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23.王都へ

王都編はじめました。

やぁ。みんな元気かい?


突然で悪いが、今俺は馬車の中にいる。


先日、両親から手紙が来て

ナリューシュ王家主催のパーティーに俺が出席するという決定報告がなされたのだ。


その日からハンナの鬼の修行が始まった。

俺には地獄でしかなかった。


普通のパーティーと違って王家主催となると全く気楽なものではなくなるらしい。

そりゃそうだよな。前世で天皇陛下にお呼ばれされたと考えると一大事だ。


あの終始仏頂面のハンナが、慌てふためき

毎日の様に頭を抱え、ため息をついていた。


ハンナの白髪が増えた。


俺はそれなりに頑張ったが、ハンナの及第点は得られなかった。


最終的にハンナからは数枚の紙束を渡された。

ハンナお手製の会話集、というか台本の様な物だった。

この台本を頭に叩き込み、台本通りに話す。

そしてこの台本にない会話の場合、笑ってごまかす作戦だ。

このごまかし笑いの時の最も有効な笑顔の作り方まで叩き込まれた。


まぁ、最悪の場合はスキル『貴公子Lv3』でもとるさ。

必要ポイントも1000Pだしな。


王都へ行くメンバーは、俺、メアリ、ハンナ、ボン爺の4人だ。


ボン爺はもともとレオンの護衛として雇われている。

『鑑定』を取るまでは庭師だとばっかり思っていたけど、

それは屋敷だと特に護衛の仕事がなかったからだそうだ。

確かに3年前のあの夜、ボン爺は俺を助けてくれたよな。

あれ、ただの仕事だからってわけじゃないよな。・・・ボン爺。


行きたくもないし、行く事もないと思っていた王都だ。

ボン爺が来てくれるのはとても嬉しい。


メアリは俺に付いて当たり前だと思うけど、ハンナはマジでいらない。


この王都までの道中もハンナがうるさいのなんのって。


だけど、このマナーってやつは”姿勢”の良さが基本なんだ。

『身体強化Lv3』を取っておいて良かったと思った。

ずっと同じ姿勢を続けていても疲れないからな。


”貴族言葉”ってやつは苦手だけど、外国語だと考える事にしたら少し楽になった。

ま、、そうこじつけてミラ先生にも教えて貰ったんだ。

ハンナがどんなにガミガミ言っても覚えられなかった事が

ミラ先生により一週間たらずでだいたい覚えられた。


さて、王都までの道のりは3日。

実はこの退屈な旅も半分は過ぎた。あと1日半で王都に着く。


昨日、宿泊の為に寄った街で思いっきり探検したかったのに、ハンナに強制却下されたんだ。

頼みの綱のボン爺は一人でふらっといなくなっちゃたし、とにかくつまらなかった。


そういえば宿泊先の宿屋でこっそり魔法の練習をしたんだ。

ここなら俺の屋敷よりも魔素が濃いかもしれないと思ってさ。


試してみたのはやっぱり室内で害の少なそうな風魔法。


屋敷ではカスみたいな魔法しか出ないからいつも全力でぶっ放しているのだが、

ここでは何が起きるか分からない。

俺は魔素を慎重に小指の先に集め、そっと魔法を発動させた。


そしたらさ、


部屋の中に小さい竜巻が作れたんだよ!


これはマジのマジで嬉しかった。


ボン爺が帰ってくるのを待ち構えて披露して見せたらニコニコして褒めてくれた。


でもその後、危険だからと宿屋での魔法は禁止されてしまった。

褒められたのは嬉しかったけど、やっぱり見せなきゃ良かったかな。


ボン爺とは、パーティーが無事に終わって屋敷に帰ったらアイリーンと屋敷の外にに行く約束をした。

魔法の練習もそこでさせてくれるらしい。


早く魔法を使ってみたい。

早く屋敷に帰りたいぜ。


ところで、今回の旅は馬車2台構成なんだ。


2人ずつ馬車に乗り込む体制だ。


昨日は最悪な事にハンナと一緒の馬車だった。

馬車の中ですら姿勢キープに、台本の復習と気が狂いそうになる時間ときを過ごした。


今日は、俺のたっての願いでボン爺と俺、メアリとハンナに分かれた。


しかもボン爺は、馬車にただ乗っているのが苦痛だからと護衛も兼ねて単独で馬に乗り、

俺の乗っている馬車付近を並走している。


よって、俺は一人だ。


寝転がっていてもよし、居眠りしても良し。


昨日と比べたら天と地ほどの差だ。


メアリとハンナは俺が馬車に一人になる事を心配したけど、

乗り物酔いをするかもしれないから広いスペースがあった方が良いという理由で押し切り、一人の時間をゲットした。

昨日、本当に途中で何回か吐いたし、嘘ではない。

馬車の揺れもまた独特なんだ。

慣れるまで時間がかかりそうだ。


馬車はトコトコと順調に進んでいるようだ。

俺は適当に寝ころびながら、乗り物酔いに効くとボン爺から手渡された草の茎をかじっている。

ほんのり苦く、青臭い、”草”って感じの味だ。


明日の夜には王都に着くんだよなぁ。


王都にあるらしい俺の屋敷ってどんな所なんだろう、と想像する。


両親の事も考えた。


そして、いつか神様しょうじょが言っていた『兄』と『妹』の事を。


この数年両親が全く来なかったから、すっかり俺は自分に兄妹がいる事を忘れていた。

というかそもそも弟と妹だと思ってたんだ。兄なんて聞いてない。


この2人の存在について、屋敷のみんなに聞いた。


そして纏めた情報がこれだ。


------------------------

・義兄:アンドレ・テルジア。現在18歳。養子。

 生まれながらにして何だかすんごい力を持っている。

 神々しい程のイケメン。

 現在王都


・妹:アイリス・テルジア。現在8歳。俺の双子の妹。

 生まれながらにして何だかすんごい力を持っている。

 母親譲りで超絶可愛い。

 現在王都

------------------------


正直、俺は落ち込んだ。


何だよ、義兄って。

卑怯じゃないか。

何のために俺が『長男』を選択したか分かってるのか?

将来の為の保険だぞ!

俺の成長の過程で上手くいかなかったら家を継ぐという保険が、台無しじゃないか。

最近は貴族貴族したのはあんまり肌に合わないから家督を継ぐ気持ちはかなり薄れていたけどさ。


そして、妹。っていうか双子?

色々引っかかり過ぎて、理解不能だ。

妹が欲しいなと思った事はあるけど、双子となると、なんでだろう。腑に落ちない。


そして2人に共通する、『生まれながら持つすんごい力』ってなんだよ。


チート臭しかしないじゃないか。



・・・やっぱり俺は要らない子供だったんだ。




王都なんか行きたくないな。

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