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あたらしい季節へ

作者: TOWA
掲載日:2016/04/07

「...輝!」


そう呼ぶ真優の笑顔は...いつまでも続くものだと思っていた...。



ーーーーー


輝と付き合いはじめて、3年。




「...。」


「別れよう。」


突然発した、別れの言葉。


輝の驚いた顔を...私は今でも覚えている。



「なんで?俺ら...上手くいってたやん。」



じっと輝の目を見たまま、黙りこむ。



「俺のこと...嫌いになった?」


真優は、迷わず答える。


「そう。最後まで自分勝手で...ごめんね。」



輝の顔も見ずに、喫茶店を去ったあの日。


あの行動を...後悔する日が必ず来ると真優は分かっていた。



ーーーーー


「まーゆ!お腹...だいぶ大きくなったね!彼氏とは?喧嘩してない?」


「うん...!もう、ラブラブ!」


右手でピースサインを決める真優。



真優のお腹には...小さな命が宿っていた。



「ねぇ、そろそろ真優の彼氏紹介してよ!」



「...ごめんね。忙しいみたいで。」


真優は、誰にも『彼氏』を紹介していない。



お腹は誰もが妊婦さんと分かるほど、大きくなっていた。




「...真優。まさか、そのお腹の子...輝の子じゃないよね?」



「...なわけないじゃん!あたらしい彼氏との子!」


真優はお腹をさすりながら、ニカッと笑う...。


希は真優のお腹の子を、輝の子だと、ほぼ確信していた。



でも、今は言わないだけ。


真優の気持ちが整った頃に、もう一度聞こうと思っていた。



「...ねぇ、のんちゃん!」



Rrrrrrrrr...。


「あ、ごめん!バイト先!話の続きはまた、夜に電話ではなそ?」



真優は、微笑んで、希を送り出した。



コーヒーを飲み終え、そろそろ出ようかな。


と、お会計をすませる。




「あれ?真優ちゃん?」



...聞き覚えのある声に振り向くと、そこにはLeadのメンバーの



伸也がいた。



真優はお腹を出来るだけ隠すように、コートを前の方に持ってきて、軽く会釈し帰ろうとした。



「あ、待って!せっかくやし、話そうや...って真優ちゃん...そのお腹。」



腕を掴まれた拍子に、コートが落ちていた。



「ひ、久しぶり。あたらしい彼氏との子なの...。」



伸也は、言葉を詰まらせ、なにか言いたげだったが



「そっか。おめでとう。」



「...輝たちに、よろしくね...。」



伸也は最後も呼び止めようとしたが、伸ばした手を引っ込め、真優の背中を見つめていた。




ーーーーー




「あと、1ヶ月だね~。名前は?決めてる??」



希が真優のお腹をさすりながら、問いかける。



「うん!決めてる。...でも、まだ教えな~い!」



「もぉ!なにそれ!」



笑い声がファミレスに響く。



すると、真優の笑い声がピタッと止んだ。



希が不思議に思い、顔をあげる。


そこには、今までに見たことないような、真剣な表情の真優。



「真優...?」



「のんちゃん...これ、私になにかあったとき、渡して。」



真優が差し出してきたのは、花柄のシンプルな便箋に『輝へ』の文字が書かれた手紙。



「真優...やっぱり、輝の...」



「違うって!最後に最低な別れ方したから、謝りたかったの。でも、自分から渡す勇気なくてね。」



希は弱々しく笑う真優に苛立つ。



「なにそれ...。謝るにしても、本人の口からじゃないと意味ないと思うよ!!」


希は、謝罪の手紙ではないことをなんとなく察していた。



でも、真優はうつむいたまま、喋ろうとしない。



「ねぇ、輝の子なんでしょ?私、分かってたよ。妊娠したら輝が困ると思ったから?だから、隠してたの?」



静かにうなずく真優。



「あんた、いつからそんな弱くなったわけ?輝もファンの中から勝ち取った彼氏でしょ?」



「ほんと、そうだよね。...最初はね、妊娠したら結婚してくれるかもって思ってた。だから、妊娠したいなとも思ってたの。でも、いざ妊娠してみると、色んな不安が押し寄せてきて。本当に、漫画のヒロインみたいな気持ちになるんだなって思った。」



希は、いきなり、立ち上がると手紙を持って、ファミレスを出た。


真優も急いで会計を済ませると、希を追った。



「待って!のんちゃん!どこいくの!輝たちには言わないで!...っ痛!」


どさっ。


その音に、希は恐る恐る振り替える。



そこには、お腹を押さえたまま、意識のない真優が横たわっていた。



「真優!真優!...まゆ...ま...ゆ...」


希の声がだんだんと遠退いていった。



ーーーーー



薄暗い通路の奥。


『手術中』の文字が赤く照らされている。


分娩室ではなく、手術室に通された真優。



外では希が祈るようにランプが消えるのを待っていた。



しばらく希は考え込むと、ある人物に電話をかけ始める。



Rrrrrrrrr



《はい、もしもし。》



《輝!?私、希だけど!》



電話の奥から返答はない。

 

希は続けた。



《すぐに、総合病院きて!真優が!!》



《俺はもう、真優とは...》 



《いいから!!》


輝の返事を聞かずに一方的に電話をきった。



ーーーーー



「...だれから?」



「希」



「え、希ちゃん?...真優ちゃんの事やないと?」



真優のことと聞いて、伸也はふと思い出す。


喫茶店で会ったことを...。



輝は伸也の様子を見逃さなかった。



「伸也...お前なんかしっとんやろ。」



伸也はうつむいたまま、黙っている。




「お前...真優に会ったんか!」



輝は乱暴に伸也の胸ぐらを掴む。



「...喫茶店で...偶然会った。お腹、大きくなっとった。真優ちゃんはあたらしい彼氏との子いいよったけど、多分お前との...」



輝は、伸也の言葉も最後まで聞かず、一目散に走り出した。




ーーーーー



息を切らしながら、受付にどなる。



「真優は!真優は!」



受付は

落ち着いて下さい

と必死に輝を落ち着かせる。



「...っ輝!こっち!」



受付から響く声に駆けつけた希が先生のところに誘導する。



テーブルがひとつある、静かな部屋に通される。



輝が震える手で椅子を引き、座る。



キー...



ある一人の看護婦さんが赤ちゃんを二人抱え、入ってくる。



その赤ちゃんをそっと、輝に手渡した。



「元気な女の子と男の子ですよ。」



輝は、はにかむ赤ちゃんを手にとる。



それと同時に、先生が話し出す。



「真優さんは...赤ちゃんを妊娠する前から、癌にかかってました。運悪く、転移した場所は切除しにくい場所にあり、手術も大変困難でした。そんな、最中、妊娠をされ、私たちは赤ちゃんを下ろすことを進めました。でも、真優さんは産むことを決意しました。私たちも最善をつくし、治療していたのですが。出産予定日1ヶ月前に容態を悪くするのは私たちも予想外でした。...最後にお会いになられますか?」



輝は、半分現実を飲み込めず、冷たい風が吹く、部屋に通される。



その部屋の真ん中に、白い布を被せられた、真優の姿があった。



あとから来た、伸也と敬多に赤ちゃんを預け、崩れ落ちるように真優の元へ歩いた。



ゆっくり、布をとると

 


幸せそうに笑う...真優の顔。



輝は真優に抱きつき、話しかける。

 


その姿を見て、希は真優のある言葉を思い出す。



"私になにかあったとき、渡して"



希はあの手紙を輝の前に差し出した。




輝は涙を拭い、手紙を読み始める。





輝は手紙を読み終え、二人の赤ちゃんに話しかけた。




「ひかる...ひかり...。生まれてきてくれてありがとう。」



「それ、赤ちゃんの名前?...ひかるとひかり...。真優らしくて、この子達にふさわしい、いい名前だね。」



照れ臭そうに八重歯をみせて笑う輝。


それは、輝の涙が微笑みに変わる瞬間だった。



END






【輝へ


元気?



輝に伝えたいことが3つあります。



まず、1つめ。


ごめんなさいってこと。


例を出すと、数えきれないほど、輝に謝らなければいけないことがあります。


本当にごめんなさい。



そして、2つめ。


それは、赤ちゃんのこと。


今...もう、生まれたかな?


私は2人のお母さんです。


お父さんは輝。


輝を困らせたくなくて隠してました。


それも、ごめんなさいだね。


赤ちゃんにつけてほしい名前があります。


男の子はひかる


女の子はひかり


輝のように、光り輝く子になってほしいから。



最後、3つめ。


輝のこと。


私は、輝がすべてのことに頷ける日まで、輝の手を離したりはしない。


でも、時が来たら、今度はひかるたちの手を、離さないであげてね。



最後まで自分勝手でごめんなさい。


輝、ずっと愛してる。


真優】



゛゛


読んだくださり、ありがとうございます。


最初、Leadとは全く関係なく、連載するつもりでしたが、


読む人が1人でも増えるといいなと思い、Leadを出演者にしました!


ただLeadを出演者にするのもなんだと思ったので、「あたらしい季節へ」をイメージして、最初考えていた小説を少し変えてみました!


といっても、関係するのは最後と手紙だけっていう...。


誰かの心に残るといいなと思います!!

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― 新着の感想 ―
[良い点]  病気を持っていると、距離を取ってしまいます。 [一言]  そういう人に限って需要があるのは皮肉です。
2016/04/08 10:10 退会済み
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