表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/169

20.マナー教師


 最近、深刻に悩んでいる事がある。


 この屋敷に投入された、マナー教師のハンナの事だ。

 ハンナが来てからというもの、この屋敷での自由フリーダムな生活が脅かされている。


 まずは、過度な挨拶の禁止。


 ポイント稼ぎの為に俺がなりふり構わず挨拶しまくっていたせいで、ハンナが来た時には、既に屋敷中が居酒屋並に元気の良い声の絶えないナイスな空間になっていた。


 ハンナは、早速うちの使用人全員(ロイ以外)を横一列に整列させ、長時間に及ぶ説教をした。


 俺のポイントの稼ぎ頭が消えた。


 挨拶だけで調子の良い時1日は50ポイントは稼げていたんだ。

 蛇1匹分だぞ。でかいだろ?


 そして、屋敷わがやは暗黒の時代へと突入していった。


 それからの俺は、話し方・歩き方・お茶の飲み方・食事作法・エスコートの仕方なんかをいちいちキビキビネチネチと指摘される毎日を送っている。

 貴族の子としては当然のマナーだからスマートに出来る様にならなくてはいけないらしい。

 これまでだって食事メシの時は上品に食べていたつもりだったが、全くなっていないんだと。

 廊下を走る事も当然ながら禁止された。


 ま、ハンナが見てない時はやりたいようにやらせてもらっているけどな!



 禁止、禁止、禁止、禁止・・あぁ、昔が懐かしいなぁ……



 週に一度はダンスの授業がある。これが最高に鬱になる。

 可愛い女の子が相手なら喜んで真面目に練習するが、いつも相手はハンナなんだぜ。

 太ったババア相手にダンスの練習なんて何が楽しいんだ。

 ミラ先生だったら、絶対真面目にやるのに。



 「レオン様には、テルジア公爵家に恥じない貴公子になって頂きますわ!」


 「レオン様はもう5歳にもなられるのに、こんな事……王都ではもっと小さい子でも出来る事ですよ。」


 「棒切れなんか振り回して……もう十分大人ですのに、このままでは王都で恥をかかれますよ!」


 毎日チクチク嫌味を言われ続けているせいで、気を抜くとハンナから言われた事が脳内にこだまする。

 うるせぇ!王都なんか一生行くか!俺はここが気に入ってるんだ!


 とにかく、今のままだと俺の心が死んでしまう。


 俺は隙あらばハンナを鑑定していた。

 この『鑑定Lv3』ではなぜか夫婦関係だけでなく恋人関係まで表示されるという、なんとも下世話な機能が付いている。


 これでいつかハンナのスキャンダルを暴いてやる。

 ------------------------

 『ハンナ・アインシュベルグ』(60)

  職業:レオン・テルジアのマナー教師

 ------------------------

 ……しかしいつ見ても変わらないな、このオバサン。


 クリスとドーラなんてなぁ、しょっ中くっついたり別れたりで大忙しなんだぞ!

 鑑定が今一番仕事をしているのはあの2人なんだ。

 お陰で俺だって、あの2人には普段から結構気を使ってるんだ。


 あーあ。ロイにだけは何も言わないから気があるのかと思ったのにさ。

 いや、ロイがハンナを好きになる事はなさそうだな。


 それにしても、ただのマナー教師の癖になんでいつも偉そうなんだ。


^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^


 日が経つにつれ、ポイント稼ぎが出来ない事に焦燥感も募る。

 スキル取得に大幅にポイントを消費したから早く稼いで戻したいのに。


 せっかくの神様しょうじょからもらったチートをショボい挨拶なんかで稼いでいるのも情けなかったが、このままじゃ本当にスキルを貰った意味がない。


 あの神様しょうじょはこのスキルのせいで罰を受けてるのに。


 何とかしなくては。


 ボン爺に、ネズミより蛇に戻して欲しいとお願いした。


 ボンは白髪混じりのボサっと伸びた片眉を上げ、


 「いや。坊ちゃんに選択肢はないぞ」


 と却下された。


 「いいか。忘れてはいかん。遊びでやってるんじゃない。まだこのネズミすらおっかなびっくりで一発で仕留められんじゃないか。このネズミ500匹に囲まれたとき、お前さんよどうする?」


 遊びじゃない……


 そうだ、俺、たるんでるんだ。

 なんでボン爺がこの特訓をしてくれてるのかを忘れてたぜ。

 ポイントに目が眩んで、弟子として師匠に恥ずかしい事を言ってしまった。

 次は汚れる事、血がつく事、噛まれる事、引っかかれることを恐れずにやってみよう。


 苦肉くにくさくで、俺はアイリーンの世話を熱心にやり始めた。

 『ペットの世話』ってのも善行ポイント対象になるんじゃないかな。

 それにアイリーンには俺の事を早く覚えて貰いたいし早く仲良くなりたい。

 いつかアイリーンと屋敷の外に出て、魔物退治をすればいいんだ。そうすればポイントは稼げる。


 きっとしばらくはボン爺と一緒に出かけるだろうから怖くはないしな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ