11.夜の森1
夜になり、みんなが寝静まった頃を見計らって
俺は屋敷の外に出る事にした。
夜中であっても使用人は起きているかもしれない。
執事のロイ爺には絶対に見つかりそうな気がする。
念のため俺は、本から『スキル』:『隠密』を選択し取得した。
『隠密』の必要ポイントは5000Pだ。
所持ポイントは、37262P。
残ったポイントは32262P。
この世界に来て初めて本から取得した『スキル』。
そんなに安いポイントじゃないが、きっと役に立ってくれるはずだと期待して部屋を出た。
この屋敷は廊下も階段もふかふかな絨毯が敷いてあるので足音は立たないのだが 背後からいつロイ爺に声をかけられるかヒヤヒヤしながら静かに歩いた。
厨房にはいつも誰かしらいるからすごく緊張した。
まぁ見つかったら喉が渇いただの腹が減っただの言ってごまかすつもりだったが。
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幸いにして誰にも会わずに厨房の勝手口を出た。
拍子抜けする程簡単だった。
庭に出ると真っ暗だった。
月明かりしかない。
夜中に外に出たのは初めてだ。
しょっ中庭に出ているから、だいたいは把握出来るものの
ここで転んでケガをするわけにはいかない。
目が慣れるまで勝手口の入り口に座り込んでじっとしていた。
前世の感覚で気軽に外に出てしまったが、ここまで暗いとは思わなかった。
裏庭まで行くのにも時間がかかりそうだ。
しまったな。
俺は「ログ」を唱えステータス画面を開いた。
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レオン・テルジア(5)
職業:テルジア公爵の長男
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『ステータス』
Lv:1
Hp:8/8
Mp:2/2
『スキル』
・火魔法Lv1
・水魔法Lv1
・風魔法Lv1
・土魔法Lv1
・隠密
・言語能力(自国語)
・言語能力(ベネット語)
・算術Lv1
・礼儀Lv1
『ユニークスキル』
・繰り越し
『エクストラスキル』
・ポイント倍増(10)
『所持ポイント』
32262P
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今日は魔法が使えるか試すだけのつもりだったからステータスの事までは考えていなかった。
だが、この暗闇の中にいると、塀の外に出た時に無事でいられるか自信が無い。
昔、神様に言われた『すぐ死ぬわよ』というフレーズが脳内を巡る。
ここで、少し『スキル』を獲得しておいた方が良さそうな気がしてきた。
本をパラパラめくる。
あっ……これだ。
・『スキル』:『暗視』2000P
今日外に抜け出すまで気づかなかった暗闇への対応措置。・・取ろう。
「これだけで大丈夫かな……」
今日屋敷を出る為に持ってきた道具は、前に親からプレゼントされた綺麗な装飾のついたナイフだけだ。
裏庭に行く前にボン爺からもらった棒も回収してお守り代わりに持っていくつもりだが……
今日は森の奥まで行くつもりはない。
少しだけ離れたところで魔法を一発試してみるだけの予定だ。
だから魔物には会わないと思うのだが熊や猪みたいな動物だって危険だ。
残り所持ポイント:30262P
次に使えそうな『スキル』を取ったら30000を切る。
「……ま、とりあえずこれだけでいっか」
元日本人の悪い癖かもしれない。
この世界でも甘やかされてのんびり育ったせいか危機管理が薄いのかもしれない。
かすかに、神様の『すぐ死ぬわよ』という声が聞こえた気がした。