勇敢なる者、Alois
Alois Ignaz Reinhard
《アーロイス•イグナーツ•レインハルト》
勇敢なる神の使徒として、熱く輝く炎の魔法を使い、アーロイスにしか扱うことのできない聖なる輝きを放つ美しい剣を振るって邪悪な悪魔どもから人々を救った、正しく英雄。
太陽の光を集めたかのような、明るく輝く金色の髪と青空のように透き通ったスカイブルーの瞳を持った、誰もが思わず振り向いてしまうような、とても整った顔立ちをしていたという。
気性は穏やかで、誰とでも分け隔てなく、明るく振る舞い、どんなに絶望している人にも希望の光を灯してしまう不思議な人だった。
そんな不思議と人を惹きつけてしまう彼は、悪魔どもとの闘いの中、強力な仲間と出逢い、善戦するのだが、邪神の誕生により状況は一変する。
自分たちでは邪神に打ち勝つことはできないと判断した彼等は、邪神とともに自分達自身さえも封印に取り込んでしまうことで、想像を超越するほどの強力な封印に成功し、邪神とともに千年の眠りについた。
千年の眠りの後、もし目覚められたなら、また再び相見えようと仲間達と約束して。
邪神は、アーロイス達の封印により、全ての力が消滅した。また、アーロイス達に加護を与えていた神々によって、悪魔たちが起こした咎を一身に呪いとして受けさせられ、もがき苦しんだ末に邪神の存在そのものが消滅してしまった。
世界から脅威はさり、アーロイス達の闘いは神話として語り継がれた。
人々は、千年後、彼等が目覚めると信じてアーロイス達が眠っているとされる聖地を巡っては神に祈りを捧げた。
邪神が消滅したとされる地は、最果ての地と呼ばれ、水は枯れ、光もささず、闇に閉ざされていた。もちろん、誰も近付こうとはしなかった。
そして、邪悪なる邪神討伐の大いなる闘いからもうすぐ千年が経とうとする頃には、神話として語り継がれていた話もいつしか忘れ去られ、人々は悪魔とでさえも契約を交わし、己が欲望を果たさんとしていた。
人が人を売り買いし、人以外のエルフ、獣人、魔族といった存在までもを開発した技術でもって拘束し、蹂躙し、売り買いした。
邪神の眷属ともいえる悪魔どもだけは、拘束し、奴隷のように扱えなかったが、対等に契約を交わすことで、汚い仕事を肩代わりさせた。悪魔どもとの契約は、大抵多くの命が失われた。身分の低いものを生贄として悪魔に提示する事で対等な関係を無理矢理築いていたからだった。
世界の変化など知る術もなく、唯、邪神を消滅へと追い込むため、千年ものあいだ封印されていた彼等の中で、最も始めに封印から目覚めたのは、アーロイスだった。
自らの命をかけ、自身を封印してまで邪神を消滅に追いやったアーロイスとその仲間は、その時、もはや人ではなくなっていた。
半神となった彼等が、千年の眠りから目覚めたのは、当たり前だったのかもしれない。
とにかく、一番最初に目覚めたのはアーロイスであった。
そして、彼が世界の実情を知るのに長くはかからなかった。