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死んだら神になりました。  作者: イントレット
第2章 偽神ハンター、ここに爆誕。
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14話 神婚旅行と子供達と異類婚姻譚と(2)

 リュニオンマレイジ。

 俺が作った再会するための世界。

 ここで魂はかつての大切な人や存在と再会することができる。


 その世界にある、とある街の近くの平原へと俺たちはやってきていた。


「さて、ここが再会の地、リュニオンマレイジだ。この世界には幾多の街や村がある。既に各地にお前らのかつてのパートナーだった者たちが散らばり思い思いに生活している。お前らはこれから自分で探す旅に出てもらう」


 ただこの世界にきたらすぐに出会えるなどという事はない。

 やはり自分の愛する人と出会うのであればやはり自分で動いてもらわなければ。


「もっともここは再会のための世界だ。時間はたっぷりとある。それに強い思いが道標となるから迷うことなどないけどな。再会したら互いに知らない時を生きていたのだからその話をしてもいいし、永遠に伴にいる誓いを立てるもいいし、最後の別れをするのも自由だ」


 神になることが必ずしもいい事とは言えないだろう。

 少なくともここで相手を神にするということは偽神の問題に巻き込まれることは確定だ。

 それを拒む人もいるだろうし、そんなものに巻き込みたくないと思う者がいてもおかしくはない。

 まあ、なんとなくこいつらも、こいつらの元パートナーも神として永遠に一緒にいることを選びそうな気がするけど。


「じゃあ解散。精々がんばれよ」


 伝えることを伝えてとりあえず解散。

 それぞれ思い思いの方向へと散っていった。


「ん、レイサークはいかないのか?」

「いえ、あいつは多分あの街にいるでしょうから。どうせ父上もまずはあそこへ向かうのでしょう?では一緒にいこうかと思いまして」


 おっと最初に再会を果たすのはレイサークか。

 レイサークの嫁さんってことはえーと、確か最初の神狼組との間にできた子だっけか。

 どんな感じの子だったか思い出せんな。

 まあ一緒に行くって事ならその時にわかるか。


「そうか。じゃあ行くか」

「ねえ、私たちは再会する相手いないと思うんだけどどうするの?」

「そうよレイ。ここは再会のための世界なんでしょ?再会する相手がいない私たちはまずいんじゃないかしら」


 さあ出発といったところでサクラとエルザから待ったがかかった。

 だが、別に問題はないのである。

 再会のための世界だが絶対に再会しないといけない世界というわけではないのだから。


 そもそも娯楽要素は再会までの暇をつぶすためだったり、再会後に互いの距離を縮めるための他に俺が楽しく遊ぶために用意したものだ。

 そう、この世界は再会の世界というだけでなく俺の遊園地という側面もあるのだ!


「さすがレイだね!もちろんおいしいものもあるよね?」

「あきれた……そんな考えで世界をどうこうするなんて大丈夫かしら……」


 サクラは安定の食い道楽。そしてエルザは呆れてる。


「相変わらずエルザはノリ悪いなー俺泣いちゃうよ?」

「いえ別にいいのですけどね。ただこういった娯楽にあまり興味を持てなくて……」

「ふーん、じゃあどういった娯楽をご所望で?」


 愛するエルザにも楽しめるような娯楽を用意せねばと尋ねてみれば


「娯楽……いえ、私はレイの傍にいられたらそれで満足よ。レイの傍にいることが私の娯楽かしらね」


 エルザは惚れ惚れとする笑みを浮かべてそんなことを言ってきた。

 反則だぜ……。


「ふふっこういうときのエルザは積極的だよねえ」

「思いだけは素直にぶつけるべきだもの」

「くっそ……うれしいけどなんか負けた気分だ」

「なに言ってるのよ、ふふっ」

「レイ、私もレイの事大好きだからね!」


 ぐぐぐ……うれしいのに悔しいというよくわからない気分だ。


「まあ俺も大好きだ。……そうだなあそういう宿屋でも用意しておくか?」

「馬鹿言ってないで行きましょ」

「レイサークも困ってるよ。早くいこう!美味しいものが待ってるんだからね」

「父上……」


 やめろ、そんな目で見るな我が息子よ。


「偉大なる父になんという目を向けるのか、俺は悲しいぞ」

「ハハ、流石父上です。偉大などと冗談がお上手ですね!では行きましょうか」


 作っただけの笑みを浮かべたレイサークは先に街に向かい歩き始めた。

 うん、まあ逞しくなっててうれしいよ。うん。


 そうしてレイサークを先頭に近場の街へと向かい入り口となるであろう場所が見えてきたところで街の中から何やら人影がこちらへと近づいてきているのが分かる。

 その速度はかなりのものですぐにこちらと接触するだろう。


 レイサークを見ればサクラとの親子の会話をしていてまったくその様子に気づいてないようだ。

 ふむ。


「サクラ、エルザちょっとこっち来て」

「ん?」

「なにかあったの?」

「いいからいいから」


 クエスチョンマークを浮かべながらもこちらに来たサクラとエルザを抱えて少し横にずれる。


「まったく父上は……少しは人目をですね……」


 俺がサクラとエルザを呼んだことでレイサークはそれを追うように今こちらを見ている。

 つまり街の方に背を向けているのだがその背後からは先ほどの人影が迫ってきていることに気づいてない。

 サクラとエルザもそれをみて察したのか苦笑している。

 レイサークは俺たちの反応のわけがわからず困惑しているようだがその困惑している時間は長くはなかった。


「レイサクー!会いたかったぞおおー!!」

「―――――――っ!?」


 ものすごい勢いで飛びついてきたその人影は大声をあげてレイサークへの腰へとタックル……もとい抱き付いた。

 レイサークはその勢いに突き飛ばされて悶絶している。

 その人影は悶絶したレイサークの腰にしがみ付いて会いたかったと連呼しながら顔をレイサークにごしごしと押し付けていた。


「ぐぁ……一体何が……ゴフっ……」


 ははレイサークの奴ダメージ受けてやんの。

 さて、このレイサークに抱き付くこの人影……犬耳銀髪のこの子はまあレイサークの嫁さんだろう。

 神狼の姿しか見ておらず人化した姿なぞ知らんが、この性格は印象深いからすぐ思いだせた。


「よう、アイシャだったか。お前は数千年の時が経って転生繰り返してるわりには相変わらずだな」

「あ、族長!ご無沙汰です!この度はレイサクと再会させてくれてありがとうございます!」

「おう、気にするな。それはお前らが互いに思いあってたからこそ再会できたんだからな」

「えっ!じゃあレイサクも私のことずっと思ってくれてたんですね!?よっしゃあ!大好きだぞレイサクー!」

「ギブ、ちょ、まじ折れる……骨折れるから!」


 キリキリと骨が軋む音が聞こえてきている。

 でもまあアイシャもその辺わきまえているようでギリギリ折れないところで解放した。

 ホントにギリギリだったようでレイサークは解放されたにも拘わらずその場に倒れ伏せている。

 いや、そもそもアイシャが絞めるのをやめただけでレイサークの背中に乗っかって全身でレイサークを感じているようなので動きようがないのだが。


「アイシャは相変わらずだねえ」

「レイサークさんのお嫁さんはなんていうか、元気ね」

「あ、サクラ様もお久しぶりです!そちらは……ああ族長の新しい女ですね!」

「その言い方はやめろ」

「――ったあああい!」


 ふざけたことを抜かすアイシャの頭に拳骨を落とした。

 新しい女とかもっと別に言い方あるだろうが。


「でもあれですよね。族長はサクラ様一筋みたいな感じあったのに乗り換えたんですね!」

「ねえアイシャ?私ね、元気なアイシャのこと好きだけど……シニタイノカナ?」

「ひゃっ!ご、ごめんなさい!それは勘弁を!」


 おおう、サクラの背後に鬼が見える。


「ええとアイシャさん。私は確かにレイの妻ですがレイは乗り換えたわけじゃないですよ。サクラが正妻、私は側室ですので。ですが言葉には気を付けましょうね?」

「は、はい!以後気を付けます!すいません!」

「正妻とか側室とか言うけど俺としては両方深く愛してるけどなあ」

「うん、それは分かってるよ」

「それでも一応の立場ははっきりさせておかないとね」


 正妻とか側室とか差をつけてる気がして個人的には好きじゃないけど嫁さん側からそれを言われる以上しかたないかねえ。

 よくできた嫁たちである。


「なあ、そろそろ背中からどいてくれないか?アイ」

「あ、レイサクごめん!」


 ようやくアイシャもレイサークの背から降りてレイサークがまともに動けるようになったようだ。


「そういえばずっとレイサク、レイサクって言ってるのは愛称か?レイサークの方もアイって呼んでるようだし」

「ええそうです」

「レイサークってなんか言い辛いんですよ」


 レイサーク、レイサーク……うーん確かに言い辛いかもしれない。

 あまり子供たちの夫婦生活なんぞ気にしてなかったから愛称で呼び合ってたとはしらなかった。

 でもレイサクかあ……。

 なぜか日本の農業従事者を彷彿とさせるんだよなあ。

 ああでもレイサクを漢字にするなら零作になって縁起悪いから農場とかやってるとこの名前にはされないか。

 じゃあまあいいだろう。

 何がいいのかは知らんが。


「まあ、あれだな。お前らは再会したてだが最初っから意気投合してるようだから心配なさそうだな」

「ええ、私も驚きましたがうれしいものです。父上のおかげですね」

「族長!ほんとここに呼んでくれてありがとうございます!」


 そういわれるとこの世界を用意した甲斐があるってもんだから嬉しいね。


「じゃあ積もる話もあるだろうから、ここでお別れだな。精々お互いの時間を縮めろよな」


 そう言ってレイサークとアイシャをその場に残し、俺はサクラとエルザの手を引いて街へと入っていった。

 街といっても人々の営みから生まれた街じゃなくて娯楽として用意したものの一部なのでこの街の人々の多くはNPC的な存在だ。

 とりあえず広場にでてそこにある屋台で適当な肉の串焼きを貰ってサクラとエルザに渡す。


「お金は?」

「ん、全部無料」

「無料!?それって大丈夫なの?」


 お金を払ってないことを疑問に思ったサクラの質問に答えたら、サクラはふーんと気にした様子も見せずに串焼きを食べ始めた。

 一方エルザはその答えに驚いて大丈夫なのかと聞いてきた。

 まあ、普通は大丈夫じゃないんだけどね。

 いろいろふざけたルールの上に成り立ってるからねえこの世界。


「この世界は再会と娯楽の世界だからな、問題ないよ。そもそもこの世界に来るのは互いに再会したいと思いあってるようなやつだけだからな」

「それって長期的にうまくいくの?堕落しそうだけど……」

「さあ?どうだか。一応今は様子見の段階だからな。状況を見て経済の概念も取り入れるかもしれないけどまだわからん。もしかしたらここに来た奴らが自主的に経済を広めるかもしれんけどそれはそれでご勝手にって感じだし」

「無責任ね」

「神ってそんなものさ」


 正当な労働の対価などは一切なしに娯楽を貪れる世界。

 確かに、堕落しそうだ。

 だが、よほどひどいことになりそうだったら即座に介入するし、メインは誰かと再会するための世界だ。

 この世界に流れてくる魂は特定の誰かと再会したいと強く願っている魂同士だし、再会して結婚するなりしてある程度満足することで消滅するようになってる。

 消滅した後はまた輪廻の輪に組み込まれるたりするがその時再会した魂は常に一緒に転生してもらうことになる。

 だからひたすら堕落した生活を送り続けることは無いだろう。


 いうなればここは死後の世界みたいなものだ。

 再会して心残りが解消したことで成仏する。

 そんな感じの適当な世界なのだ。

 まあ作ったのが俺だから仕方ないことである。


「だからエルザもあんな風にこの世界を楽しんでくれよ」

「……ふふ、サクラは相変わらずねえ」


 俺とエルザの視線の先には食べ物を売ってる屋台を回っていろんなものをおいしそうに食べるサクラの姿があった。


「どうだ!サクラ!うまいだろう?」

「うん!すっごくおいしい!あ、あれもおいしそう!」


 サクラに声を飛ばせば元気な声が帰ってきた。

 俺はそれだけでお腹いっぱいだ。


「そうね、私もレイの作ったこの世界楽しむわ。レイと一緒に、ね」

「……そうだな一緒に楽しもう」

「私も一緒に楽しむよーーーー!!」


 エルザの言葉に俺も言葉を返せば、屋台に釣られながらもサクラは会話を聞いていた様で元気な声が飛んできた。




 この光景に俺はこの世界を用意して本当によかったと強く思う。

この世界、新キャララッシュになるかもしれませんが、ほとんどのキャラは覚える必要ないと思います。


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