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129.マリア


ルッカのおかげで明日にはこの島を出発して改めて旅立つ準備が整った。


「まさか、本当に行ってしまうのか」と島のみんなは熱心に俺たちを引きとめようとしたし、メイの両親は特に悲しんでいた。

メイもやけに辛そうでこの二日は今にも泣き出しそうな顔して両親から離れようとしない。


そんな姿を見せられたらメイは本当に俺たちと一緒に来てくれるか心配だ。

泣いて「パパとママといっしょにいたい」なんて言われたら何も言える気がしない。


だけど島に来てから出立前夜になっても、メイはその言葉を一回も発する事はなかった。


メイを信じよう。


だけど明日になって、もしこの島を出たくないとメイが言ったなら、俺はメイの気持ちを尊重しよう。


そうしなきゃいけないんだ。


兄貴アンドレの事があるから、俺は行かなきゃならないけど、終わったらすぐに迎えに行こう。っていうか婿入りしよう。


出立前夜、明日に備えてもうみんな眠っている。

俺も寝ないといけないんだけど、メイの事が気がかりで眠れずに仕方なく海岸をぶらぶらと歩いていた。


今夜は特に暗闇に瞬く星の光が海面に反射して明るく感じる。波の音は少し、寂しげに聞こえる。


『なんだかやけに感傷的ねー』


ルッカ、今回はありがとな。


『どういたしましてー。どっかの誰かさんと違ってルッカ先生は出来る子だから』


やめろ! 変な事思い出させるなよ!


『なになに? 50万Pポイントもかけて取ったスキル『コミュ力(人外略)』のこと? それとも、取ってもアイゴンと話す目的が叶わなかった無駄スキル『コミュ力(人外略)』のこと?』


やめろよ!

…… あんなイロモノスキルいらねーよ!


『当然ながらスキルをリリース出来る様なスキルもなかったなよねー?』


やめろって!

……あーあ。カッコイイスキルで揃えていきたいのにうまくいかねーな。

みんな元々のポテンシャルで結構いいスキル持ってるしステータスも一貫性あってカッコいいのになんか俺のステータスってごちゃごちゃしてるんだよな。

 

『ばかね。いつまで引きずってるのよ。自由にスキルを取れるんだからいいじゃない。お魚さんとお話ししてみれば?』


……ルッカさあ、何怒ってんだよ。


『レオ…分からないの? レオのせいでまた能力チートを無駄にされたルッカちゃんの方がよっぽど可哀想じゃない』


はぁ…何だよそんなことぐらいで怒るなよ。


『まさか…本当は私の事さっさと成仏させようって企んでるんでしょ⁉』


はっ? 何言ってんだこいつ。

ルッカさあ、良く考えろよ。せっかくマールっていう生きたエルフに出会って他のエルフにも会えるかもしれないって分かったんだぞ?

しかもアイリスのおかげでみんなと喋れるようにもなったじゃんか。

俺だけじゃなくてみんなルッカに成仏なんか願ってないに決まってんじゃん。

被害妄想もたいがいにしろよ。

俺が死ぬまで一緒にいようぜ?


『……なによ、違うもん。そういう話じゃないもん。レっレオが変なスキル取って私に嫌がらせするからじゃない』


それは、俺だって悪かったと思うけど…って何だよ。どっか行っちまったか。


……ふむ。仕方ないから、虫とでも話してみるか。


「おい、虫。言葉通じるか?」


『……あの、ずっと気になっていたんですが、私の事『虫』って呼ぶのやめて貰えませんか? 失礼だと思いません?』


「虫が喋った⁉︎」


『だから、その呼び方やめてくれません? ちょっと本っ当に嫌なんですよ』


「…ごめん」


『あと、ルッカに今まで変な通訳されてたのも精神的に苦痛でした』


あいつ!……ルッカのやつ真面目に通訳してなかったのか。

お調子者の江戸っ子みたいな意訳しやがって。


『まあ、ある意味私はレオンがそのスキル取ってくれて良かったですけどね?』


すげえ。こいつ…めっちゃ良く喋る。


「っていうか、今までの会話とか…人語っつーのかな。分かってたの?」


『当然です。私は遥か…太古より生きる者です。そこらのエルフなど幼な子にしか見えません。全くエルフという生き物はいつもいつもふざけてばかり…いつまでも子供なんだから』


「えっ? そうなん…ですか?」


『因みにアイゴンとは同期みたいなものです』


「はぁ…えっ? じゃあアイゴンは…えっ? わかんね。ちょっと待って! じゃもしかしてアイゴンと話せないってのは、ルッカが嘘ついたのか?」


『それは本当です。アイゴンは神のお気に入りですからね。制約によりアイゴンと会話出来るのは神のみです。本来なら何者も寄せ付けられません。良く分かりませんが、貴方も神のお気に入りですか? アイゴンが懐くなどありえないのに。でもそんな事は私にはどうでも良い事。さ、私に名前をつけて下さい』


「……へっ? ちょっと、えっ? えっ?』


『だから早く名前を下さい』


「えっ? 名前⁉︎ じゃあ…えっとご、ゴキ美…?』


『私は貴方程度今すぐ消す事が可能です。跡形もなく忽然と消えてしまったように』


「ごめんなさい。今すぐ考えます」


『神聖な感じが良いです』


神聖な⁉︎ 神聖な名前⁉︎ えっと神聖…神聖…


『早くして下さい』


「…マ、マリア様……?」


『マリア……良いでしょう。私はマリアです。以後そう呼びなさい』


まじか……


『宜しい。私と会話をし私に名を付けた事により、条件を満たしました。私もアイゴンと同様に貴方の眷属となりましょう』


「なんだって⁉︎」


『ええ。驚いたでしょう……神に代わりアイゴンはこの世界を浄化する役割を、私達世界の情報を集め神に報告する役割を持っていました。しかし星が生まれ生命が宿り発展すればどこにでも歪みは生まれます。私は数百年前にかけられた協力な呪いによりただの虫と成り下がり、アイゴンも無限に湧き上がる魔素により身動きが取れなくなりました』


凄え…めっちゃ喋る


『神は、アイゴンだけは私のものという執着がありましたが、私達には会話をし名付けられる事が出来た者には力を貸しても良いと言われています。貴方と妹のアイリスからは神の強い加護を感じましたからね。…どちらかといえばアイリスの方が良かったのですが会話が可能なのは貴方の方だったので仕方ありません』


「何か…喜べない選ばれ方だな」


『大いに喜びなさい。選ばれし者よ』


「……で、どんな力が?」


『そうですね。手始めにあの小娘ルッカが出来ない事でも…貴方の兄の居場所でも教えてあげましょうか?』

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