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死んだら神になりました。  作者: イントレット
第2章 偽神ハンター、ここに爆誕。
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15話 神婚旅行と子供達と異類婚姻譚と(3)

「あのっ」

「レイさん……ですよね?」


 広場でいろいろ食べ、取りあえずいろいろ世界を見ようと街を出ようとしたところで、後ろから声がかかり誰かに呼び止められた。

 なんとなーく聞いたことあるような無いようなあやふやな感覚を覚えつつ振り向いて、声をかけてきた者たちの姿を確認する。

 そこにいたのは黒髪でイケメンな日本人顔の男と、同じく黒髪で日本人っぽい美少女。

 うーんどこかで会ったことがあるような……無いような……。

 あるとして姿を見る限り日本人か……。うーん思い出せん。


「ん、確かにレイだが、何か用か?」

「えっと、あの、あの時は……その」

「あの時……?」

「「ありがとうございました!」」


 何のことかわからないままに突然お礼を言われた。

 ええ、なんなんだ突然。


「えーと、何に対してのお礼?」

「僕たちを日本に還してくれたことのです!」

「おかげで私たちは普通の日常を得ることができました。でもレイさんはあの世界に残って私たちの分まで戦うことになったんですよね。それを考えると申し訳なくてずっと気がかりで……」

「日本に還して……俺は残って戦った……ああ!」


 思い出した。

 神になっての最初の依頼で、一緒に異世界に召喚された人を日本に送還したわ。

 あの時の二人か。

 えっと名前は……。


「そうそう、セイジとカナだっけか。まさかお前らと再会することになろうとはな」

「気が付いたらこの世界にいてこの世界の事とかいろいろ突然理解させられて驚きました」

「この姿でここに存在するってことは私たちが再会するのはレイさんだってすぐ分かってお礼を言うために待ってたんです」

「そうか。まあ今なら分かるだろうけどアレは全く気にする必要はねえよ。二人とも無事戻れてよかったな」

「そうですね……何せレイさんって神様ですもんね……」

「ほんとビックリしました……」


 この世界に来た時にある程度の知識が与えられてこの世界が何のためあるのかはすぐ分かるようになってるからな。

 ついでこの世界を管理する神が俺だってことも。


「二人と出会ったあれも神様としての仕事の一つだったからなあ」

「でもレイさんって元日本人……ですよね?」

「ああ、なんやかんやあって死んだと思ったら神にスカウトされたんだよ。お前らと出会ったのはそれこそ神になった直後だったかな」

「私たちも異世界に召喚されたりすぐ戻ったりと、奇想天外なことを経験してますけどレイさんはまたかなり変わった経験をされてますよね……」


 そりゃ死んだら神になったことに比べれば異世界など全然おかしくないよな。


「レイ、誰なの?」

「そろそろ紹介してほしいわ」


 っと、突然の再会にサクラとエルザを忘れていた。


「ああ、悪い。こっちがセイジ、こっちのがカナで、俺が神になって最初の依頼の時に出会ったんだ」

「へえ……最初の依頼ってことは私と出会う前だね」

「話を聞いていたけど一緒に異世界に召喚されてすぐ送還したんでしょ?そんな短い接触なのによくこの世界で再会できたわね」


 俺もびっくりしたからな。

 よほどこいつらが俺に会いたいと願ってたらしい。

 あんな些細なことでずっとねえ……。


「で、こっちの黒髪犬耳の超絶美少女さんがサクラで、こっちの金髪でちょっと鱗と翼が目立つ超絶美女はエルザ。両方とも俺の自慢の嫁だ」

「よろしくね」

「よろしくお願いね」


 今度はサクラとエルザをセイジ達に紹介する。

 二人はその言葉に目を丸くしていた。


「えっ?二人も奥さんがいるんですか?」

「さすが神様……なのかな?」

「ん、なんだお前ら転生繰り返してるわりにずっと一夫一妻の世界ばっかに転生してたのか?」

「ええ、いくら記憶を掘り出しても一夫多妻なんてなかったですよ」

「私もです」


 まあ世界は無数にあるんだからそういうこともあるか。


「さて、悪いが俺らはこれから楽しい旅行なんだ。何もなければここらでさようならだが?」

「あ、はい、大丈夫です」

「お礼を言いたかっただけですしね」

「そうか」


 お礼を言うためだけに再会を強く望むとかこいつらも大概だな。


「んじゃ、また機会があればどっかの世界で出会うかもな。まあその時は何も覚えてないだろうがな」

「そうですね。この世界が特別に記憶を保持できるだけみたいですからね」

「でも多分私たちは記憶がなくとも分かると思いますよ」


 たしかにそうかもしれないな。

 お礼を言うためだけでこの世界までこれるような馬鹿どもだし。


「それじゃあレイさん……主神レイ様」

「私たちをあの時救ってくれて本当に」


「「本当にありがとうございました!」」

「おう、どういたしまして、だ」


 最後にまたお礼を告げた二人の思いを受け取ると二人の姿が薄く消えていった。

 

「レイ、あの人たちと再会できてどうだった?」

「んーそうだなあ。思ってもみなかったから驚いたし、あの時の事は間違ってなかったんだなあと思えて嬉しかったかな」

「すごいわね。あの子達」

「まあ、一度は勇者として召喚された2人だからな」


 再会というのはいいものだ。

 自らが体験することでより強く、そう思った。





「さて、今度こそ街を出ようか」


 思わぬ再会から街に留まっていたが当初の予定通りいろいろ見て回るため街を出発する。


「まずはどこ行くの?」

「遠くに見えるあの山だな」

「そういえば山に行くとかそんなこと言ってたわね」


 耐久キスゲームで負けたから今度の旅行は山に行こうって言ってたからな。

 水着を見たかったがそれは山に行った後に見ればいい。

 

 山には山の楽しみを用意してあるからな。


「でもちょっと遠くない?」

「まあちょっと気合い入れればすぐ着くけどそれって旅行っぽくないわよね」

「大丈夫、移動手段を呼ぶから」


 そうサクラ達に告げて手元に<神器>を引き寄せた。


「なにするの?」

「すぐに分かる。 チェンジ:グリモワール」


 その言葉に<神器>から細い糸がのようなものが伸び、徐々に形作っていく。


「……本?」

「そう、魔法に関しての補助がかかる本。つまり魔導書だ」

「へえ、それで次はどうするのよ」

「そりゃ魔導書で移動手段を呼ぶと言ったら召喚だろ。ってことでサモン・神の馬(ゴッドホース)


 魔導書のページが勝手に捲れてあるページを開きそこに描かれた魔法陣が光り輝くと光が天へと伸び、天空に魔導書に描かれている魔法陣が転写された。

 そして天空に浮き出た魔法陣の中心から何かが呼び出されてきて目の前に静かに降りてきた。


「紹介しよう。神馬こと、マースとミースだ」


 召喚されたのは黒毛の馬と赤茶色の馬。

 そう、勇者トールのいた世界で共に旅をしたあの馬達である。


「わあ……綺麗な毛並み……」

「ずいぶん大きいわね」


 そして神の馬と呼ばれるほどに成長していて非常に逞しい。


「でも二頭だけ?」

「片方に二人で乗るの?……サクラ勝負よ」

「レイとの二人乗りの座は譲らないからね」


 突如武器を構えて戦いを始めそうになるサクラとエルザ。

 面白そうだから見てみたい気もするがここは止めないと。


「待て待て、落ち着け。普通に馬車をつないでそれに乗るから」

「馬車に?」

「そんなものどこにあるのよ」

「どこってそこに」


 俺は街の出口傍にある建物を指さす。

 そこは倉庫のようになっていて中には馬車が格納されている。


「おおー気づかなかった」

「これもやっぱり……」

「おう、無料だぞ。引かせる馬は自分で用意してもいいし、なければ隣で馬ももらえる」


 ボロそうな馬車から王様が乗るような馬車まであるので好みに合わせて選ぶことができる。


「じゃあこれ!これにしよう!」

「うえー……肥え太った貴族が好みそうなデザインね」


 サクラがさっそく馬車を選んだがそれに対してのエルザは酷評だった。


「えー?無駄にキラキラしてて面白いのに」


 ああ、サクラの評価もそこまでいい評価じゃないわ。


「まあ普通のでいいだろ」


 無駄な装飾など一切ない軽トラぐらいの大きさの馬車を選ぶ。

 横幅も結構広く3人一列で座っても余裕がある。 


「私、御者やる」

「じゃあ私はレイと後ろで2人きりね」

「うぐぐ……うーん……いいよ。私やっぱり御者やる。でもエルザ、抜け駆けは禁止だよ」

「ふふ、冗談よ。御者席は広いんだし並んで座りましょ」


 サクラがやる気を出しているので御者はサクラになった。

 エルザが意地悪なことをいってからかっていたがサクラはそれでも御者を選んだ。

 御者に負けた。悲しい。


「まあ、こいつら頭いいから別に御者いらないんだけどな」

「いいの、気分だよ気分」

「レイはノリが悪いわねえ」


 まさかエルザにそれを言われる日が来るとは思わなかった。

 いつもいつも俺が馬鹿やると呆れた目をよこすエルザに!


 くだらないことを言い合いながら準備も整ったところで馬車に乗り込み、山へと出発した。





「ああ……生き返る……」

「あったかーい……」

「まったく……やたら張り切っていたかと思えばこういうことだったのね……」


 俺たちは無事目的地である山へと辿りついていた。

 この山、実は活火山で地下には膨大な熱量の溶岩が埋まっていてそれによって地下水が暖められているのである。

 そう、ここは温泉を楽しめる場所なのだ。

 俺たちは今、全員素っ裸で一緒に温泉に入浴中である。


「ここの温泉の効能ってなに?」

「滋養強壮」

「ちょっ!」


 サクラに温泉の効能を尋ねられたので答えたらエルザが慌てて立ち上がった。

 もちろん素っ裸で入浴していたのだから立ち上がったエルザの姿は全裸である。

 それと勢いよく立ち上がったため一部が弾んでいた。


「うーむ眼福眼福」

「ぽよよんって感じ」

「っ!!」


 俺たちの感想に今度は慌ててお湯に浸かるエルザ。

 慌ただしい奴や。


「そこまで恥ずかしがらなくても……もう見慣れた仲なんだし」

「それとこれとはまた別なの!」

「ふーんまあそんな反応もかわいいからいいけどな。あと滋養強壮で何思ったか知らんけど体が軽くなるとかそんな感じの効果だからな。何思ったか知らんけど」

「っ!?な、なにも思ってないわよっ!」

「ちなみにこの近くにどれだけ騒いでも平気な宿もあるから……ね?」

「……バカ」


 ああら。

 顔を赤くして湯船に沈んでいっちゃった。


「レイ、レイ!」

「ん?」

「きゃあー」

「……うん、サクラもかわいいなあ」


 エルザをイジって遊んでたらいつの間にか立っていたサクラに呼ばれてみれば棒読みで悲鳴をあげられた。

 いや、かわいいけどね。

 これはこれでかわいいんだけどね。





 結局、各所に湧いた温泉を回り、最後は件の宿でゆっくりと過ごした。

 

 ……ごちそうさまでした。

子供は増えません!

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