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12.夜の森2


スキル『暗視』を取得したとたん、周りがかなり鮮明に見える様になった。

さっきまでの暗さが嘘みたいだ。


難なく裏庭に進み、午後にボン爺に取り付けてもらったロープのある木に到着した。


スキル『隠密』の効果なのか木を登った時もあまり音が立たなかった。

ロープを持ちながら塀に飛び移った。

ここまで順調。


塀の上に立ち、森を見る。

夜の森はなんだか不気味だ。


昼間はワクワクしていた癖に怖くなってきた。

自室に帰ろうかとも少し思った。


だが、ここまできたら行くしかないだろ!


俺は木に括り付けたロープを壁の外側まで引っ張った。

ロープの長さは塀の真ん中くらいまでだったが、これだけあれば大丈夫だろう。


俺は意を決してロープを伝い塀を降り始めた。

ロープギリギリのところで地面を確認しながらジャンプ。



無事に着地!



と思った瞬間、足にぐにゃりとした感覚があった。



…… なんだか嫌な予感がする。



恐る恐る足元をみると、地面にはぶっとい蛇が大量にいた。


「うわぁぁあああああああああああ!!!!!!」


びびって尻もちをついた。

それでもなんとかすぐに立ち上がって後ろに飛んだ。


大人の男の腕くらいの蛇がグネグネウネウネしながらもぞもぞと動いている。



俺の帰路ロープ周辺に大量に、だ。



さっき思い切り踏んだから、いや俺が塀を伝っている時点で狙われていたのかもしれない。


沢山の蛇の頭がウネウネと蜷局とぐろを巻きながら俺を見ているのが分かった。

赤い目がチカチカと光っている。


ナイフはズボンの尻ポケット。

腰には棒を括り付けている。


俺はビビりながらも大量の蛇から目を離さずに、尻ポケットのナイフを取ろうとまさぐった。


ない。


……落としたんだ。



多分ナイフはあの蛇のグネグネの中のどこかだ。




やばい、やばい、やばい、やばい。




ス……スキル、スキルをとらなきゃ。



蛇が俺に向かってきている。

俺はすくんだ足を必死で叩きながら後ずさりする。


棒を右手に持って必死に振り回し威嚇する。



スキル、ログ、蛇を倒すスキル……だめだパニックで頭が回らない。



こんな大量の蛇……



神様しょうじょの『死ぬわよ』という声がリフレインする。



いやだ、死にたくない、死ぬ、怖い、



大量の蛇は狩りを楽しむかのように、静かに獲物おれを取り囲む様に集団で動いている。



だめだ……



蛇に、絞殺しめころされるんだ。


食われるんだ。



絶望のまま蛇の動きを凝視しながらジリジリと後ずさりをする事しかできない。



涙と鼻水がドロドロにでてくる。


視界がぼやけないように急いで目をこする。

くそっ……砂が入った。



俺は必死で左手に魔素を集め『火魔法Lv1』を蛇にむけて発動した。


りんごくらいの大きさの炎が蛇に向かって放たれた。

初めて見るまともな火だ。


……だが、小さい。小さすぎる。


涙がとまらない。


MPはもうないだろう。



炎に一瞬ひるんだ蛇の集団も、すぐにまた俺に向かってきている。



近い。



俺は棒を蛇に向かって振り回しながら、

発動することのない『火魔法Lv1』を何度も何度もだそうとした。



囲まれた。


終わりだ……


あと少し、あと1メートル……



足が止まってしまった。



とうとう恐怖が達し、ションベンが垂れた。

じょろじょろと生暖かい水がズボンを足を濡らしていく。




「おい! 遊んでいいのは明日って言っただろうが!!!」



突然、ものすごい怒声とともに、俺の近くにいた蛇がまとめてぶった切られた。


物凄い衝撃波の音が耳をつんざき、目の前の大量の蛇がどんどんぶつ切りになっていった。


言葉もだせずにガクガクと震え呆然と立っていると、


……目の前にボン爺が立っていた。



「バカ野郎っ!! わしのいう事が聞けなかったか!!!」


そう怒鳴ると、ガシッと物凄い強さで両肩を掴まれた。

ボン爺の初めて見せる怒り顔はとても怖かった。


涙が溢れ出し、またションベンが垂れた。


「なにか企んでやがるってのは分かってたんだ!

 だがな! わしが来なかったらお前、どうなってた!!!?」


ボン爺は俺の肩を強く掴んだまま、前後にゆすり、とにかく怒鳴った。


「ぁ……まほ、を、つ……って……」


「っは! 小便垂らしたガキが何いってやがる」


「あぅ、ぅあぁ……」


「バカがっお前はなぁ!

 蛇の餌になるところだったんだ!

 てめぇでてめぇを殺しに来たようなもんなんだ!」


「ぐぇっ……」


「もう二度と塀を超えようなんざ真似するな!! 分かったな!!」



「ぅあああああああああああああああああああ」



その後どうやって塀のなかに戻ったのかは分からないが、

土と汗と涙と鼻水と小便にドロドロにまみれた俺をボン爺は担ぎ上げて小屋に連れていかれた。


家畜小屋の脇で服の上から桶の水をぶっかけられ、その後服を脱がされてまた水をぶっかけられた。


渡されたタオルで体を拭くと、今度は小屋の中に連れていかれた。


椅子に座らせれてテーブルに置かれた手作りの様な武骨な木のコップには温かいスープが入っていた。


「飲め」


言われるがまま飲んだ。薄味の野菜のスープだった。


「……さっきは悪かった」


また涙が込み上げてきた。

ごまかす様に下を向いてスープを飲み続けた。


「貴族の坊ちゃんにあの言い方はなかったかな。

 ……だがな、外の世界ってのはそんなに甘くないんだ。

 冒険、魔法、剣、魔物、憧れるのはわかるぜ?

 わしだって何度も死にそうな目にあってそれでも長年冒険者をやってたんだ」


ボン爺が、冒険者だった?

……スープを持ったまま、顔をあげてボン爺の目を見る。


ボン爺はまだ硬い表情のままだったが、口調はいつもの感じで話し続けた。


「坊ちゃん、お前、さっき一度も謝らなかったな?」


「……!! あっごめんなさ」


「いや……いい……謝らなかったから、いい」


ボン爺は、しばらく腕を組んで頭をひねりながらこう言った。


「……分かった……ワシが教えてやろう……冒険者のイロハをな」


俺は話に付いていけず、ボン爺の顔をただ見ているだけだった。

あの、今日はここまでです。

読んでくれてありがとうございました。

明日また頑張ります。

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