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死んだら神になりました。  作者: イントレット
第2章 偽神ハンター、ここに爆誕。
25/44

2話 偽神ハンター、勇者を見守る。 その1

 偽神、それは神による世界の管理に反旗を翻し世界を隔離し、神に成り替わろうとする存在。

 その力は神に匹敵し、油断すれば神と言えども偽神に負けてしまうこともある。

 もっとも、偽神に負け、殺されたとしても神は神界で復活する。

 だからこそ偽神が発生しても介入が可能なら介入し討伐を目指し、返り討ちにあうことがあっても誰も気にしなかった。

 世界が隔離されどうしようもなくなればその世界を消してまた新しく作ればいい。

 それが神の共通認識だった。

 

 ただちょっと仕事が増えるだけ。

 その増えた仕事も神にとっては楽しみが増えた程度の感覚でしかない。

 

 もちろん世界を作るのには莫大なリソースが必要になるのだが神界にある世界の中には只管にリソースを生産する世界もあり、通常の世界でもリソースは基本その世界内で消費と生産のバランスを取っているためリソース自体は有り余っている。

 このリソースを生産する世界には地球の存在する世界も含まれていたりする。

 人類は科学を発展させ、互いに争って地球の自然を破壊していたりするのに、それでもリソース生産世界と言えるのかと思うかもしれないが、神にとって一つの世界に存在する惑星がどうなろうとも関係ない。自然がリソースを生んでいるわけではないのだ。

 いや、自然だけがリソースを生んでいるわけではないというべきか。


 では、何がリソースを生んでいるのかと言えばその世界の存在が未知のものに触れる時、リソースが生産される。

 地球の人々が宇宙を観測し、その知覚範囲を広げればその分のリソースが生まれる。

 地球の人々があらゆる未知の物語を空想していくことでもリソースは生産されている。

 人だけではない。

 ある動物が数世代の経験から、身を守る術を身に着けていくことでも、微生物が変化する環境にあわせ種を変異、進化させることでも、あらゆる未知に繋がる何かによってリソースは生産されていた。

 だからこそ地球には魔力はない。正確には、魔力を扱う術がない。

 なぜなら無い方が、より想像を掻き立てるからだ。そうすることでより多くのリソースが得られた。


 そういった世界から得られる莫大なリソースは新たな世界を創るのに使われていく。

 だからこそ、偽神に世界を壊されようとかまわなかった。

 その世界の存在にとってはたまったものではないだろうが、世界とは重要なものではあれど、また作り直せばいいという程度でしかない。

 時には隔離された世界を消さず、そのまま偽神にくれてやり自由に管理させてやることも過去に神は行っていたが、もれなくその世界は偽神が管理に失敗し自壊した。

 偽神は神に匹敵する力を持ち、世界を神から隔離することができたというのに管理することはできなかったのだ。

 

 リソースを生産するための世界には偽神が一度も現れることがないというのも偽神を注視してこなかった理由の一つだった。

 リソース生産のための世界で偽神が発生していればさすがの神も何が何でも介入していただろう。

 世界が無数にあるならば神もまた無数に存在し、彼らが本気で取り組めば即座に偽神は全て葬られていた。

 だが、偽神はリソース生産のための世界には現れなかった。それが図らずも偽神達の命運を救っていたのであった。

 だから偽神は神にとっては無限に続く意識の中でのちょっとしたスパイスでしかなかったのである。


 しかし、ここ最近――といっても約三千年ぐらいの間でだが――通常の偽神とは違う個体が現れ始めた。その特異個体と最初に遭遇したのはリソースを生産する世界から神へとスカウトされた男とその従神だった。

 その二神が偽神に初遭遇した際はある種の事故で、能力を制限された状態で相対してしまうという運の悪い者たちだった。

 それでも通常の偽神であれば仮に敗北し、死んだとしても即座に神界にて復活できるはずだったのだが、相対した偽神は過去の物とは違い特異な武器を持っていた。もちろん過去の偽神も武器そのものは持っていたりしたが、男が相対した偽神の武器は神を殺しうる力を秘めたものだった。


 相手は神に匹敵する力を持ち神を殺せる武器を持つ偽神、対して能力を制限され、神よりも下位の格に落ちた二神。

 神界に存在する無数の神は隔離された世界に即座に介入する手段を得られず、二神の死は避けられないものに思えた。

 だが、二神はそんな状況でありながらもギリギリで耐え続け、さらに悪運が続きその男神と女神の子が神となったことで救援に間に合った。

 これはその男神と従神という強い関係性が存在し、偶然新たな従神が生まれたたことでなしえた奇跡であった。

 お蔭で男神がその力を取り戻し、偽神に打ち勝ったため神の死は免れた。


 そして、男が偽神の武器を手にすると不思議なことに神を殺す武器がその男を守る堅牢な防具へと変化した。

 その防具は<神器>と違い、他の神に分けることができなかったのだが、後にその男の従神にのみ分けることが可能とわかった。

 

 その後も<神殺し>を持つ偽神と出会うのは決まってその男だった。

 彼の従神も出会っているのだがそれはすべて男と共に行動していたときだけである。


 少しの時を経て、<神殺し>が変化した防具、<神具>には偽神が隔離した世界に介入することができることが分かり、さらに後、彼の従神がそれなりに増えたことをきっかけに神々は偽神への対策を進めることにした。

 彼自身が、自分が偽神によく出会うことを自覚していて協力的であり、即座に彼には偽神を専門として行動してもらう組織が作られた。

 彼の従神にもその力は受け継がれていたため、偽神を発見することが今までより格段に増えた。<神具>の存在もあって、効率的に偽神への対策をすることができたため、偽神対策に動く彼は神として急成長を果たした。


 今では神々の間でその男、偽神ハンターと呼ばれるその神は新参の神なれど、誰もがその力を認め一目置く存在になっていた。


 


 その神の名は、レイ―――


 

----------------------




「あ、この依頼受けよう」


 俺が選んだのは簡単にいえば魔王を討伐するために動く、勇者を補佐する戦士Aの役割をするというもの。

 何を考えてるのかわけのわからない依頼だが要するに魔王討伐依頼の亜種だ。

 この依頼は、ふとした直感でなんとなくで選んだ。

 別にこの依頼の世界に絶対に何かがあるなと思ったわけじゃない。

 本当にただなんとなくで選んだだけだ。


 俺の場合こんな感じで選ぶことである程度強力な偽神に出会うことが経験上多いのでそうしているだけだ。

 だから普通に依頼を終え何事もなく帰還することもそれなりにある。

 まあそれも別に構わない。依頼達成ポイントがもらえるだけだし。

 存在の格だけ上がってってもポイントないと本来の世界創造や管理はできないからね。

 まあ、実際のところそこまで興味はないのだが娯楽的な用法でもポイントは使うからポイントは稼いでおきたい。


 ポイントも従神から流れてくればいいのにな。

 まあ、偽神討伐はポイントも多く手に入るから結局俺は他の依頼を受ける神よりもポイントは多く稼げるんだけどね。


 それにしても、最近では俺の従神からくる経験値で存在の格がかなり上がって偽神も雑魚になった。

 雑魚とはいえやはり神に匹敵する力の持ち主なわけで経験値としてみればおいしいんだけど、手こずることはなくなった。

 でも<神殺し>を持ってる偽神はその武器の能力だけじゃなくて偽神自体の能力も高くなってるからまだまだ楽しめる。だからどうせ偽神が現れるなら<神殺し>持ちの偽神にぜひ出てきてほしい。

 <神具>あるから結局は余裕?

 よほどのことがなければ使いません。もったいない。


 そう、俺は今とても娯楽に飢えているのだ。


 まあ、本気で飢えてたらサクラとイチャイチャしたりエルザとイチャイチャしたりしますけどね。

 そっちの方が絶対楽しいもん。

 

 閑話休題(それはともかく)、この依頼を受けることを決めた理由は勘だけじゃなくて、微妙に珍しい依頼で面白そうだからってのも理由の一つだ。

 基本、世界規模で問題があるなら勇者などではなく神そのものが出張るのにわざわざ補佐役ってのがいい。

 脇役ロールもたまには楽しいんじゃないかね。

 微妙に脇役でもないけども。

 尚、依頼内容的に今回は俺一人である。

 もっとも、ここ最近は依頼は分かれてイチャイチャは神界でってことでいつも一人で依頼を受けているが。

 もし、一緒に行動するなら双剣士の獣人、長剣を使う龍人、オールラウンダーで前の二人を侍らす俺、勇者、プラスα。

 と勇者が非常にかわいそうな状況のパーティになってしまうので、普段別れて行動してなくてもこの依頼は一人で受けるだろう。

 

 まあくだらないことを考えるのをやめて俺はさっさと転移することにした。





「トール・ユーグランス、その腕に現れた勇者の紋、背負う覚悟はできたか?」

「はっ!未だ未熟な身ですが、この紋にかけて必ず魔王を倒して見せます!」


 俺の目の前で国王とトールという少年がそんなやり取りをしている。

 

「その覚悟や、よし。今より貴公はユーグランスの家名を捨て、勇者トールとなる。分かったな?」

「はっ!」

「もちろん国からも支援はしよう。レイ!」

「はっ」


 王に呼ばれ俺は前に出る。

 俺の今の姿はこの国の紋章が刻まれた全身鎧姿だ。

 しかもただの全身鎧ではなくこの国の一般兵士や騎士が着るものよりもはるかに豪華なもので背中にも国の紋章の描かれたマントを着けている。


「この者は知っておるな?こやつを此度の遠征の共にだそう」

「この国、いえこの世界で最強と名高いレイ団長が力を貸してくださると!?」

「そうだ。魔王と戦うのだ。それぐらいでなければ足手まといになろう」

「ですが、国の防備はっ!」

「大丈夫じゃ。こやつは確かにこの国の最大戦力。だが、だからと言ってほかの兵士が弱いというわけではない」


 今の会話で呼ばれているように俺は今、この国の騎士団長をしている。

 実は、この世界に来てからすでに三十五年経っている。

 俺は騎士団長の息子としてこの世界へ転生し、騎士団へと入団、そのまま騎士団長へと上り詰めていったのだ。

 俺の今回の依頼は魔王を倒すことじゃなくて魔王を倒す勇者の補佐、つまり勇者パーティに入って行動すること。

 

 その為、俺は冒険者などではなくはっきりとした地位である騎士団長になったのである。

 この世界の勇者とは、同じくこの世界の人間がなるもので、勇者となるべき人物にはその証となる『勇者の紋』が現れる。その紋が現れる時、魔王が現れると伝えられていて、魔王が現れるまでの間に勇者は対抗する力を得なければならない。

 だが、勇者の紋は十六歳の者にしか現れない。そのぐらいのものでは魔王どころか、よくて新人の訓練をようやく終えたばかりな騎士にようやく勝てるか程度の実力しかない。

 だから勇者を鍛え、同時に共に魔王と戦う仲間がいなければならず、その役目は力があり信用できる者でなければならない。そうなると最強の存在となる騎士団長は勇者が現れた時、必ずパーティに参加するのである。これはこの世界での常識だ。

 そんなことを十歳までに父から教えられたので俺は騎士団長になることにした。


「よろしく頼むぞ。トール」

「これ、レイ。相手は勇者だぞ。それ相応の態度があろう」

「彼は勇者でもその力は未だ未熟。立場で態度を変えたところで強くなるわけじゃない。というか相手の立場なんぞ知ったことではない」

「はあ……。見ての通りこやつは()()性格が悪いでな。だが、実力は確かじゃ。気を悪くしないでくれ」

「いえ!名高いレイ団長に力を貸して頂けるのはとても光栄です。気を悪くするなんてことは」

「ほれみろ。トールも下らん態度なんぞ求めてないだろうが」

「こやつは……」


 騎士団長なんて地位に就いたところでそれっぽい態度なんぞ取らない。

 王にも普段の俺で接している。

 まあ、団長になる前はこんなでもなかったのだが、猫を被るのは騎士団長になった時点でやめた。


 そのことに有無を言わせない実力は見せておいたので、その態度の急変に対して周りは何も言わなかった(言えなかった)

 

 これで、ようやく本格的に依頼を進めることができる。





「でさなんでお前まで来るんだよ」

「あら、私はこの国でも有数の回復魔法を扱える身。足手まといにはならないと思いますが」

「そういう問題じゃねえんだよなあ。一応王女だろお前。お姫様は城で引き籠ってろよ」

「それこそ問題ないですね。世界を救った勇者には大抵お姫様が一緒になるものですもの。報酬の前渡しです」

「世界を救った報酬がこれとかどんな罰ゲームだよ」

「あら、失礼ですわね」

「あの二人とも喧嘩せず仲良くいきましょうよ」

「ん?別に喧嘩しとらんぞ?」

「ええ、そうですわ。この男は私をからかって遊んでるんでしょうよ」


 勇者パーティに追加で加わった回復要因で、俺と微妙な口論をしていたのは、この国の第三王女であるティエリア・アイレス・シエル・アグレシア。

 王女でありながら回復魔法や支援魔法の使い手としては上位の者で今回の勇者の旅のメンバーとして参加することになった。

 年は勇者と同じ十六。

 好奇心旺盛でお淑やかとは無縁のお転婆姫だ。

 このお転婆姫とは立場上、会うことが多く、なんだかんだでこの世界で一番の親しくなった()()である。


 尚、本当に喧嘩などでもなく犬猿の仲ってわけでもなく、彼女が言う通りにからかって遊んでいただけである。



「トール様、あなたはこんなバカのようになってはダメですよ?」

「い、いえティエリア様!レイ団長は確かな実力の持ち主です。今の態度だってきっと僕たちが緊張しないようにという優しさですよ」

「トール様は優しいのですね。ですがあれはそんなもんじゃありませんよ。ただのお調子者、頭をおかしくした男です。」


 バカってこの姫もひどいことを言う。まあ否定はしないけど。

 そしてトールくんや、早いとこそのフィルターを外しておけ。おおむねお転婆姫の言う通りな男だぞ、俺は。


「それと、私のことはティアでいいですよ?」

「し、しかし」

「おーいティアー最初どこいくんだっけー?」

「あなたじゃありません!あと、最初に向かうのはここから北にある街、フィノルシアです。そこで本格的な旅の準備をします」


 トールくんに呼び名を変えてもらおうとするお姫様にわざと俺がその呼び名で声をかける。

 お転婆姫はキッと声を上げるのだが同時に聞いたことにもこたえてくれた。


 このお転婆姫はなんだかんだで心優しい人で、からかいながらでも聞いたことなどはちゃんと応えてくれる。

 わりと好きだよ。そういうとこ。


 あ、好きといってもサクラやエルザに対する好きとは違うのだけど。

 どちらかって言えば、レイサークやアミィなど子に向けるものに近い。


「んじゃ俺は馬車……いや、馬でいいか。馬を用意してくるから勇者くんに説明よろしく」

「ちょ、それってあなたの仕事でしょう!」

「よろしく頼むぞー」


 そう言い残し俺はさっさと馬を調達しに街の雑踏の中へと走っていった。

 

「ははは……ティアの言う通り、少し()()()()愉快な人ですね」

「ええ、()()()()人ですわ。それとトール様、ちゃんとティアと呼んでくれてありがとう」

「え、あす「すいませんというのは無しですわよ?」――っ」

「は、はは……じゃ、じゃあこれからよろしく……ティア?」

「はい、よろしくです。トール様」

「あの、僕も様なんて付けずに……」

「ああ、そうですわね。私だけ様なんて付けるのはずるいわね。トール?」

「ティア……」


 背後の会話を俺の高性能な耳が拾っていたのだが、なんだかんだでトールくんもガス抜きできただろう。

 たかが勇者に気負いすぎなんだよな。気楽にいけばいいのに。

 いや、その考えはおかしいか。


 

 それにしても……何食わぬ顔で馬を調達して一切をスルーしておくか、はたまた砂糖でも買って二人の前で吐き出してみるか、ニヤニヤと二人を眺めるかどれにしようかな……。


 そんなくだらないことを考えつつ俺は馬を調達せんと街の中を進むのだった。

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