くて美しいのですか。

 明日僕と一緒にいたらお姉様だと間違われるかもしれませんね。」


点数稼ぎでもなんでもなく、つい純粋な気持ちでポロリと話すと、母上は気絶しそうなほど感動し、

なんでもいいからプレゼントをくれるという話になってしまった。


前世だったら、パソコン、ゲーム、マンガ、ヲタグッズなど欲しいものはあり過ぎるが、

この世界で田舎育ちのレオンが欲しいものなどなかなかない。

街の屋台をぶらついて、食べ歩きがしたいとかそんな事しか思いつかない。

しかもそれは領地に戻ればボン爺が叶えてくれそうだ。


そうだ。父上と母上の写真を貰おう。

なんだか王都にきてみたら家族って案外いいなって気分になったし。

でも、この世界で写真なんて見た事ないな。


俺は、自室の机に飾れるくらいの大きさの父上と母上が描かれた絵を貰う事にした。


想像通りかもしれないが、俺の要望は両親にとって1000点満点以上の答えを叩きだしたらしい。

両親の中では、素直で健気なレオン君像が完成された。


両親の俺への激甘度が増大した。


後で、領地にバカでかい肖像画とかが届いたら嫌だな。



^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^


お茶を飲みくつろいでいると、昨日ぶりにまさかのハンナが登場した。


えぇ。。。時間が余ったから遊びに行けると思ったのに。


今度は両親の立ち合いのもと、マナー講習が開かれた。


マナー講習が始まると、父上と母上の表情が笑顔のままこわばった。


「レオン様!『僕』じゃなくて『私』でしょう!

 何度言ったら分かるのですか!!!

 はぁ〜〜。もう明日だというのに・・・、いいですか。

 明日は、極力、何も、話さない。分かりましたか?!」


「う、はい。」


「レオン様、今『うん』と言いそうになりましたね?!

 いいですか。それが許されるのは領地とこの屋敷の中のみ!

 いえ!王都では屋敷の中ですら許されませんよ!

 ・・・笑顔と姿勢だけは大丈夫でしょう。そのままキープ!!

 いいですか!明日はくれぐれもお口は開かない事!

 明日を乗り切る為に開かれている道はそれだけです!」



・・・・・このババア、すげぇ。



なんで俺の両親の前で平常運転なんだ?



「レオン様!! 返事は!!?」


「はいっ!」


「返事が元気すぎます!もっと上品に!!!」


「はい。」


「ま、まぁ、ハンナ。子供なんだから元気が良くていいんじゃないか?」


「旦那様!!!!なりません。テルジア公爵家が恥をかく事になっては遅いのです。

 ひいてはテルジア家の今後の為!未来の為!!

 レオン様を甘やかして良いのは領地だけになさってくださいまし!!!」



両親の前でまさかの恥をかかされた俺は、もの凄く落ち込んだ。


なんだか父上まで落ち込んでいる様な気もする。



嵐のレッスンが終わり、

疲れ切った俺と両親がぐったりと静かにお茶を飲んでいた時、使用人が一報を入れた。


「旦那様、奥方様、弟君・・レオン様、お休みのところ申し訳ありません。

 光の御子様と月の御子様のご予定ですが、明後日みょうごにちに当屋敷へのご帰宅の予定のところ

 神殿の予定により、本日、夜のご訪問と変更になったそうです。

 急な変更になり、大変申し訳ありません。私共ももすぐに準備にとりかかっております。」



こいつ、今・・・俺の名前出てこなかっただろ。。。


俺が使用人を鑑定する間もなく、父上が慌てた様に使用人に返事をした。



「なんと。今夜だと?・・・急な変更はいつものことだが、今回はレオンがいるんだ。

 ゆっくり一日はいられると思ったのだが。」


「今夜だなんて、、きっとすぐにまた神殿へ行ってしまうのね。

 レオン、ごめんなさいね。

 お兄様と妹にずっと会っていなかったからゆっくり時間を取れるよううにお願いしていたのに。」


「・・・今夜、兄上と妹に会えるのですか。心の準備が、、、」


「なに、初めて会うからな。緊張はするかもしれんが、本物の兄妹なんだ。

 すぐに打ち解けるさ。私たちもいる、大丈夫だよ。安心しなさい。」


「そうよ、レオン。あなたたちは私達の本当の兄妹なんだから。

 きっとすぐに仲良くなれるわよ。安心してね。」



母上は優しくおれの髪と頬をなでてくれた。



だが、俺の心中は穏やかじゃない。



いやいやいやいや、義兄でしょ!?アンドレが長男とかないよね?



・・・そうなの?・・・じゃあせめて、、せめて領地は俺に下さい。




背中から尋常じゃない汗が噴き出ていた。

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