第2章~曇りのち雨~
第2章が完成しました。
最後までお楽しみください。
私は、またもや緊張していた。
昨日のことが、ずっと引っかかっている。
ナナはきっと許してくれるはずだ。
心のどこかでそう期待していた私は、思い切って教室のドアを開けた。
今までに感じたことのない冷たい空気。
震え上がりそうになるくらい冷たい、ナナたちの視線。
静まり返った教室。
そこに存在する全てのものに、責められているような感覚に陥った。
私たちの学校は、全国をも争うようなスポーツの強豪校だ。
体育祭には、スポーツ界の有名な方々も来られていたはずだ。
そんな中、あの走りを見せた私には、当然重い責任がのしかかっていた。
自分だけでなく、クラスのみんなにも不利になるようなことをしてしまい、
本当に申し訳なく思った。
「みんな、昨日は本当にごめん。
私のせいで、このクラスに傷をつけるようなことをしてしまって…。
本当にごめんなさい。」
私は深く頭を下げた。みんなの顔を、見ることができなかった。
静まり返る中、ナナが口を開いた。
「別にいいんじゃね。うちらまだ高1じゃん。来年もチャンスはあるんだし。」
意外な人から、意外な言葉が発せられた。
「でもさー、俺、S大学の推薦狙ってたんだけど」
「まぁ、これが直接影響するわけじゃないじゃん。あんたの失敗じゃないんだし。
沙奈も謝ってるんだから、許してあげようよ。」
緊張は嬉しさに変わった。
ナナって本当は優しい人なのかも。
最後、何を言ったのかは聞き取れなかったが、許してくれただけでも、私はもう満足だった。
もう、何も心配する必要はないんだ。
そう思うだけで、随分と心は軽くなった。
休み時間になると、私は真っ先にナナのところへ行った。
「さっきは助けてくれてありがとう。すごくうれしかった。」
「ちょっとこっち来て。」
ナナの顔が変わった。どうしたのかな…
連れていかれたのは、体育館裏だった。
嫌な予感しかしない…
「沙奈、あんた何してんの。スポーツできるからこの学校に入ったんじゃないの?
陸上部だからって威張ってたくせに。転ぶとかありえないんだけど。」
さっきのことが、まるで嘘のようだった。
あの笑顔も、すでにどこかへ消え去っていた。
「ごめん、ナナ。許して…私なんでもするから。」
ナナのこめかみがピクリと動いた。
「当たり前でしょ?私、先生にも嫌味言われたんだから」
『お前、確かうちの高校推薦だったよな。だからお前にリレーの選抜を任せたんだ。
がっかりだな。』
「私悔しかった。なんであんたなんかのせいで私が怒られなきゃいけないの?
あんたさえ転ばなかったら何も言われなくてすんだのに。
…何?その目は。あんたが走ればよかったじゃない、って、そう言いたいの?」
「違う、そんなこと…。聞いて、ナナ…」
「やめて。あんたの話なんか聞きたくない。どうせ、たかが体育祭なんて思ってたんでしょ。
うちの学校はね、スポーツの強豪校なの。それくらいあんたにだって分かるはずよ。」
私は、言い返すことができなかった。
ナナの言う通りだ。
私のせいで、ナナは先生に怒られてしまった。
全部、私のせいなんだ。
「ナナ、本当にごめんね。私、なんでもするから。ナナの気が済むならなんだってする。」
「本当に何でもする?」
私は無言で頷いた。
「いい?これは、あんたが自分から何でもするって言ったの。忘れないでよ?」
「分かった。何をすればいい?」
「そうね…」
一つため息をつくと、ナナはにやりと笑った。
「じゃあこうしてもらうわ。
沙奈、あんたこの学校から出ていきなさい。」
…え?ナナ、今なんて言ったの…?
こんにちは。作者の祇園亜子です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
第2章ということで、前回の続きを書かせていただきました。
次回が気になる方は、楽しみに待っていてください!
いつになるかは分かりませんが、是非ご期待を!