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死んだら神になりました。  作者: イントレット
第2章 偽神ハンター、ここに爆誕。
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17話 神婚旅行と子供達と異類婚姻譚と(5)

「まあ、時間の問題だったからなあ」


 俺が見ているのは空が割れてそこから流れ込んでくるソレら。

 もはや俺や俺の従神にとっては慣れ親しんだものであるソレ。


「うーん、それにしてもこの世界で発生するんじゃなくて世界の外からやってくるとはなあ」


 現れたのは偽神。

 それも一体や二体じゃない。

 うじゃうじゃとこの世界に入ってくる現時点で偽神は五百体を超えているようだ。


「まあのんびりした旅行はこれまでか」

「もうちょっと遊んでたかったかな」

「神になる前は偽神ってすごい怖い存在に感じたものだけど今じゃあんなに集まっても脅威に感じないわね」

「ああそういえばエルザは神になる前に偽神に出会ってたっけ」

「あの時は情けない姿を見せちゃったわね」

「仕方ないよドンマイ」


 もはや偽神がどれだけ現れようとこれといった緊張などすることも無い。

 なので雑談をのんびり交わして偽神の様子を眺める。

 元々出てくるであろうとは分かっていたことだしな。

 とはいえ多い。

 既に千を超える数が湧いている。


「お、そろそろ偽神が出そろったかな」

「こんな規模で集まるのを見るのは壮観だね」

「でも一体毎の強さは大したことないわね」


 エルザの言う通り数ばかりで一体一体は大したことない。

 いや偽神としては普通に神と同格なレベルの強さを内包しているのだ。

 ただそれに手こずるのはよくて成り立ての神ぐらいなもので俺たちからすれば雑魚である。


「あ、世界閉じられてきてるわ。ハハッ俺から世界を奪おうだなんてな……」


 <神具>を展開し、左手を掲げてグッと握り拳を作って弾くように開く。

 するとパリーンという音と共に空が割れ粉々に砕けちった。

 砕けた破片は霧散して消え後には何事もない青空広がっている。

 偽神の何体かがこちらを忌々しそうに睨んできた。

 隔離しようとしたのはあいつらかな。


「なにしたの?」

「世界の隔離の阻止」

「偽神からすればたまったもんじゃないわよね」


 他の神ならいざ知らずこちとら偽神の力も吸収してるんだ。隔離なんて真似はさせねえぞ。

 次に空に向かって腕を払う。

 今度は地面から500m程上の部分に結界が構築される。

 山とか起伏のある部分はその標高から500m上に結界が構築されるので山のある部分は結界も山になってる。

 地上で偽神が発生してたり降りて来てたりしても発動直前に偽神を上空へと打ち上げる安心設計だ。

 実際それで上空に吹っ飛んだ偽神がちらほらといた。



「今度は?」

「いやあせっかく作った街とか壊されても癪だから保護をね」

「世界そのものを保護するような結界とか相変わらず規格外ね」

「いやいや俺もさすがにそれはきついって。もともとこの世界のシステム組み込んである機能だよ」

「へえ?そんなもの用意してたんだ」


 どうせ俺が作る世界なのだから絶対偽神とかでるだろうなと思って用意しておいた。

 神界中の有り余るリソースを消費して維持しているためアホみたいな強度を誇る。

 少なくとも今いる偽神共にはどうにもできないくらいに。


 そんなリソースを無駄遣いするようなシステムだが問題はない。

 通常はそんな消費しないし、神界に有り余るリソースは本当に膨大でこの程度雀の涙だし、緊急事態の時のみ発動するものだからとソウ爺も許可してくれたからな。


 もっとも許可を貰ったのは既にこの世界のシステムに組み込んだ後っていうかここに来る直前の会談でだけどな。

 事後承諾は基本だ。


「だから俺がやったのは神界からリソースが供給されるように隔離を阻止してシステムを起動しただけだな」

「偽神が必死になって結界に攻撃してるね」

「びくともしてないわ。こうなると偽神も惨めね」


 意気揚々と世界を奪いにやってきたら隔離もできない、世界に存在する何かに干渉することもできない。

 偽神からしたら最悪だろう。

 もはや偽神の存在意義を何一つ満たすことができないのだから。

 やがて無意味と悟ったのか偽神共が散っていく。

 どうやら結界のどこかにほころびでもないか探すようだ。

 だが、十体ほどはここの上空に待機している。

 出てくるのを待ってんのかね。


「まあ、このまま放置して娯楽を貪っても問題ないんだけど一応これ緊急手段だしね。無駄なリソース消費はやっぱり抑えないといかんよな」

「じゃあやっぱり殲滅だね。数が多い分少しは楽しめるかなっ」

「あんなのよりも人間だったころの魔物の群れと相対させられた時の方が万倍怖いわねっ」


 サクラもエルザも共に臨戦態勢だ。

 サクラは短剣の二刀流でエルザは一本の長剣。

 戦闘スタイルは相変わらずのようだ。


 むしろ俺みたいにいろんな武器に手を出してるのがおかしいのだろうか。

 まあいっか。


「おう適当に始めていいぞ。俺はもう一仕事か」

「なにかあるの?」

「あいつらに伝令をな」


 世界の管理者としての機能、神託を使って全ての従神に声を届ける。


『対偽神ギルドに所属する各員に通達。全員、自分のパートナーと共に行動し無理のない程度に偽神を攻撃、殲滅せよ。そして新たに、神になった者たちよ選別だ。受け取れ』


 そう告げると共に俺は<神具>を展開して覆われている左腕で地面に手を付いた。

 すると<神具>が光輝いたかと思うと不可思議な力が地面を這うように四方八方へと流れていった。


「遠隔で分け与えれるのになったのね」

「いや、この世界に限るけどな。ここは俺の世界で拡大解釈すればこの世界丸々俺の一部だから」


 ほかの場所ではちゃんとした手順でなければ無理だ。

 ともかく、これで新しく神になった五百ちょっとの神にも<神具>が行き渡った。

 あとは偽神を狩って経験を深めてもらいましょう。


「じゃあ取りあえず俺たちはあいつらを倒しますかね」

「私一人でもいいよ?」

「いえ、ここは私一人で」

「まあ油断しないで俺が四、サクラとエルザで三ずつやろうぜ」

「……分かった」

「仕方ないわね」


 勇みよいことだが油断はいけないからな。

 俺たちは示しわせたように跳び、互いにある程度距離を取って結界の上へと降り立つ。

 相手も分かってたかのようにサクラに三体、エルザにも三体ついていった。


「やっほー無様な偽神共」

「貴様がこの世界を管理する神か!」

「なぜこの世界に神がこんなにいる!」

「これはなんだ!?こんな出鱈目なものを!」

「gggggggys」


 取りあえず俺の相手となる四体の偽神の前に出たのだが同時に質問された。

 うるさいし、一体に至ってはバグってるし。


「まあこれからいなくなる奴に丁寧に答えても無駄だけど教えてやるか。俺が管理者で、神がいっぱいいるのは家族旅行。これは結界。満足か?」

「馬鹿にしてるのか!?」

「してる」

「このっ!」


 四体の内一体が単体で接近し攻撃してきた。


「ガッ……」


 それに対して俺は<神器>を刀にしてただ上から下へと振り下ろし、偽神の身体を真っ二つにしてやった。


「まったく雑魚がボッチで俺に勝てるわけねえだろうが。おらせっかく複数いるんだ。同時にかかってこい。そしたらもしかしたら俺に攻撃が当たるかもしれんぜ?」

「くそっ」

「舐めるな!」

「gggksy!!!」


 そうして今度は三体同時に三方向から攻撃を仕掛けてきた。

 その攻撃は互いの死角をできる限りカバーしつつ偽神同士で攻撃を当てないように考えられたものだった。

 ある程度連携が取れてるってことは今日偶然出会ったわけではないのか?

 と、考えつつもすべての攻撃を回避する。


「ふーん。ただ偽神がいっぱいってわけじゃないんだな」

「何のことか―――グフ……」

「gg――!?」


 偽神の内一体が何か言おうとしたところでその偽神の胸から長剣が生えてきた。

 そしてバグってた感じの偽神は頭と上半身、上半身と下半身がそれぞれさようならした。


「レイ、終わったよー」

「何よレイ、こんなのに手こずってるの?」


 それは当然の如くサクラとエルザだった。


「ば、ばかなっ!?貴様らには三体の同胞がついていたはず!?」

「うん、だから倒した。それだけだよ?」

「あんな雑魚じゃ準備運動にもなりゃしないわ」

「なっ……!」


 残った最後の偽神も絶句している。

 まあ本来なら偽神って神に匹敵する存在なのにな。

 こと対偽神においてはプロフェッショナルだからな、俺たちは。


「それにしても面白いことを聞いたな?同胞か」

「つまりはちゃんと仲間意識があるってことだね」

「ついでに言えば何か共通した目的のもとに行動してそうね。どんな目的か教えてくれないかしら?」

「誰がっ―――」

「じゃあ用済みだな」


 否定の言葉だと分かったので最後まで言わせることなく左右に真っ二つにしてやる。

 聞かなくてよかったのかとサクラとエルザに目線で訴えられたが、


「腐っても神に匹敵する存在が口を割るはずもないだろ」


 と答え、それに二人とも「それもそうだな」と納得したようだった。

 それにしても……


「弱かったなあ……」

「私たち強くなりすぎたね」

「仕方ないわよ」


 もはや偽神が雑魚でしかなくなんとなく悲しくなる俺たちだった。

 そして十分後には各従神達から偽神を殲滅した報告を受けて確認し無事偽神の殲滅を完了した。


 その報告に数だけであっけなかったなあ等と俺たちは互いに苦笑した顔になっていた。





 だが、再び空が割れたかと思うとソレは現れた。


「―――っ!?」

「あれは!?」

「また偽神!?」


 現れたのはボロボロの外套を身に纏いやたらと力を感じる3mはあろうかという巨大な鉈を持ち自身も5mを超えるような巨人のような化け物だった。

 その化け物自体から感じる力も相当なものだ。

 武器はおそらく<神殺し>。

 それも今までの<神殺し>とは別格に強力な奴だ。

 それを扱うということはあの巨人は偽神なのだろうが同じくかなりの力を感じる。


『ふん、あれだけの数を出したというのに……所詮雑魚が集まったところで雑魚だったか。使えん奴らだ。お前もそう思うだろう?忌々しい神よ』


 そいつは腹に響くような低い声で、そう言ってきた。


「ほう、その口ぶりだとまるでお前が全て指示していたように聞こえるが?」

『聞こえるも何もその通りだよ。すべては貴様を討つために少しでも情報を得ようと思ったのだがな。無駄に終わったよ。やはり自ら出ないと話にならないようだ』

「俺が目的……?俺はお前みたいなやつは知らんがなあ」


 どういった理由で俺を討とうなんて言うのか。

 過去に倒した偽神の恨みとか?

 んな馬鹿な。


『お前が知らなくても俺はお前を知っているのだよ。俺たちは互いに天敵のようなものだからな』

「なんだと?」

『お前は偽神を惹きつけるのだろう?俺も似たようなものでなあ神を惹きつけるのさ』

「へえそれが?」


 確かに驚くべきことかもしれんが動揺するほどでもない。

 別に俺が偽神を惹きつけているように似たような体質の存在がいてもおかしくはないことは前々から思ってたことだ。

 だがそこまで考えて満足していたため、次の言葉に対してまでは想像していなかった。


『分かるだろ?俺とお前は似た性質を持っているのだよ……お前が<神殺し>を吸収するように俺も神の武器を吸収できるのさ』

「っ!?」


 神の武器……<神器>を吸収できるだと?

 ……考えてみれば俺が偽神の力を吸収できるのだ。

 あちらができてもおかしくはないか……。


「じゃあその<神殺し>は……」

『ああ、そうだ。神の武器を吸収したのさ。かれこれ十体分も取り込んで今では俺もこいつも最強の存在だと言っても過言ではない!』

「へえー」

『む、なんだその反応は?』


 アイツの言葉に正直かなり驚いたが、続く言葉を聞いて一気に興味が無くなった。

 まああいつに殺された神が少なくとも十体いるってのにも驚きだけどそれはどうでもいいや。

 そこはその神に実力が足りなかっただけの話だ。

 俺が嘆くことじゃない。

 俺が興味をなくした理由はこいつの態度だ。

 こいつ、完全に調子乗ってるわ。

 なにが最強の存在だっていうのか。


 そりゃまあ確かに他の偽神よりも強いのは分かる。

 でもなあ。

 そんなに自分の実力に自信があるならこそこそ俺の情報集めてんじゃねえよ。

 自信の無さがバレバレだ。


 それこそ最善を尽くすためっていうのなら分かるけどこいつの場合は違うって言いきれる。

 じゃなきゃ、あの程度で自分が最強だなどと言ってられない。


「御託はもういいよ。さっさと終わらせるぞ」

『ふん!どうやら相手の力を読み取ることもできない愚図のようだ。それであれば我が天敵だなどと俺も勘違いが過ぎたな』

「勝手に言ってろ。……サクラ、エルザ下がっててくれ。一人で十分だ」

「うん、まあ仕方ないか」

「大人しく守られてあげるのもできた嫁の役目だものね」


 すでにこいつに負ける気などさらさらないがそれでも力を持ってることは事実。

 サクラとエルザには荷が重いので下がってもらうように言えば従ってくれた。

 そしてサクラとエルザがその場から結界の内側に下がろうとした時、敵が動き攻撃を仕掛けてきた。

 不意打ちとは最強が笑えるなと思いつつもその攻撃に対応しようとした。

 だが、敵は俺を跨いで背後に回った。

 そりゃ巨人だからな跨ぐのも楽だろうと思いつつ、急いで振り向いた俺の目に映ったのはサクラとエルザに向かって大鉈を振り下ろそうとする偽神の姿だった。




 偽神の攻撃は俺ではなく下がろうとしていたサクラとエルザに向けられていたものだったのだ。

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