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死んだら神になりました。  作者: イントレット
第2章 偽神ハンター、ここに爆誕。
32/44

9話 偽神ハンター、勇者を見守る。 その8

前話にて

火の大精霊→グランソラスまで四日かかったことを追記。

魔物の大群の情報入手を十日前から三日前に修正。


そのほか大きな変化はありませんので読み返しは必要ないです。


※後半別視点

 森から出てきた誘導部隊がこちらに合流してすぐ森から魔物が出てきた。

 この魔物の大群でここを襲わせてるのは俺なのだが、その構成内容自体は知らないのでよく確かめることにする。


 魔物の大群の先陣は狼や猪などの獣型だった。

 数は大体二百体ぐらいか。

 かなり多い。

 どっから湧いて出たんだろうか。

 まあ、俺が生み出したんですが。

 最初に来たのがこれとなると飛行型はいないとみていいだろう。


 鬱蒼とした森を進む獣タイプよりは森の上空を飛べる飛行できるやつらのほうが早いだろうからな。

 これが魔王に指揮されてっていう状態なら、先に獣型をだして乱戦させている間に上空を素通りする飛行型を送り出す、なんて作戦を取ったりするかもしれないが俺は指揮はしていないからな。

 ただ、魔物を集めてここを襲わせただけだ。

 そうなるとただ、足の速い順に出てくるだけである。


「大盾部隊、前へ!その後方に槍構え!」

「「「応!」」」


 指揮官の声に兵士が動き、大盾による防衛線がU時型に敷かれる。

 その後方に槍兵が待機して大盾で魔物を食い止めている間に隙間から処理していくのだろう。


 彼らもそれなりに鍛えてきた戦士である。

 魔物の突撃にもある程度耐えることができるだろう。

 おそらくは大盾一つに対し四体まではぎりぎり耐えられる。

 だが、逆にいえばそれ以上の数で来られれば一気に押し込まれるということだ。


 だから俺とトールの役割はその数をできる限り減らすことである。

 この戦いは確かに俺にとっちゃマッチポンプだが、別にこの街を滅ぼしたいとかじゃない。

 だからせいぜい頑張るとする。


「王国騎士団長、レイ!先行して戦闘を開始、敵を蹴散らすぞ!」

「今代の勇者、トール!同じく先行します!勇者の名にかけて全力で敵を迎撃します!」


 俺もトールも大声をあげて魔物共に向かって走っていく。

 相手は、ロックボアや一本角狼(ホーンウルフ)が中心だった。


「トール!ロックボアを優先だ!あいつらの岩は厄介だからな!」

「はい!分かってます!」


 後方の兵士もロックボアを受け止めることはできるだろうがあの岩を貫くのは容易ではない。

 その点角ウルフのほうはその角による一撃は注意だが防御力は低い方だからまだいいだろう。


 このままトールと近くで戦ってもしょうがないので互いに離れていく。


「オラァ!」


 魔物の先頭と接触し、挨拶代わりに大剣を横に一閃。

 範囲内の魔物を薙ぎ払う。

 

 そのまま横へと動きながらなるべくロックボアを優先して狩る。

 二十体ほど魔物を釣れてトレイン状態だが今は無視だ。


 すこし離れたところから俺たちを無視し一気に街へ突撃を仕掛けようとしている一団がいるのでそいつらのもとまで急接近してそれを食い止める。


 狭い平原と言っても森に比べればの話。

 それなりの広さはあるので俺とトールの二人ではすべてを抑えることはできない。

 

 何体かには通過されてしまう。

 それでも街へ向かう魔物を減らすため只管左右に走り回ってなるべく広範囲で魔物を減らしていく。


 チラッと勇者を見れば燃え盛る<聖剣>を振るい炎が蛇のように這って魔物を巻き込んでいく。

 見た感じあっちは大丈夫そうだ。


「俺ももっと頑張らんとなっ!」


 言いながら後ろから飛び掛かってきた狼を裏拳で迎撃。

 同時に大剣で前方を薙ぎ払いつつ少し後退する。


「内側から焼かれて悶え死ね。連鎖する雷(チェインライトニング)!」


 そして魔法を放った。

 放たれた雷光が魔物の一体に直撃するとたちまちその周囲に電流が広がって広範囲の魔物が感電して倒れた。


「やっぱりこの体でも俺の雷魔法はピカイチだな!」

 

 その後も俺とトールは順調に魔物を減らし、討ち損ねて通過されてしまった魔獣も兵士が食い止め倒して、まずは前哨戦が終了だな。


 そして、前哨戦の次はいよいよメイン。

 ゴブリン、オーク、オーガの人型魔物で構成された大群である。

 どうやら魔物の大群の大半はこいつららしい。それぞれが五百体の総勢千五百体が相手だ。


「ああ、めんどくせえなあ」

「やることは変わらない!全部蹴散らします!」


 森からぞろぞろと出てくる魔物にすこしうんざりする。

 トールはまだまだ気合い十分って感じだ。

 

 獣型に比べりゃだいぶ足も遅いからそういう意味では楽だろう。

 でも多すぎ。

 この体だとこの数を一気に殲滅はちょいと厳しい。


 まあでもやることは変わらない。

 一気に全てを殲滅はできなくないなら数回に分けてやるだけだ。





******トール視点******


「はあ……はあ……」


 旅の中で散々鍛えられていたのにもう息が荒い。

 辺りは火で焼かれていたりと地面がボロボロだ。

 そしてそこら中に魔物の死体が転がっている。

 

 さっきまで大量のゴブリンやオーク、オーガと戦っていたからだ。

 一体一体は余裕を持って倒せたけど数が多かったのが問題で次第に疲労が溜まり動きが悪くなっていたと思う。

 何度か危ない場面もあった。


「でも……守り切った……」


 すでにあたりに動く魔物はいない。

 僕たちはグランソラスを守り切ったんだ……!


 そう思うと一気に力が抜けていく。

 だが、それがいけなかった。


 油断して剣を下ろしたその瞬間に、目の前に巨大な何かが降ってきた。

 

「えっ?」


 それは子供のころに誰もが読んだであろう勇者の絵本で見たことがあった。

 魔物の中でも別格の強さを誇る一種の災厄。

 蜥蜴を大きくしたような巨大な姿で背には巨大な翼を持つドラゴンだった。


 気を抜いたタイミングで目の前にドラゴンが現れたことで僕は思考を停止してしまった。

 ドラゴンの動きがやたらとゆっくりに見える。

 ドラゴンは僕を睨み、そして何かを溜める動作をしたかと思うと口から炎が漏れ始めて―――


「この馬鹿野郎がっ!」

「がぁっ!?」

 師匠の声が聞こえたと同時に脇腹に激しい痛みを感じ、視点がものすごい勢いで流れた。

 痛みで頭が冴えて師匠に蹴っ飛ばされたんだと理解して師匠の方を見た僕の目に映ったのは―――


「し……しょう……?」


 ―――ドラゴンのブレスに飲み込まれていく師匠の姿だった。






 グランソラスを守る戦いは終わった。

 あの後すぐにドラゴンは用が済んだとばかりに飛び立ち西の空に消えていった。

 僕はずっと呆然としていた。

 ティアが心配して僕の傍まで来ていたことにも気づかずに。


「……ル!……!トー……トール!!」

「いっ!?」


 頬に鋭い痛みを感じると共にティアの声が聞こえてきた。

 ティアに頬を叩かれたようだ。


「え……あ……ティア……?」

「トール!ずっと呼んでたのに何ボーっとしてたのよ!」


 どうやらずっとそばでティアに呼ばれていたらしい。

 呆然とするあまりそんなことにも気づかなかったようだ。


「どうしたの……?ねえレイ団長の姿が見えないんだけど知らない?見当たらないのよ。それにドラゴンが現れたって話も聞いたし……」


 そうティアが聞いてくる。

 そうかティアは後方で治療に専念していたんだっけ。

 だから何が起こったのか知らないんだ……。


「ねえ……って、え?ど、どうしたのよトール?なぜ涙を流すの!?」

「う……うあ……ああ――――!」


 改めて師匠がブレスに呑み込まれていく光景を思い出す。

 僕を庇ってブレスに飲まれながらもどこか満足した笑みを浮かべてこちらを見ていた師匠の顔を思い出し、僕はその場に崩れ落ち泣き叫んだ。





 しばらく泣き叫んで落ち着いたところでティアに事の詳細を話した。

 軍勢を倒して油断していたこと、そこにドラゴンが突然現れたこと、師匠が僕をかばってブレスに呑み込まれたこと……全部話した。

 それを聞いたティアはショックを受け、数秒固まり次の瞬間には泣きそうな顔になるも涙をこらえているようだった。


「そうなの……」

「僕が……油断しなければ……こんなことには……僕のせいだ……僕の……せいで……師匠が……僕の―――!?」


 最後まで言い切る前に乾いた音と共に再び頬に痛みが走った。

 今度のはさっきのよりもずっと痛かった。


「な、に……?」


 痛みの原因であるティアを見れば俯いて震えていた。

 


「そんなことで悲観的にしないで……」

「っ!」


 そんなこと?

 そんなことっていうのか!?


「僕のせい僕のせいってうるさいのよ……そんなウジウジ言わないで。」

「そんな!」

「うるさい!!あなたは何!勇者でしょう!?だったらちゃんと立って!」


 なんでだよ……だって師匠が死んだんだよ……。

 それなのに……!


「そんなの関係ないわ!!あなたは勇者なの!勇者がそんなんじゃ皆安心できないの!」

「そんなこと言ったって!」

「あなたは勇者なの!何のためにレイが死んだか分かるでしょ!?」


 何のため……僕を庇って……僕のせいで……!


「違う!そういうことじゃない!」


 違う……?何が……。


「レイはあなたを守るためにあなたを庇ったんでしょう!?」

「そうだよ……僕を守るため、僕を庇ったせいで……」

「だから違う!なんでレイがあなたを守ったと思ってるの!?」


 なんで……?

 それは……僕が勇者だから……。

 

「そうよ!あなたは勇者!希望の存在、希望であり続けなければならない。だからレイはあなたを守り切ったのよ……!だったら……あなたは勇者として、守られた者としての義務があるの……!」

「義務……?」

「そう……あなたにはまだ大事な役目がある……!勇者として希望を与える義務がある……!レイの思いを……無駄に……しないでよ……」


 そういうティアは泣いていた。

 泣きながらも気丈に振舞おうとしていた。


「そう、か……そうだね……せっかく師匠が守ってくれたのにそれを無駄にしちゃいけないよね……」

「ええ……」

「うん……ありがとう、ティア。笑って……ってのは無理だけどクヨクヨするのはもうやめる。まずは戦いがちゃんと終わったってことを伝えよう」

「そうね……まずは報告をしなきゃね……」


 僕は涙を拭って自分の足でしっかりと立つ。

 地面に刺さっている大剣を少し見てから僕はグランソラスの街へと歩いていく。


 街に戻り、戦いが終わったことと師匠―――王国の騎士団長で最強の騎士、レイの死を伝えた。

 



 数日たち、装備を整えた僕たちはグランソラスを出て水の大精霊様に会うため北西を目指す。

 南の平原に刺さったままの大剣を遠目に見て、


「師匠……僕は絶対に師匠よりもそして過去の勇者よりも強くなってみせる。そして必ず魔王を倒すよ」


 そう決意を固め、僕はグランソラスを後にした。

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