番外編2 世界作ります
「いい加減お主も世界の一つや二つ作ってみればどうじゃ?」
ある日のこと、突然創造神であるソウ爺がやってきてそんなことを言ってきた。
「いやいや、これでも俺複数の世界管理してるんでいらないって」
当然、お断りである。
世界なら既に有り余っているのだ。
過去に、偽神によって隔離され権利を放棄された世界に介入し魂の再会する世界へと作り変えたが俺はチャンスを逃す男ではない。
あの世界以外にも権利を確保した世界は両手の指で足りないぐらいである。
「そんなわけで今更世界創造とか面倒だし、必要ない」
「ええい、やかましい! お主にしてみれば既に片手間にできることじゃろうが! ええからリソース消費しろと言ってるんだ阿呆」
きっぱり断ったのにソウ爺さんは軽く声を荒げて世界を作れと言葉を変えてきた。
はてさて、どうも今回は雑談などではなく何かしらリソースを消費して欲しい事情がある様子。
確認すれば確かに神界のリソース量がかなり増えている。
順調だ。
「どうなってんだこれ?」
そんな思いを隠しつつソウ爺に状況を尋ねる。
「ようやく理解したか。お主も儂と同じ最高位の神なのだから少しは神界の様子にもきっちり目を向けて欲しいわい」
「やだよ面倒だし」
存在格はソウ爺と同等とはいえ俺とソウ爺ではいろいろと事情が大きく違う。
俺は元人間で基本的思考は自分が楽しければオッケーだからそんな細かいところまで気を回さない。
ソウ爺は最初に生まれ、全ての基盤を築いた由緒正しき創造の神様であるからして、世界や神界の健全な運営について取り計らう性質の神様なのだ。
「まあそういうのはソウ爺に頑張ってもらうとしよう。で、このリソースが多すぎるとどうなんだ?」
「お主は……まあ、適材適所ではあるかの。さて、リソースについてだがここまで過剰にリソースがあるとな必要以上のリソースが世界に流入してしまうのじゃ」
「ほうほう」
「リソースというのはまあなかなか強力だからのう……どこぞのバカが枯らして砂漠化した世界でもリソースを供給すればあっという間に緑豊かな自然が育まれるようにの」
「お、おう。そうだな」
誰がバカだ!
いや、違う違う。
あれは元々砂漠化してて俺はそれを改善しただけだった。
それにしてもリソースが過剰にあると無駄な流入なんてことが起きるのか……これはちょっと反省。
「まあ別にそれ自体はそこまで問題ではない。管理する神々がちょっと流れを調整するだけで済む話だからの」
「そうなのか」
「問題はその過剰なリソースを取り込んで偽神化するものが急増しているという事じゃ」
偽神が急増?
なんとまあ、今更偽神程度発生しても餌でしか無いがそれなりに厄介な案件だな。
まあ、これも<神装>は神々に広まってるから大丈夫だろうけど。
ちなみに偽神に対応する組織、対偽神特殊介入統括ギルドは<神装>によって全ての神々が対応できるようになったので解散していたりする。
「なるほどな……今更偽神程度ささいな問題ではあるが、だからといって無駄に偽神の発生頻度を増やす必要もない。だから世界を増やし、過剰なリソースを改善しようってことか」
「そういうことじゃ。理解が速くて助かるの」
そういう理由ならまあ、仕方ないなー。
もはや同格だけど創造神であるソウ爺からのお願いだしね。
ここはおとなしく聞き入れて世界を創りだそう、そうしよう。
とはいえ、あれだな。
これだけリソースが溢れてるなら普通に世界創造と維持でいくら消費しても有り余る。
いろいろと面白くなりそうだ。
ここは一切の自重無くやってしまおうか。
ひとまずは魂が再会する世界、リュニオンマレイジに組み込んだ結界のシステムを常時発動するように設定を変更して偽神による介入を完全に防いでおく。
これもリソースの消費量を跳ね上げるシステムだからな。
まあ、この程度じゃ増えすぎたリソースを消費しきれないし、支障もない。
対応しようとしてますよアッピールだ。
「そういえばそのようなシステムを組み込んだ世界造ってたの……いや、あれは改造したと言ったほうが正しいか」
「どっちにしてもとりあえずこれだけでもリソース消費量は結構増えた……けど、まだまだ余裕はあるな」
「なんとかリソースの増加と消費が釣り合うようにいろいろ試して欲しい。その間に儂はリソースの過剰な増加の原因を探っておこう」
「でもそれだと原因探って解決したら、せっかく造った世界が崩壊することにならないか?」
「まあ、リソースがある事自体は悪いことじゃないからの。原因を究明した後はおそらくそのまま維持することになるじゃろう。……それでも万が一の時はまあ、幾つかの世界を切り捨てることになるじゃろう」
最悪、世界を切り捨てるね……まあ、そんな結果にはならないだろうけど。
それでも、万が一の時は仕方ないと諦めることにして想うがままに世界を創造してしまおう。
まずは一つ基盤となる大きな世界を創造する。
当然ながら俺自身もその世界で楽しめるようにしなければ。
つまり娯楽だ。
娯楽文化は必須である。
で、娯楽といえばやっぱりゲームだろう。
ということでゲームができる世界にする。
それもVRゲームだ。
様々な手段で人類に技術を教えこむか……「そういうもの」として理に埋め込んでしまうか……。
「そういうもの」として埋め込んでしまうとそれが当然であると認識してしまう。
リソースはその世界の存在が未知のものに触れて認識した時に発生するものだから、理に埋め込んでそれが当然と認識されてしまうとリソースの供給は格段に減ってしまう。
今回はリソース消費についてそこまで考えなくてもいいようにしたからな。
理にぶち込んでおこう。
完全にゼロから造るのもだるいので俺が生きていた時の地球の情報をコピー。
そこからいろいろ調整し、時代を進めておけばいいだろう。
それから人類とか諸々を作り、今までどう生きてきたのかという歴史を植えこんでおく。
そういえば俺が神になる前にネットで見たが、「世界五分前仮説」なんてものがあったな。
今まさに俺はその仮説を現実にしているわけだ。
「そうだなあこの際有り余る世界使っちゃうか」
いい機会なので確保するだけして放置していた幾つかの世界をここでまとめて使うことにした。
まずは魔法文明、科学文明の栄えた世界の情報それぞれをぶち込んだ世界を二つ用意。
要するに規模のおっきなデータサーバーである。
そしてあらゆる事象を演算することだけを目的にした世界を四つ用意。
サーバー世界二つと演算世界四つとで世界同士を連結させて、更に大本の基盤となる世界も演算世界と連結させた。
これにより情報の蓄積と演算の補助世界を持つ複合統一世界が完成したのであった。
あえて複数の世界を使い、それぞれの世界で特化した機能をもたせた分効率が上がりある程度リソース消費量は削減できたが、世界を連結させる部分で結構な量のリソースを消費することになり、もし以前のリソース量に戻ったら到底維持できない世界が完成した。
まあ以前のリソース量に戻ることはないだろうからノープロブレム!
若干、世界の使い方を間違っている気がするけど問題ないったら無いのだ!
「よし!」
「へえ、これがレイが新しくつくった世界?」
「っと、サクラか。文学という文化の普及は無事終わったのか?」
「うん、私が担当した世界は全部普及済み。これで普及した世界の人々が未知の物語を想像してリソースを生み出すから今後使えるリソースは増えると思うよ」
「おーおつかれさん!」
世界を完成させたところでサクラが依頼から戻り、俺のつくった世界を覗き込んできた。
実のところ彼女に依頼を出したのは俺なのだが、無事完遂してくれたらしい。
尚、極秘依頼であるため外面的にはサクラが適当に選んだ世界に遊びに行ってたまたま小説を普及する結果になった扱いである。
「私の方も終わったわよ……ってまた変な世界つくったのね」
「おう、エルザもおつかれ! 多少変わってるかもしれないが概ね当初の予定通りの世界が完成したぞ」
サクラを労っているとエルザも依頼を終えてやってきた。
そして俺のつくった世界にやや厳しい評価をするエルザだったが彼女も楽しみにしている様子である。
それはそうだろう。
念願の俺たち三人いつでも満足に遊べる世界が完成したのだから。
「っと、流石に速いなあ。 <神装>展開!」
「お主が原因ではないかああああああああ!!」
出来上がった世界に満足にしているとふと感じる圧力に、遂に企みがバレたことを悟る。
さすが創造神様だ。
まあ、俺も同格の神なので慌てること無く<神装>を展開して、超速で接近してきたソウ爺の巨大槌による一撃を防いだ。
「ふはははははは! この俺がそう簡単に攻撃を貰うわけがなかろう!」
ドヤ顔でそんなことを告げればソウ爺の攻撃が一層苛烈になった。
俺もまた刀形態の<神器>取り出して応戦する。
「お主、普通に能力はあるのだからこのような面倒なことしなくてもよかろうに!」
「いやーだって、普通に作ろうとしたらソウ爺が『もっと消費のバランスを考えたものでなければ許可できん』とか文句言ってくるじゃん」
「それはお主が頭のおかしい世界ばかり作ろうとするからじゃろうが!!」
「うんうん、だから俺は考えたわけだよ。消費が大きすぎるのがダメだっていうのなら他の世界でリソースの生産量を強化すればいいんだってな!」
「アホか貴様はァ!」
大層お怒りの様子なソウ爺と激しい攻防を繰り広げながら俺たちは互いの意見をぶつけあう。
ヒャッハー!
超エキサイティング!
本気を出して戦えることのなんと素晴らしきことでしょう!
最高位になってから普通にやってちゃまともな戦いにならないからな。
何度やってもソウ爺との戦闘は面白い!
ま、これもコミュニケーションってやつだよね。
結局地球での時間感覚で言えばおおよそ50年ほどソウ爺と肉体言語によるコミュニケーションを繰り広げ最終的にソウ爺が折れたことで話は穏便にまとまったのであった。
いい具合に俺のつくった世界も習熟して面白そうなゲームが増えている。
さあ、思いっきり遊ぶとしようではないか!
現在不定期連載中の「VRゲームで遊ぼう」
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