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118.ルッカとおしゃべり


 現在深夜。俺達は既に船の上。そう、俺たちアンドレ捜索隊の一行は大海原へ乗り出していた。


 周囲にはだだっ広い海が広がるだけの星灯りしかないこの場は、深い暗闇に飲み込まれそうなほどの恐ろしさだ。

 ……というのは嘘だ。


 小さな漁船の上では、マールと長いお昼寝でぐっすりと眠ったメイの楽しそうにはしゃぐ声、アイリスとディアーナに夜釣りを教えるボン爺の和やかで楽しそうな声が響き渡り、うるさくも恐ろしい波の音など掻き消されてしまいそうだ。


 午後の買い出しでボン爺がやたら薬草を購入していたのを見て、そういやルッカがボン爺は船酔いするとかなんとか言ってたなと思った俺は、ボン爺にこう言ってやったんだ「ボン爺、魔法で浮いてれば船の上でも大丈夫なんじゃない?」とね。

 その時の、ボン爺の「その手があったか‼」という驚愕した表情は後にも先にも滅多に拝めないものだろう。


 そういう訳で、器用に風魔法を応用してボン爺はリニアモーターカー並に器用に数センチだけ浮いた状態で元気いっぱいだ。


 ちなみに、俺も初めての船に激しく酔った。

 俺は、ボン爺と違って重力魔法なる高度な魔法スキルを持っている。

 よって、ボン爺よりも高度に浮いていられるかと思ったら、魔力の制御がまだうまく行かずMPがガンガン減っていってしまうという事態に陥ってしまった。

 この大海原では、これから何が起きるか分からない。

 ぶっちゃけ何も起きないかもしれないけど、保険のために俺は魔法を使うのをやめた。

 その結果、俺は薬草のお世話になっている。


「き、気持ち悪い……」


「ほれ、レオン。お前もこの機会に釣りぐらい覚えておけ」


「無理……」


「レオン兄様、大丈夫ですか?」


 心配したアイリスが優しく淡い光で俺を包み込むと、身体がとても楽になった。


「助かるよ。アイリスは、大丈夫なの?」


「あ、はい……あの、私もボンさんに教えて頂いた魔法を使って身体を少し浮かせていますから」


「へっ!? アイリス、出来たのそれ……」


「あっ……あの、まぐれです。兄様はもとより身体が弱くていらっしゃるから……」


 兄に恥をかかせまいと慌てて無理やりフォローを入れてくれる心優しき妹アイリス。


「そうだったな、お前、そういえば『病弱』だったなあ?」


「ほんとね。とっても元気そうなのにね、不思議だわ」


 ボン爺とディアーナはしたり顔でやたら楽しそうにいじってきやがる。

 く、くそ……俺だって、MPを使えば浮く事だって簡単なんだ。

 俺はみんなの危機に備えてあえてやらないだけなんだぜ?


『ボン爺さんもディアーナも優しいわね。もし、アイリスに実はレオン兄様は超健康体でしたってばれたら、どうなるのかしらね……くふふっ』


 うるせー。アイリスは聖女並みの優しさで『良かったです』って言ってくれるだけだって。

 あ、そうだ。


「なあ、アイリス。そういえば、俺の肩のこの辺なんだけど……あっおい、ルッカどっか行くなよ! 戻ってこいって…そうそう。アイリス、この辺に光の魔法をかけてみてくれない?」


『いいのに、どうせ何もおきないわよ』


「ものは試しじゃん。みんなにもルッカが見られるかもしれないだろ?」


「あ、あの。わかりました。この……辺りですか? 私、やってみます」


 アイリスは、自身の身体を器用に浮かせたままの状態で光魔法を放った。船全体が淡く光る。

 それと同時に、ルッカの姿がぼんやりと光った。


「おお、これがお前さんが言っているルッカか……」


『えっ!?』


「うわああああああ……」


「……すごく綺麗」


「あなたがルッカなの?……本当にいたのね。レオの作り話かと思っていたわ」


『えっうそ、もしかして見えるの? 私のこと……』


「わあっ! この方が……私たちのご先祖様なんですねっ」


『ちょっとーっ! 誰がご先祖様よ! パパもまだ生きてるんでしょ? 私まだ200歳くらいなんだけど?』


「ぎゃっ! 怒られた! ごめんなさいっ」


『マール、あなたの事は今後レオと同じ括りで見させてもらうからねっ』


「……おい、俺と同じ括りってなんだよ」


「そうですよっ! よくわかりませんが、それだけはやめて下さいっ」


「マール、お前……」


「ぎゃっ! ニンゲンの男こわい。コロされるっ‼」


「レオ、マールを苛めるのは止めなさい。海に放り投げるわよ?」


『そうよそうよー』


「きゃははっ! そうよそうよー‼」


「くっそ、お前ら……。メイ、メイはルッカの真似はしてはいけないよ」


「えーーーーー? なんでメイはだめなの?」


「ルッカは、あれは……悪い見本だから」


『へー? それならレオのあんなことやこんなことをメイちゃんにお話してあげようかしら?』


「それは、私もぜひ聞いてみたいわ」


「やめろ、やめてくれ! くそっアイリスっ早く魔法を解いてっ」


「ははは。なるほどなあ。確かにルッカは楽しそうな子じゃなあ。今までは見えんかったが、こうして声も聞けるのは嬉しいわい」


『ボン爺さん、こんばんは。お話するのははじめましてよね? 私も嬉しいわ』


「私も。これからよろしくね」


『ディアーナ姐さん、いつもレオがご迷惑をおかけしてます。こちらこそよろしくっ』


 楽しかった談笑は束の間。アイリスも光魔法を持続させるのはかなり負担らしく、魔法が解けるとルッカの姿はまた俺にしか見えないものとなってしまった。


「ごめんなさい。私の力が及ばず……もう少し回復したらまた」


「アイリス、無理すんな。なんか妙に疲れてるみたいじゃん。また今度、余裕がある時にな」


「……ごめんなさい。アンドレ兄様ほどの力を私は持っていないようなのです」


「本当に気にしないで。少しだけだったけどとても楽しかったわ。また元気な時にみんなでお話しましょう」


『あっ私も。意外だったけど、楽しかったわ。ありがとって言っといて』

 おうよ。


 ……そういえばさ、なんかもう港町も見えないぐらい沖に出て来てるんだけどアンドレ達っていまどの辺にいんの?


『……えっ? それ、聞いちゃう?』


 当然だろ? その為にわざわざ船盗んでこんな夜中に出て来たんじゃん。


『あーうん。そうよね、そうよねー。……えへっごめん。見失っちゃった』 

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