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104.越境


 「あっむしさんだぁ!」


 「こら、暴れるな。落っことされたいのか!」


 「むー! やだあっ! むしさん取りたい! むしさん!」


 「メイ。我儘を言うなら置いてくぞ! 今から王都に戻ってロイと一緒に領地に帰るか?」


 「ぃやあっ! メイも行くもん」


 「なら大人しくしとれ! 遊びじゃないんだ」


 ……くそっ。羨ましい。


 先ほどからボン爺と二人乗りをしているメイを後ろから恨めしそうに眺めているが、だんだん辛くなってきた。

 いちゃいちゃいちゃいちゃと……ボン爺め。

 俺もメイを乗せたい。くっついて……密着しながら旅をしたい‼︎


 「大丈夫? 乗り慣れてないと、体が痛くなる事があるから言ってね。レオに回復させるから」


 「あっ……だ、大丈夫です。それに私、痛くなったら自分でも癒せますから」


 「そう、優秀なのね。貴女のお母様からは、貴女が凄い力を持っているって聞いていたけど」


 「いえ、そんな……あのっ……私、あの……あ、アイリスでいいです」


 「ふふっ。そう? じゃあアイリス。ごめんなさいね、他人行儀で。私の事はディアって呼んでね、メイもそう呼んでるの」


 「はい……ディア、ありがとうございます」


 「敬語もいらないわ。私、とつぜん妹が出来たみたいで嬉しいの。よろしくね」


 「あっはい」


 ……なんだよ。ディアーナの野郎、くっそ優しいじゃねぇか。俺に対する扱いと違い過ぎねぇ!?

 アイリスもアイリスだぜ。俺の妹なのに、しかも双子なのに……なんで俺より先にディアーナと仲良くなってんだよ。


 『男の嫉妬って……ちょっと……』


 いいや、違うぞルッカよ。これは嫉妬ではない……羨ましいだけだ!


 『うん。あの……それって、一緒よね? まぁまぁっ、この可愛いルッカちゃんが話し相手になってあげてるんだから、満足しなさいよ』


 う……そうなのか?

 まさか……まさか俺は嫉妬をしているのか?

 嫌だ! 俺は兄貴アンドレのような爽やかイケメンになるって決めてるんだ!


 『わかった。それなら頑張って精進しましょう』


 ……‼︎ あっそうだ。良い事思い付いた!

 もしかすると『乗馬』スキルとかあるんじゃね⁉︎

 なあ、それ取ればメイを乗せられるよな⁉︎


 『えっ⁉︎ う、うん……出来るんじゃない? でもそこまでして二人乗りしたいの? ポイントの無駄じゃない?』


 そりゃしたいよ‼︎ 二人乗りしたいっ‼︎ よっしゃ。そうと決まればカタログでーーー


 「ちょっと! レオっ遅れてるわよ!」


 「全く、どこに向かっとる。 ほれ、のたくっとらんでお前が先導せい」


 「にーに! おっそぉぉぉおい! はやくはやくー!こっちだよー‼︎」


 きぃっ! アイリスの前で恥かいた!

 ボン爺の隙間から顔をひょこっと出して大きく手を振るメイはとても愛らしいが。


 『レオン、真面目にやらんかっ』


 ボン爺の口真似すんなっ!


 「分かったよ! ごめん。先導する!」


 足で馬の横腹を軽く蹴り、道案内の虫の近くへ走らせる。

 おっ上手く行った。慣れない馬だから暴走されるかと思ったぜ。振り落とされるとかカンベンだからな。 恥かかなくて済んだぜ。ほっと一息。

 ……ていうか俺……慣れない馬を乗りこなせているんじゃないか? 

 もしかして乗馬スキル、ナチュラルに上がってる?


 『ふふーん。なんと! 実は! なんとっ! それはこのルッカちゃんがお馬さんにお願いしているからなのです。えへへ……ねぇねぇっ優しいでしょ? 偉いでしょ?』


 ……なーんだ。俺の力じゃなかったんかい。

 でも、おかげで第二の恥はかかなくて済んだよ。サンキューな。


 『うふふっ。もっと褒めて褒めてっ!』


 え……あー凄い凄い。ルッカは凄いなー。


 『そういうのじゃなくて! もっと気持ちを込めたやつがいいの。やり直しね! さんはいっ』


 ……凄い! 凄いよルッカ! マジかー……マジで感動した! いやーすっごいな〜! 助かるなー! ほんと助かっちゃったなー。もうさ、ルッカって天才なんだな〜。


 『馬鹿にしてるわね?』


 もうなんっなんだよ! せっかく頑張って褒めてんのにさあ。言いがかりつけて絡むなよ!


 『はいはーい。前方! ぜんぽー注意! 虫さんが頑張ってるんだから、しっかり前を見て下さいねー。はいどー! はいどー! ルッカ様のおっ通りよ〜』


 くうう、またしてもルッカのマイペースに嵌められた。


 王都を出てから早くも数時間。


 ボン爺の話じゃ西の国境まではまだ数時間はかかるらしいからな。

 ディアーナは「港が怪しい」って言ってたけど、港がある街までは国境から更に馬を走らせ続けて1日はかかるらしいんだ。


 今回は初遠征のメイとアイリスもいるから、夜通し馬を走らせるのも、野宿ってのも無いだろうしなー。


 馬鹿王子あいつは今頃どこまで行ってるんだか。

 兄貴アンドレ、大丈夫かな……


 『大丈夫よ。お兄ちゃん強いもの。でもちゃんとした食事をとって欲しいわー』


 えっ⁉︎ ルッカ、なんか分かるの?


 『えっ? うん。集中すると結構遠くまで視えちゃったりするわよ? 馬鹿王子さんてば、自分の乗ってる魔物の肉食べながら走らせてるの。さすがにあれは気持ち悪いわ……お兄ちゃんドン引きしてるし。それにね、お兄ちゃんにも熱心に肉を渡そうとしてるけど、素敵な笑顔で断わられてる。凄いわ……あの子もあなどれないわね』


 まじか? 今どの辺か分かる⁉︎


 『うーんとね、結構遠く』


 具体的には?


 『遠くの……森の中?』


 何故に疑問系なんじゃい。


 『だって良く分からないんだもん。私、この辺の土地勘ないの』


 「ボン爺! 国境を超えた先に森ってある? ヨハンがいるらしいんだ」


 「ああ、あの辺か。港の数時間ほど手前にあるな」


 「そこなら私も知っているかも。船に乗られてたらまずいわね」


 「どうする? 俺だけでも先に行っていい?」


「……いや、まだこんな所でパーティーが分かれるのは得策じゃない。罠かもしれんしな……慣れてない嬢ちゃんには悪いが、スピードをあげる。一刻も早く国境を越えるぞ」

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