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死んだら神になりました。  作者: イントレット
第2章 偽神ハンター、ここに爆誕。
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16話 神婚旅行と子供達と異類婚姻譚と(4)

 温泉もサクラもエルザも宿で十分堪能したので今日はまた別の場所へ移動することにした。


「次は海いこう。具体的には海沿いに街が一つあるからそこに行こう」

「結局海もいくのね」

「でも海はさすがに遠いよ?」

「問題ない。また移動手段を呼ぶから」


 ちなみにマース達はすでに送還済みで馬車は分解して魔力に還した。

 食べ物系はちゃんとした物質なのだが、馬車とかそういうのは実は魔力を物質化しているだけであり、その魔力は元の馬車倉庫へと向かいそこで再形成されるようになっている。


 つまりは無期限無料のレンタル品みたいなものだ。

 その様子を見たエルザからは「とことんアホみたいな世界ね」という評価を頂いた。

 一方でサクラは便利ならそれでよしと特に気にすることもないようだ。


「まあ、ぶっちゃけマース達も飛べたからそのまま馬車を引いてもらってもよかったんだけどね」

「そういえば最初に出てきたときも空からゆっくりと降りてきてたね」

「じゃあなんで送還しちゃったのよ」

「いろいろ試したいじゃん?」


 俺の手には再び召喚の魔導書グリモワールが握られている。


「そんじゃ呼ぶぞ。サモン・炎帝竜ヴォルエンペラードラゴン


 マース達を召喚した時と同じように天空に魔法陣が転写され、そこから現れたのは赤く輝く綺麗な鱗を纏ったドラゴンだ。

 このドラゴンはある依頼の最中に出会い、色々めんどくさい契約を交わしたやつで要するに俺のペットだ。

 勇者トールの前から姿を消すときに一芝居打ったときのドラゴンでもある。


『呼んだか、我が主よ』

「ああ、ボールペン。ちょっと海まで乗せてくれ。頼むわ」

『相変わらず乗り物扱いか。我も安くなったものだ』


 ドラゴンが俺たちの目の前まで降りると頭の中に直接低い声が響く。

 常人なら震えあがる状況だろうな。


「うわあ……綺麗……あ、意外と熱くない。むしろひんやりしてる……」

「今度はドラゴンですか。そのネーミングは無いわね……」

 

 もっともここにいるのは全員神なのでそんなこともなく、サクラはボールペンの鱗を恐れることなく触ってその感触を楽しみ、エルザは俺のネーミングに文句をつけてきた。

 というかエルザもボールペンのある世界に行ったことがあるのか。

 名前の由来というか理由はヴォルエンペラードラゴンだからヴォルペンに略して、そこから閃いてしまったのでボールペンになった。


『できれば我の事はヴェルムドかヴェルと呼んでほしい。それが私の名なのでな。……こやつについてはもう我は諦めた』

「へえ、よろしくねボールペン!」

「よろしく頼みわよヴェル」

『ああ……こちらも我が主と同じタイプか……そちらは我が主の女房にしてはまともなようで助かるぞ』


 名前についてはボールペンが抗議してきたが知らん。


「なんだ、不満なのか。ボールペン」

『いや……不満などないぞ……ああ、無いとも』


 優しい俺は不満を聞いてやろうかと思ったが無いらしい。

 少し声が震えてたし体もビクビクとしていた気もするが気にしない。


「じゃあ海まで頼むぜ。ほら二人とも」


 ボールペンに乗ってサクラとエルザに手を差し出す。

 2人とも俺の手をしっかり掴んだところで引っ張り上げてやった。


「よし、じゃあ出発!」

『乗るだけのくせに』

「あ?」

『何でもない』


 ドラゴンの背に乗って空の旅。

 

「わあ、ドラゴンに乗って空を飛ぶのは自分で飛ぶのとはまた違った感覚だね」

「何が違うんだろうな。自分で飛ぶのと何かに乗って飛ぶのって」


 普段、魔法で普通に空を飛べるのだがドラゴンで空を飛ぶのはまた違った感覚で、どこか興奮してしまう。

 何がそう感じさせるのかはよくわからない。


「翼の有無じゃない?翼で風を受けて飛ぶのと魔法で飛ぶのとじゃ結構違うでしょ」

「なるほど!流石エルザだな。その背中の翼は伊達じゃないってか」

「からかわないでよ。私も久々に飛ぼうかしら」


 そういうとエルザは翼を大きく広げた。

 その途端、ドラゴンの背からふわっと浮かび上がりエルザは翼を羽ばたかせてボールペンと並んで飛び始めた。


「ヴェル、どっちが早いか競争しましょう」

『ほう……我に挑むか。よかろう受けて立つ』

「おお面白そうだな」

「私も参加する」


 ボールペンとエルザが競争するらしい。

 それにサクラも影響されて参加すると言い出しドラゴンの背から飛び降りるとその姿を変え、黒毛に覆われて額にサクラ模様を持つ巨狼の姿となり空中を駆け出して並走し始めた。どうやら空中に足場を作りながら走っているらしい。

 懐かしき神狼姿のサクラである。

 

「おお懐かしいなその姿」

「レイと一緒になれた思い出の姿。私の本質だね」

「話には聞いていたけど本当に元は狼だったのね。サクラって」

「そうだよ。あの時のレイは白銀の毛が綺麗なフェンリルだった。今もかっこいいけどね。どっちのレイも大好き」


 嬉しいことを言ってくれるね。

 それにしても神狼の姿になれたんだなサクラって。

 神狼姿のサクラもやっぱりかわいいなあ。


「うーむ皆が競争するというのなら俺も参加しようかな」

「レイはダメだよ」

「駄目だわ」

『やめていただきたい』

「なんでだよ!」


 俺も参加しようと思ったら皆に却下された。

 なぜだ。


『「「競争にならないから」」』


 理由を聞けば全員から同じ答えが返ってきた。


「レイは参加するとしてどう移動しようと思ってるの?」

「そりゃ雷そのものに変化して目的地まで魔力の道を作って一気に」

「そんなのに勝てるわけないじゃない」

『それに勝つには転移魔法を使うしかないがそれはもう競争とは言えんな』

「ぐう……」


 駄目かあ。

 みんなが思い思いの方法で競争するからいいかなっと思ったんだけど。

 普通に魔法で飛ぶっていうのも味気ないし、諦めるか。


「仕方ない、大人しく外野から楽しむか。よし、じゃあよーい……スタート!」


 俺が開始の合図をすると共に三者一様にスピードを上げていった。

 ボールペンとエルザは自分の翼で、サクラは空を駆ってそれぞれ空を突き進む。


 これ下から見たらすげえ光景だろうなと思いつつ、俺はひたすら風圧に耐えていた。





「私の勝ちね」

「うう、負けちゃったあ」

『やはり神には敵わぬか……』


 競争を始めて三十分、目的地である海沿いの街へとたどり着いた。

 エルザが一番、僅差でサクラが二番でボールペンは十秒も遅れてビリだった。


「まあ順当な結果か」

「ねえレイ。せっかく一番になったんだしご褒美はないのかしら?」

「んーご褒美ねえ……」


 どんなご褒美ならエルザは満足するだろうか……。

 うーん。

 

 俺は黙ってエルザを抱き寄せてその唇を奪う。


「っ!?」

「はいご褒美のキス。なんつって」

「い、いつもやってることじゃない……まあ他にこれといったことも無いしね。これでいいわ……ふふ」

「レイ私も!私も!」

「いやいやこれは競争に勝ったご褒美だからサクラにはなし」

「むう……」


 何も思いつかずにキスしてそれがご褒美だと言えば顔を赤くしながらも喜んでくれたようで何より。

 エルザは好きだとかそういう思いは真っ直ぐぶつけてくるが、突然こういうことをすると照れて真っ赤になるのがかわいらしい。

 サクラはいつでもどこでもオープンで恥ずかしがることもない。

 それはそれでかわいいけどね。

 どっちもかわいい、それでいいのである。

 そして今回はご褒美としてなのでサクラはお預けとなり、ほっぺを膨らまして不満を主張している。

 かわいい。


 そんなやり取りをした後にボールペンを送還して街へと降りると、そこで俺とエルザとの子、アミィと出くわした。

 その隣にはダンディでイケメンなおっさんが立っている。


「あ、父上!それに母上達も!」

「おう、アミィ。お前も無事再会できたようだな」

「はい!あ、もう彼とは永遠の契りを交わして昇華してますので<神具>分けてもらってもいいですか?」

「どうかよろしく頼む」


 おお?早えな。もうその段階になってたか。


「ああ、いいぞ。ほれ」

「おお!これが<神具>か!」


 <神具>を展開してアミィの旦那さんと握手して分け与える。

 関係としてはアミィの従神になっているわけだが無事分けることができた。

 少しでも俺と関係性があればいいらしい。

 ところでこいつ名前なんだっけか。

 顔は覚えてるんだが名前は出てこないんだよな。


「レイ様、俺はゲイルだ。今回は俺をアミィと再会させてくれてありがとう」

「ああ、ゲイルか。再会できたのはお前さんがしっかりアミィの事を思い続けていたからさ。気にすんな」


 顔に出ていたのか向こうから自分の名前を紹介され、それと一緒に感謝の言葉を貰ったので当たり障りのない言葉を返した。

 この男ゲイルは確か冒険者の中でもかなりの腕っぷしだった男だったかな。

 即断即決が気持ちいい男だったのを少しずつ思い出してきた。


「神になる選択も即断とはな」

「ああ、アミィと一緒にいられるのなら否はないさ」


 そして結構熱い男らしい。


「そりゃいいな。最高の理由だ」

「アミィ、よかったわね」

「はい、母上。ほんとによかったです!」


 俺がゲイルと話している傍でアミィはエルザと話し込んでいた。

 それぞれ話すことが無くなったところでさよならすることにした。


 アミィはこれからこの世界の娯楽をゲイルと一緒に楽しむらしい。

 ついでに神としてのノウハウを叩き込むとか。

 叩き込む、という単語が出た時にゲイルの顔が少し青くなっていたが気のせいだろう。


「わずか1日足らずでもう婚姻交わして神になってるのは驚いたな。もうちょっとかかるかと思ってたのに」

「この分だとほかの子供たちも、再会を終えて誓いを立ててるかもしれないね」

「レイの血が流れた子で、その子が選んだ相手ですもんね。共に馬鹿みたいに行動力はありそうよね」

「それは俺が馬鹿みたいという意味か?」

「さあどうでしょう?ふふ」

「レイは自分に正直なだけだよ」


 行動力があるのはいいことだと思うが馬鹿みたいというのが気にかかる。

 その前に俺の血が流れているとか言ってるから俺が馬鹿みたいってことだよな?

 エルザには、はぐらかされたがサクラの微妙なフォローで心が痛い。


「んん、まあいいや。じゃあ、取りあえず海辺に行こうか」

「海辺で何するの?」

「そりゃ泳ぐさ。いや、泳がなくてもいいけど水着には着替えてもらう!」

「言ってくれればそんなのいつでも見せてあげるわよ?」

「いやいや、海にきてって所に意味があるんだよ。プールでもいいけど」


 ただ水着になった姿など興奮しない……こともないけどやっぱその時の状況も重要なのだよ。

 ていうかエルザさん的に水着姿は普通に見せてくれるのか。

 いまいち恥ずかしがるタイミングがわからんのよなあ。


 あれか、突発的にやられなければ大丈夫ってことかね。


「ところで水着持ってないけどどこかで貰えるの?」

「ああ、それも海辺でな」

「やっぱり無料なのね」


 当然である。

 その場所で使うものはその場所でいつでも貰うことができたほうが便利だからな。


 そんなわけで海辺へと移動してサクラとエルザには好きな水着を選んでもらった。

 俺は適当にサーフパンツの水着だ。

 ワクワクしながら先に海辺で待っていると着替えたサクラ達がやってきた。


「おまたせー」

「着替えてきたわよ」

「おう!……おう?」


 サクラ達の姿を見て目を丸くしてしまう。


 ふざけんなよ……それはダメだろ……水着ってさ、そういうもんじゃないんだよ。

 それもまあ確かに水着といえば水着かなとも思うよ。

 でもさ、やっぱり水着と言ったら際どいやつでさ普段見えない肌に興奮したりするもんなんだよ。

 そんでもってさ、泳いだ後の水滴がその体を流れるその姿とか最高じゃない?

 濡れた神と水着が肌にべったりとつく様とかを見て眼福に浸るものじゃないの?

 普段見慣れてる仲だろうと関係なく、そういう姿は見たいもんなんだ。


 なのに……


 なぜ……


「ダイビングスーツなんだ!」

「これ面白いよ!なんでもこれ体が濡れないから泳いだ後の倦怠感とかも小さくなるんだって!」

「ふふっ残念だったわね」


 俺は絶望した。

 サクラは珍しいものがあったからそれを選んだのだろう。

 エルザは分かってて選びやがったな。

 というかエルザのはよくその翼部分に穴の開いたダイバースーツなんて見つけたな。

 って思って背中側に回ると背中が丸々空いてた。

 おおう……突然現れた白い柔肌……これはこれでなかなか……。


 それによく見るとそのダイバースーツは体にぴったりとフィットしていてその体のラインを浮き彫りにしている。

 胸の形から何までばっちりだ。

 それに普通なら下に着る水着の跡も見えないからこの下には何も着ていないらしい。

 悪くない。

 

「どう?喜んでくれたかしら?」

「ベリーグッドっす」


 そんな感じで水着をお披露目した後は海で満足するまで泳いだり、水魔法で遊んだりした。

 最終的には俺対エルザで水の球を生成してぶつけるゲームをし続けた。


 俺たちが遊んでいる間サクラはというと銛を片手に海へと潜り海の狩人と化していた。

 海から上がっておいしくいただいたのは言うまでもないだろう。





 そんな楽しい娯楽の日々を数日送っていたがその平穏はついに崩れることになった。

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