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134.出発


 ナイスな俺の提案にスライム達は一つの条件を出す事でOKを出してくれた。


 その条件っていうのはこの島に木蔭を作る事だった。


 沼以外何もないこの島にどうやってと思ったが、そこはボン爺の魔法道具マジックアイテムである道具袋。

 薬草やら花の種から様々な品種の果物の木や珍しい木の実のなる苗も持っていた。

 ボン爺、流石だな。


 そうは言ってもこの土地で無事に育つのかとかそもそも植林なんて時間かかりそうだけどそこはルッカがなんとかしてくれた。

 妖精達に頼んで成長速度をあげてくれたんだ。


 地面がかなり水分を含んでる状態だったから根を伸ばすのが難しかったみたいでボン爺の持っていた種と苗のうち最も希少な木の実のなる木だけが十分に根を張ってくれた。


 ボン爺にとってはかなり痛手だったらしい。

 いつか定住する地を見つけたらそこに植えてそいつで儲けながら暮らそうという算段があったらしい。

 俺の領地の屋敷に植えてなかったってことがちょっとひっかかるけど。

 ま、先日メイの故郷で老後を過ごすって言ってたし、それならあそこ完全自給自足の生活送ってるから儲けるも何もって感じだけどな。

 って思ったらその苗は、相当旨い酒の味がする実を付けるらしい。

 なるほどな。ボン爺の辛そうな表情にも納得。

 儲けるっていうか、自分でも食いたかったんだな。


「こんな事になるなら島を出る前に一つでも植えて来れば良かったわい……」


「まあいいじゃん。島に住むことになったらここまでスライムに送ってもらうなりすればいいんだから」


「わしはスライムとは話せんぞ。全く…何でお前だけ魔物と会話なぞ出来る様になっとるんだ」


「おっとー。それは…分からないけどさ、でも大丈夫だよ。俺も将来あの島で暮らす予定だから」


「何を言っとる。国王からもさっさと帰ってこいと言われとるお前がそんなこと出来るとでも思ってたのか?」


「えっ⁉ いや……それはなんとかするよ。ま、とにかくあの苗がなかったらスライム達も協力してくれないんだし、俺たちもずっとこの島を出られないしさ」


「はぁ。マールのやつはもう船には乗せたくないわい」


 ……それは同感だ。

 スライムに運んでもらう時も暴走すんじゃねーぞって言っとかなきゃな。


 落ち込むボン爺を励ましている間にも根を伸ばした木は魔法がかかったようにみるみる成長していき、枝には実をつけた。

 ま、魔法みたいなもんなんだけど不思議な光景だったぜ。

 苗はほんの5つ程度しかなかったから少ないけど、とりあえず木を生やす事には成功。

 後は実から種を取り出して……っていう作業をみんなで行い、今度は種から育てて貰い増やしていった。

 

 木の実は割ってみると本当に酒くせえ……。

 俺にはまだこれが旨そうとかも思わないからボン爺の気持ちは分からないな。


 ボン爺は実の部分を大切に集めて食っていた。

 ディアーナもちょっと気になったのか少し食べて「うん。フルーティーで私もこれ、好きだわ」とボン爺と意気投合しどうにかして保存食にしようと相談を始めていた。

 あの食いしん坊のマールはあんまり好きじゃないっぽく珍しく近寄って行かなかった。

 なんでだろうな。年齢的にはいける口っぽいのに。


『あの子はまだ子供だもの〜。私くらい大人の女にならないと味なんて分からないわよ。ふふふー』


 うーん。分からん。


 それにしても、あの何もなかった寂しげな荒地に木が生えていくってだけでちょっと豊かになった気がするのな。これでスライム達も生活が楽になるだろう。よかったよかった。

 ほんと妖精って、なんでも出来るのな。

 やっぱり俺も妖精使える様に……


『だからそれは本当にやめて』


おっとごめん。


『そこまでされたら私ほんとうに成仏するしかなくなるわよ……だからやめてったらやめて』


 分かったよ。まったくルッカは何をそんなに気にしてるんだか。

 ルッカは別に何もしなくてもずっと側にいてくれるだけで十分なのにさ。


『……そんなこと言っても幽霊の私なんて何か出来なかったら意味ないじゃない』


 いるだけでいいってすげー価値あると思うけどなー。ルッカとは出会えて本当に良かったって思ってるんだからさ、あんま気にすんなよ。


『……それでもっ、生きてるマールでも出来ない唯一の能力チートなんだから。本当にやめてよね』


 へーへー。オッケー。わかったわかった。


 スライムから出された条件を解決するまでにほんの三日程度。

 ぶっちゃけスライム達も驚いていた。

 当たり前だよな。

 むしろせっかくスライム達のためにやった事なのに

 

『人間はこんなことも出来るのか?』


 とかなりびびってしまったので、そこを説明するのに時間がかかった。

 これは俺たち人間がっていうよりはエルフと妖精がやってくれたことだって。


『……エルフは人間が嫌いだぞ?』


「え、知ってんの? 俺たちはたまたま友達になったんだよ。だから平気なんだ」


『信じがたいが確かに一緒にいるな。何千年と生きてきてこんな光景は初めて見る』


「……もしかして、エルフの事なにか知ってたりします? 実はあのエルフの子の家族を探してるんだ」


『あー……そこまでは知らん。エルフは定住しないからな。我々もこの地に辿り着くまでは似たようなものだったが』


 そっか。それは残念。

 でもま、エルフを知ってる魔物スライムもいるくらいだからいつか会えるだろうし気楽にいくか。


『さて、約束は果たそう。どこまで行けばいい?』


「あ、それはちょっと待って。実はまだ目的地が定まってなくてさ」


『海の底です。北に200km、その後西に100kmほど移動して下さい』


 おお! マリア様⁉ もう見つけたの?


『私を舐めないで下さいな。これしきの事…朝飯前です』


 それは心強い。じゃ、早速ー


『ちょっと、面倒な事になっていますけどね。何か宝石ヒカリモノか珍しい物を持って来ると良いでしょう』


 ……宝石ヒカリモノとな?


『ま、来るまでに説明しましょう。その魔物スライムの移動速度がどの程度か分かりませんから早く出発して下さいね』


 お、おう。分かった。


 なるべく大きめのスライムの中に2人ずつ分かれて入る。

 ボン爺とマール、ディアーナとアイリス、俺とメイだ。

 やったぜ。

 ここにきてやっとメイと二人きりだ!

 スライムの躰はぷにっとしていて弾力があり、入り込むのには時間がかかったが入ってしまうと快適だ。

 でっかいゼリーの中に入ったらこんな感じなんだろうなーってもんだ。

 メイたちが楽しそうに中で遊んでた時も思ったけど窒息することもないし、会話も出来る。

 スライム達が海の中に入って行くと、景色も変わった。

 スライムが透明だからはっきり見える。

 海の中は澄んでいて綺麗で幻想的だ。魚が泳いでいるのも分かる。


「すごーい。きれー……」


 スライムの中から瞳を輝かして景色を見ているそんなメイの方がよっぽど……


『メイは可愛くて良い子だな。お前メイに悪さをするなよ』


 スライムから忠告を頂いた。

 悪さなんて……そんなことするわけないじゃねーか。余計なお世話だっての。


 で、マリア様。

 出発したけど早く説明してよ。


『そうですね。その前に宝石ヒカリモノは?持ちましたか?』


 いや、それが特に持ってなくてさ。

 ディアーナが昔ちょっと持ってたらしいんだけど、だいたい売っ払っっちゃって今持ってるもんは誰にも渡したくないらしいし。


『そう……それは困りましたね』


 あのさ、俺ベネット王国の国王から貰った通行証みたいの持ってるんだけどさ……それって珍しい物に入る?

 めっちゃ便利アイテムかとおもったのに一回も使わなかったんだよなー。


『……どうでしょうね。でも権威的な意味でいえば……それでいけますかね。ただ難しそうな気がします。いかにそれが珍しい物かハッタリでもいいから上手く言える練習をしておきなさい』


 ハッタリって……一体そっちには何があんの?


『言っても貴方には分からない事ですけどね……厄介な事に人魚の里なんですよ』


 人魚‼


『そうです。無類の宝石ヒカリモノ好き、イケメン好きで悪名高い人魚達に二人は捕まっています。解放の交換条件におそらく高価な物を要求されるでしょう。何も持っていないければ殺されます』 

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