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死んだら神になりました。  作者: イントレット
第1章 神ライフ始動します
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4話 神狼ライフ 後編

少しだけ残虐なシーンあるかも

 冒険者が来て地球感覚の時間で言えば半年経った。

 その間前回の地這い竜のような特別強いモンスターの襲撃はなかった。

 別の襲撃はあったが。

 

 というか今現在も襲撃されてる。


「話に聞いた通りのでけえウルフだ! しかもあの白銀の毛! あれは金持ちに高く売れるぜ!!」


「いくらでけえっつっても所詮はウルフ! 他の連中には敵わんだろうが俺らSランクの敵じゃねえ!!」


 そう。別の襲撃とはズバリこいつら冒険者共である。

 まったく鬱陶しいったらありゃしない。

 わざわざ手を出さなければこちらからどうこうしないってのに。

 

 今目の前にいる奴らは全員男の六人パーティで大剣、大盾、弓と、最初に来た冒険者の様に一人ずつ、杖を持って魔法使いっぽいのが二人。最期の一人は軽装で短剣だけ持った斥候職だろう。

 その中で威勢よくツバをまき散らしてるのは二人だけだが、後の四人も騒ぎこそしないがその目は宝を見るような欲にまみれた目をしており、少しも自分たちが負けるなどと思ってないようだ。

 Sランクとか言ってるがSランクって冒険者ギルドでの最高ランクじゃないのか?

 いやSSランクとかSSSランクとかもあったっけ。

 まあ、どっちにしろSランクってのはそれなりに強いやつららしいのだが……。

 こいつらでSランクか。

 互いの実力差も分からないのになぜSランクになれたんだ?

 あ、ハッタリか。誰に対してだよ。


「今すぐ帰るなら見逃してやる。死ぬか逃げるかさっさと選べ」


 もはや決まり文句になっている台詞で警告する。

 今のところこの警告で逃げるのはいない。

 たまに実力を感じて怯むやつもいるがそれでも欲のほうが勝つのか挑んでくる。


「マジで人語を喋りやがった! だれが逃げるか! 俺達はSランクだぞ? お前は狩られる側なん―――」

 

 ふむ。

 そういえばこの世界にトマトってあるのだろうか。

 なんか久しぶりに食べたくなったなあ。

 目の前で大剣を持っていた男が群れの仲間の一匹にあっさりと潰されるのを見てそんなことを考える俺って異常だろうか?

 他の連中を見れば俺の仲間が急に出てきて男が死んだことに驚いて後方に下がってはいるが恐怖はしてないらしい。

 むしろ取り前が増えるとでも言いたげだ。

 油断して不意打ちをくらっただけだとでも思ってるのか?

 まだ自分達に勝ち目があるとでも?

 

「身の程を知らぬ虫けら共めが。貴様ら如きにレイ様に勝てるわけがなかろう」

 

 そういったのは俺ではなく、群れの中で最も多くMVPを取っていた狼、サクラである。

 最近になって人語を解すようになった。

 ほとんどが黒毛だが額だけ白い毛が生えていてそれが桜の花びらに見えるからサクラと名づけた。

 

 ついでに言えば今生のフェンリルとしての俺の伴侶である。

 そう、サクラは雌である。

 お前ケモナーかって思われるかもしれないが勘違いしないで欲しい。

 俺も神狼で狼なのだ。

 神様が狼の形に変化してるわけでなく紛れも無く神狼という種族として生きているので神狼補正というものが俺に掛かっているのだ。

 つまり、俺から見てのサクラは超絶美女なのである。

 まあ、意識には元人間の神の意識があるから思うところが無いってわけでもないのだが。

 

 じゃあお前、それはそれとしてあんなきっつい性格のがいいのか、とも思われるかもしれない。

 俺もきっつい性格な子は嫌です。

 ただ、サクラがああいう態度を取ってるのはあいつらが俺を軽く見ている態度が気に食わないだけで、普段俺に対してはかわいく甘えてくるし要所要所で俺を持ち上げてくれたりする。

 持ち上げてくれるのは獣の本能のようなものなのだろう。

 要するに強いものが正義な狼社会なのだ。

 つまり、サクラは強い俺にべた惚れである。

 ついでに言えば俺もサクラにべた惚れである。

 神をも魅了するサクラ、恐ろしい子。

 

 そんな美しいサクラまでもがしゃべるとは思わなかったのか虫けら五匹は目を見開いて驚いていた。

 そして、次の瞬間には欲にまみれた視線でサクラをみてニヤニヤと笑みを浮かべた。


 



 ……イラッときた。


 サクラの前に立って無詠唱で魔法を発動し、斥候っぽいやつを除いた4人に対して雷を落とした。

 イラッと来てたから雷はケタ違いの威力でそれを受けた奴らは肉片も残さず消し炭になった。


 残った一人はようやく自分たちが何に挑んだのかを理解して恐怖に顔を歪ませている。

 何やら命乞いをしているが気にすることなくまずは風魔法で両腕を肩から斬り落とした。

 喚いてうるさいので火魔法で焼いて止血してやった。

 そういえばこいつはさっき気持ち悪い目でサクラを見たんだったな。

 氷魔法で右目を徐々に凍らせてやった。

 

 酷い激痛を味わっているだろう男が叫んでうるさいので太ももに土魔法で岩の槍を刺しながら「黙れ」と脅せば痛みに耐えながらも男は黙ってくれた。


「喜べ、貴様は生かして帰してやる。うれしいだろう? なあ? 両腕と片目を失うだけで生きて帰れるんだからなあ?」


「ひ、も、もうやめっ」


 なんか喋ったので太ももに刺さっている槍を動かしてやる。

 苦痛に顔を歪めながらも察したのか必死で声を上げないようにしている。


「お前はさっさと帰って他の連中に俺たちには手を出だすなと、そうすれば俺たちも何もしないと報告しろ。分かったか? 分かったら一回だけ頷け」


 男が震えながら一回頷いた。


「なら、さっさと帰れ虫けらが」


 そう言って乱雑に槍を引き抜いてやれば男は痛みに悶えながらもすぐに立ち上がり足を引きずり、何度も転びながら逃げていった。

 


「レイ様、逃してよかったのですか?」


「いいの、いいの。一応考えてるから」


「レイ様がそう言うのならこれ以上は何もいいません」 


 今までは警告しても引かない襲撃者達を皆殺しにしていた。

 戦士たちの武器が集まったりするので便利だったのだが、いい加減面倒くさい。

 ということでなるべく酷い姿で帰ってもらい報告してもらうことにした。

 あれだけズタボロにして帰せば多少馬鹿は減るだろう。

 

 無くなるとは思ってない。

 むしろさらに強くてギルドで信頼されている存在などが来るかもしれないが。

 それならそれも殺せばいい。

 いずれ気づくだろう。こちらに手を出してはならないと。

 それでもダメなら……街を一つか二つ消そう。





 それから十日程経った。

 この十日は襲撃者もなく平和な日々だった。

 獲物を狩り、それを喰らって寝る。

 素晴らしい日々だ。

 

 にも関わらずまた襲撃者が来るんだよなあ。

 だが、今回はいつもの襲撃者とは違うようだ。


 警戒している範囲に入ったら何かを待ってるかのようにそこで立ち止まっている。

 しかもどうやら一人だけっぽい。

 ふーむ。


「誰も……いやサクラだけ付いて来い」


「はい」


 サクラだけを伴ってその襲撃者の元へ向かう。

 なんとなく直感でこちらも少数で向かうべきと感じた。


 襲撃者はやはり一人で、片手剣を持った男である。

 だが、こちらをどうこうするつもりがないのか特に構えることもなくその場で立ってこちらを見ていた。

 その身から感じる力は今までの冒険者とも魔物とも違ってかなりのものを感じる。


「人間、我らが領域に何の用だ」


「俺はただ話をしに来た。お前が件のウルフか?」


「ああ、そうだ。俺は神狼であるレイ。貴様は?」


「俺は冒険者のバルトという」


 話か……。

 ランクは名乗らなかったが今までの誰よりも強いっぽいしもしかしてSSSランクか?

 だとして、俺と話をしに来たってことは和平か討伐か。


「お前……レイ殿はそちらに手を出さなければそちらもこちらを襲うことはないと言ったらしいがそれは事実か?」


「ああ、我らはこの森で生きているがそれを邪魔しないのであれば人などどうでもいいからな」


「分かった。なら、もう俺達はそちらに手を出さない。だから、今人が憎くても街を襲ったり殺したりしないでくれ」


「まあ、それは構わんが、お前がそう言っても別の誰かが襲ってくるだろう。欲にまみれた屑どもがな。そいつらは皆、殺すがそれもやめろとは言うまいな?」


「もちろんだ。こちらでも無くべくそういった輩は事前に処理できるよう努めるようにする」


 ふーむ。

 思ったよりも早く問題が片付きそうか?

 これからも多少はあるだろうが今までよりは面倒も減るだろう。

 一応釘を刺しておくか。


「個人が欲にまみれて来る分にはいい。大した手間じゃないし、そういうのは無くならないからな。ただ、国などが兵士を寄越してきたならその時は国に消えてもらうからな。その辺よく伝えることだ」


「……正直どうなるか分からないが、多分大丈夫だ。レイ殿に比べれば自慢にもならないが俺はそこそこ強い方でギルドでの発言力もある方だからな」


「なら精々他が馬鹿を起こさないように頑張ることだ」


「もちろんそうするさ、ではこれで失礼させてもらう」


 そう言って、男は去っていった。

 去り際に、


「今お前が俺を倒してみればどうだ?」

 

 と、言ってみたが、


「冗談はやめてくれ。勝てるわけがない」


 と返ってきた。

 まあ、多分これで大丈夫じゃないだろうか。

 まあ最悪魔王にでもなって戦えばいいや。





 

 一応の和平から九十年程経過した。

 俺が神狼として君臨してからならちょうど百年といったところか。

 群れの連中は神狼一歩手前まで成長しサクラに至っては既に神狼となっていた。

 もともと魔物なので寿命も長かったが誰も少しの衰えも見せないのでさらに寿命は伸びているんじゃないだろうか。


 バルトとの対話から三ヶ月程は身の程知らずの襲撃者がぽつぽつといたが以降はほとんどない。

 二,三年に一度馬鹿な人間がやってくるぐらいだった。


 それなりに平和な九十年の間、俺はその日々を満喫していた。

 そして今、最高に嬉しい気持ちになり遠吠えをしている。

 俺だけではない。群れの仲間皆がまるで何かを祝うかのように遠吠えをしていた。

 少し前に神狼となったサクラのお腹の中には俺の子が宿った。

 サクラが神狼になったことでそれが可能になったのであるが、今日ついにその子供が生まれたのである。

 神狼の子は最初から神狼として生まれる。

 それを皆で祝っていたのだった。


「おつかれ、サクラ」


「ありがとう。レイ」

 

 この九十年で変わったことといえばサクラが俺に対して畏まっていたような話し方が無くなったことも大きな変化かもしれない。

 まあ人語でしゃべるのにも慣れたのかもしれないが。

 同じ神狼になってからはさらに互いが対等な存在として触れ合うようになった。

 その時のサクラが異常に可愛くてつい盛ってしまったわけである。


 ケモナー乙なんていうタロウからの念話が届いたりしたが神界に戻ったら殴ってやろう。


「名前はどうしようか。……雄か。うーむ」


「レイサークなんて名前はどう? 私たちの名前から取って」


「あぁ、それはいいな。そうしよう。 よーし。お前、お前の名はレイサークだ。」


 こうして新しい神狼レイサークがこの世界に生まれたのである。

 その後群れの中では生まれた子供には両親の名前からそれぞれ貰って名付ける慣習ができかけたが、子供が増えた時どう考えても名前の組み合わせが足りないってことで生まれた時に感じたままの名前をつけるようになった。




 




 さらに三年が経った。

 レイサークの成長は速い。

 元々動物というのは成長が速いものだが神狼であるレイサークの成長は眼を見張るものがある。

 いや、親バカスイッチが入ってるかもしれない。

 ……いや。俺神様だし、その血を受け継ぐ子が普通なわけがない!

 

 まあ普通だろうと劣っていようと関係ない。変わらぬ愛を持って育てるだけだ。


 というわけでレイサーク初めての狩りである。

 狩り自体はこれまで何度も見学させてはいたが実戦はまだだ。

 まずはどう狩るのか、相手がどう動くか、特徴や弱点などを覚えて貰った。

 

 そして、今日ついに実戦となる。

 相手はデブ巨人サイクロプス。


 かつては狩りにでた群れ全員で掛かって狩っていたこいつを今回はレイサーク一匹で狩ってもらう。

 かつての強敵は今の雑魚。

 もう群れの中でこいつごときに苦労する奴はいないので一緒に狩ってもらってもレイサークの経験にはなりづらい面があるのだ。

 

 もちろん目を潰すなどのサポートもなし。

 まあ、石化させられたら即座にサイクロプスを消し炭にしてから石化を治す所存であるが。


「いいか。お前には力がある。自分の勘を信じろ。今まで見て覚えたことを活かせ。そうすればあいつはお前の敵じゃない」


「うん、わかったよ、パパ」


 パパだって!

 パパって言われたよ!

 いや、もう何回も言われてるんだけどさ。

 何度聞いてもいいものだね。

 パパ!

 

 ……うん。落ち着こう。

 レイサークはなかなか素直に育っていてこちらのいうことを聞いて実行できる。

 

「じゃ、いってきます!」


 そう言って一気に駆け抜けてあっという間にサイクロプスに先制の攻撃を入れる。

 まだまだ子供といえどその爪は鋭く容易にサイクロプスに傷を付けた。

 

 サイクロプスはすぐさま自慢の能力で石化させようとしたが、それをレイサークは驚異のスピードでサイクロプスの死角から死角へ移動して回避している。

 ……やっべえ。レイサーク俺より速いんじゃね?

 

 もはや残像を残して縦横無尽に駆けまわりサイクロプスを翻弄しているレイサーク。

 なんだろうか。サ◯ア人と地球人の子供はなんやかんやで最強になっちゃうとかそういう感じだろうか。

 

 完全にレイサークを見失ったサイクロプスはついに目玉を潰されて石化能力を失った。

 後はもう為す術もなくサイクロプスはレイサークの猛攻に沈んだ。

 

 あっけねえ……。

 息子、強すぎ……?

 これで竜の鱗も貫ける武器を得ればかなりのものになるだろう。


 息子の思わぬ強さに驚きつつも確かな成長を感じて俺、満足。






 その後十年経ち、息子はすっかり大きくなり成熟した。

 さすがにこれ以上は大きくならないだろう。

 力そのものは今後も成長するだろうが、見た目にはもうそう変化はしないはずだ。

 

 群れの仲間も皆神狼へと生まれ変わり、何組かは番いを得たようだ。

 それから近頃、魔力溜まりから神狼が誕生するようになっていることも確認した。

 魔力溜まりから生まれる神狼は赤ん坊であるため、俺たちは魔力溜まりを頻繁に訪れて神狼が生まれていたら保護するようになった。

 これで神狼という種族の基盤は出来上がったのではないだいだろうか。

 

 後は難しく考えること無く気長に寿命を生きるとするか。

 

 

 



 俺のフェンリル人生(人生?)はまだまだこれからだ。

俺達の戦いはこれからだ!

打ち切りではないです。

が、フェンリル話は終わりです。


ちなみにフェンリルうんぬんはヒロイン召喚のためのお話。



補足:Sランクはあんなやつらでもそれなり強いなら慣れます。

つまりあんなのでもマジでSランク。


SS,SSSは人外レベルに強い連中。

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