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死んだら神になりました。  作者: イントレット
第1章 神ライフ始動します
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17話 テンプレチックワールド・3

「ん?なんだ?」


 あれから三日。

 今日も依頼を受けてエルザにレイ式ブートキャンプを仕込んで帰ってきた所だ。

 なんらかの補正が効いているのかエルザの成長具合が異常だ。

 今なら以前のオーガの群れ+トロールを無傷で五分も掛からず倒せるだろうってくらいには強くなってる。

 初日はやたらと毒づいていたが次の日自分でもはっきりわかるほど成長を感じられてからエルザの態度はかなり軟化した。現金な奴だ。

 そんな感じでシルフィーに戻ってきたのだがやけに街全体の雰囲気が慌ただしい。

 商人のものと思わしき馬車がひっきりになしに街から出ていっている。


「なにかあったのかね?」

「さあ、どうかしらね。少なくとも依頼を受けて街を出るまでは特に変わったことはなかったと思うけれど」


 エルザが言うように朝まではなんともなかったな。

 ってことは俺らが依頼に行ってる間に何かが起こったかもしくは何らかの情報が入ったか。

 結局考えても分からないな。

 街に入るため門番にギルドカードを見せる。


「あ、冒険者の方ですね。Bランクのレイさん、同じくエルザさんですね。Bランク以上の冒険者の方にギルドから連絡が来ています。至急ギルドまで来るようにとのことです」

「あ、そうですか。分かりました。すぐ向かいます」

 

 そうそう、エルザの急成長と共にランクもBになっていた。

 すでにAランクの依頼を軽々こなしてるからな。

 

 そして呼び出しだが、まあ元々報酬受け取りに行く予定だったし行くのは問題ない。

 ただわざわざ呼び出されてるってことは緊急事態か。

 なんだろうなあ。魔物いっぱい来そうとか?

 はたまた竜とかが近場で確認されたとか?

 んーまあどっちにしても魔王関係してそうだから呼び出しなくても関わることになるから選択肢ねーな。

 でもそれなりの問題っぽいしちょっとわくわくしてきたのは内緒だ。


 結局答えの出ない考えをしながら俺たちはギルドへと向かった。



 ギルドに着いたが一見何か変わったことはないように見える。

 まあ普通に考えて受付で取り乱し無駄に混乱させるなんてことはしないだろうから、ここから見えない裏では緊急会議なんかが開かれているのかもしれない。


「あ、レイさん!エルザさん!来てくれてよかったです」

「はあ、その様子だとなかなか厄介な事態っぽいな」

「ええ、ほんとに」


 こちらに気づいて話しかけてくれたのは登録のときからお世話になってる受付のセーラさんだ。

 エルザと依頼を受けその報酬を受け取るときに名前を教えてもらった。


「詳しくは奥でほかの皆さんと一緒に説明しますので、奥の突き当たりの部屋でお待ちいただけますか?」

「ああ、わかった。先に報酬を受け取りたいのだが……」

「はい大丈夫です。まだ説明開始まで時間がありますので」

 

 報酬の受け取りをすまして奥の部屋へ行く。

 部屋は小さい教室みたいに長机と椅子が置いてあり、すでに十人ばかりの冒険者らしき人たちがいて座っていた。

 どうやらしきりに情報を交換しているようだ。

  

「よう!レイにエルザじゃねえか」

「ん?ああ、トリムか」


 その中には初日に勧誘してきたトリムの姿もあった。

 その付近にはパーティメンバーであろう人らが座っている。

 こういう時顔見知りが先にいると気が楽になるよなと思いつつ俺もトリムの近くに座る。


「トリムはなんか情報掴んでるのか?」

「いや、俺たちも依頼を受けて戻ってきたらこの騒動ですぐギルドへ来たから詳しくはわからない」

「そっか。なんだろうな魔物の大群かな?それとも竜でも襲ってきたかね」


 トリムも詳しくは知らないみたいでギルドからの説明待ちになるようだ。

 あれやこれやと何が起こったか予想して時間をつぶしていると部屋にまた冒険者の男が入ってきた。

 男は部屋の中を一瞥し、俺を見て眉をピクッと動かした。

 なんだろうか?

 考える間もなく熊もといここのギルドマスターゴウガイも部屋に入ってきたのでそちらに意識を移す。


「よう待たせたな。緊急事態なもんでお前たちBランク以上の冒険者を呼ばせてもらった」


 Bランク以上か。

 部屋の中には俺たち含めて十四人。


「……少なくないか?」

「こんなものよ。王都は精鋭の騎士団もいるから逆に冒険者は少なくなるの」

「そうか」


 エルザとこっそり話しつつゴウガイの説明を聞く。

 

 なんでもここ最近シルフィー周辺の様子がおかしいらしい。

 騎士団にある程度、討伐されているはずなのに以前より強力な魔物が現れるようになっただとか、魔物が大規模な群れを作ってるだとか、その群れが突然消え去り大量の血に汚れた空き地のみ残っていただとか。

 またある冒険者のパーティが三日前に森でCランクのウォーウルフの群れと戦っているとき狼の遠吠えが聞こえてきたかと思えばその魔物が一目散に逃げ始めたとのこと。

 逆に遠吠えがした方向に向かう魔物を見たという薬草をこそこそと採取していた冒険者からの情報もあったと言う。

 そしてウォーウルフと戦っていた冒険者が言うには本当にやばいと感じたのはその後の出来事らしく遠吠えがしてから大体三十分経った後にまるで世界が凍ったかと錯覚するほどの殺気を感じて森中の魔物が逃げ惑う気配を感じたようだ。おまけにそのパーティも全員震えがしばらく止まらなかったという。

 そしてそれから三日間毎日似たような事が起こったらしい。

 ギルドは何人もの冒険者から報告されるので事態を重く見てこの未確認の脅威に対処するため今回冒険者を集めたらしい。

 Bランク以上で集めたのはCランクのウォーウルフが全力で逃げたという情報によるらしい。


「強力な魔物の異常な増加に加えて、未だに詳しい情報の出ない未確認の脅威の出現、諸君らにはこれら脅威に対処してもらうためとともになにか情報を掴んでないかを聞くために集まってもらった。誰か、他に詳しい情報を持ってる者はいないか」


 説明を聞いて俺は冷や汗が止まらなかった。

 強力な魔物が現れるようになったのも群れを作ってるのも知らん。

 

 だが話の半分以上はなんか心当たりがありすぎる。

 群れが突然消え去って血まみれの大地ってオークのことだろ?

 でもって遠吠えして魔物を呼びその三十分後に殺気って……俺だよなあ

 狼系が逃げるのは当然だ。

 そうなるようにして遠吠えしたんだから。

 なんだかんだで一番長く過ごしたのは神狼の長としてなのだ。

 そのため万が一にも狼系の魔物と戦わないようにしていた。

 

「レイ、未確認の脅威ってさ」

「言っておくがこの場合エルザも共犯だからな」

「うっ」


 エルザも察したようだ。

 まあ察しないほうがおかしいか。

 そして言葉が続けられる前に先手を打っておく。

 初日はともかくそれ以降は異常な成長を肌で感じたエルザもかなり乗り気でやっていたのだ。


「それは置いといてどうするかこれ……」

「どうするも何も問題がこじれる前に言ったほうがいいと思うわ」


 確かに。今知らんぷりして後でばれた場合色々面倒なことになりそうだ。

 その時はその時で強行突破するがわざわざ面倒を増やす必要はないか。

 今言っても面倒なことになるのは変わらないかもしれないが。

 同じ面倒ならさっさと済ませよう。

 そんなわけで俺はエルザとの内緒話をやめて席を立ってゴウガイに話しかける。


「あーっとゴウガイさんよ。俺が冒険者に登録した日は覚えてるよな」

「レイか。もちろん覚えてる。四日前だ、それがどうかしたのか?」

「んで俺とエルザがパーティ組んで最初の依頼を受けたのは?」

「その次の日だから三日前だな」

「冒険者が謎の遠吠えを聞いたと報告してきたのは?」

「……三日前だな」

「それから俺たちは毎日依頼を受けてたよな?」

「……そうだな」

「実は俺とエルザってね、今は師匠と弟子みたいな関係なんです」

「そうなのか」


 ゴウガイの顔が引きつって少し青筋立ってきてるな。

 だが続けよう。

 周りの冒険者は何をいってるのかわからずクエスチョンマークを浮かべている。


「俺って教える経験少なくてですねえ。やっぱりよりきつい実戦を何度も経験させるぐらいしか思いつかなかったんですよ」

「ほうほう、それで?」

「強力な魔物だとか魔物の群れだとかっていい経験になりそうですよねえ?でも探すのは面倒だと思いませんか?」

「……」

「だったら相手に見つけてもらえばいいと考えるのは普通ですよね」

「……」

「そしてその訓練が終わってその場の残党を処理しても森から溢れるように魔物が向かってきてるのでは帰れないわけで追っ払わないといかんわけです。だから……」

「おう、だから?」

「俺は悪くない」


 にっこりとして堂々とそう宣言したその瞬間。

 ゴウガイが凄まじい速度で距離を詰めその拳を突き出してきた。

 その拳を軽く流して防御する。

 周囲の冒険者達は俺が軽々とゴウガイの攻撃を躱しているのを見て驚いてるようだ。

 

「てめぇ!何考えてやがる!」

「何って弟子に対する愛の鞭ですかね?」

「ふざけんじゃねえ!」


 言いながらも攻撃の手を緩めないゴウガイに対して俺も攻撃を受け流し、避けてを繰り返しながらゴウガイの言葉に返事を返す。

 しばらくそのやり取りをしていたのだがゴウガイも無駄だと悟ったらしく攻撃をやめてくれた。


「この化け物め……」

「はっはっは!踏み込みが甘いぞ」


 などと適当なことを言っておく。

 実際はさすが元Sランクの冒険者ってだけはあるのだが。


「まあそういうわけなんで未確認の何かってやつは心配しないで大丈夫だぜ。強力な魔物の増加や群れについては俺も関係ないから結局そっちの対処は必要だと思うがな」

「本当にそれらには関与してないんだな?」

「ああ……いや、微妙に関与してるきがするなあ」

「どういうことだ?」


 怖い顔で睨み付けてくるが気にせず質問に答える。


「いやあ実は俺、異世界から来た人間なんですよ。元の世界で散歩してたら急に召喚されたかと思えばそこは雲の上でそのまま落ちたんですがその時にオークの群れをまとめていたっぽいのを踏み潰したんですよね」

「ふざけてんのか?そんな話を信じろとでも?」

「信じろとかじゃなくて事実を言ってるだけなんで。それで、その群れてたオークがまあ、襲い掛かってきたんで殲滅しましたよ。その際地面に赤い花も咲かせたんで報告にあった消えた群れってのは多分それのことだと思いますよ」

「……とても信じられんな」

「いやいや、まあ異世界から来たとか召喚されたとかはともかく『オークをまとめてた存在含めてその群れを殲滅した』っていう点については既に納得されてるんじゃあないかと思いますがね」

「……」


 少なくともそれについては言葉に力が宿ってるはずだ。

 こういう時有無を言わさず相手に納得させるってのは便利だね。


「……お前は何者だ?」

「んーそれ答えるといろいろダメな気がするからなあ。ただのBランクスタートの新人冒険者ですよ」

「……まあいい。下手につつくとドラゴンでも出てきそうだ」


 それはあれか?藪蛇ってことか?


「……えーそういうわけでだ。諸君たちには最近強力な魔物が増えたことに対する調査を「た、大変です!!!」……今度はなんだ」


 ゴウガイがいろいろ諦めて強力な魔物の増加に関してだけでも言おうとした時ギルド職員の一人が血相を変えて部屋に入ってきた。


「北の森から魔物が大群で押し寄せて来てます!一時間後にはシルフィーに到着すると思われます!」

「なんだと!?」


 魔物のほうが先に動いたか。

 それにしてもどっから現れたのやら……。

 この世界の地理は知らんがシルフィー北にも村とか小さい町だとかあると思うのだがそれらはどうなったんだろうか。

 無事なら魔物がわざわざ避けたかそれとも近場で急に湧いたってことだろう。

 さすがに町とかが壊滅してたらその情報も入ってるだろうしもっと前から騒がれるだろうから無事なんだろう。

 まあ、今考えてもわかることじゃないしまずは目先の問題解決をしないとだな。




「おーこれはこれで壮観だなあ」


 俺たちは今街の北側の平原にいる。

 まだ接触には遠いが地平線が魔物で埋め尽くされている。

 俺の周りには冒険者だけでなく騎士団と思わしき集団もいる。

 その集団の前に立ち剣を掲げて士気を高めようとしているのが団長さんかな?

 そしてその団長さんの後方に控えてる重厚な鎧を着てこの国の紋章がでかでかと描かれたマントをつけているのは王様っぽいな。

 鎧に着られてるなんて感じもないから戦える王様かね。


 騎士団は隊列を揃えて迎撃するようだが冒険者の俺たちに求められた役割は遊撃。

 まあそうするしかないよね。

 

 でもまあなぜ俺が他の人と歩幅を合わせて動かねばならんのか。

 ってことで騎士団や冒険者の方々を無視して魔物のとこまで向かおうとする。

 が、腕をつかまれ阻止された。


「ちょっと何勝手に動こうとしてるのよ」

「え、ちょっと行ってさっさと終わらせようかなって」

「いくらレイでもそれは厳しいでしょう?オークの群れをどうこうしたのは信じるけどオークはCランクで今度のは情報によればBランク以上の魔物が集まってるのよ?せっかく戦える者が集まってるんだからそんな危険を冒すことないじゃない」

「えー俺ってまだそんな過小評価されてるの?」

「過小評価ってあなた本気で言ってるの?……言ってるようね」


 俺の様子をみてそう言ってくるエルザ。


「本当はエルザの強化にちょうどいいかなとも思ったんだが」

「ちょっと、そんなのさすがに冗談じゃないわよ」

「うん、まあ街の存亡の危機だしさすがに自重したわけだ」

「自重……?」


 自重ってなんだっけ?と首を傾げるエルザを無視して話を続ける。


「そんで俺の目的ってのがあって。魔王を倒すことなんだよね」

「魔王って何よ?」

「んーなんていうか魔物の中でもとびぬけて強いとか魔を統べる者とかそういうやつ」

「そんなのがいるっていうの?」

「さあ知らんけど。少なくとも今回の魔物の大群をまとめてる奴はいるだろうね」

「それが魔王だと?」

「可能性の話だがな」

「でもそれがあなた一人で突っ走ろうっていうのにどう関係するのよ?魔王がいたとしてもより多くの戦力がいたほうがいいと思うけど?」


 まあそうなんだろう。

 たとえ俺一人で敵を殲滅できるとしてもここにいる戦力を使えば多少楽をすることができる。

 本当に多少だけど。

 もっともどっちにしても大した労力じゃない。

 

「まあぶっちゃけ飽きたんだよね」

「はい?」

「いやあここ最近エルザを強化するのも楽しかったんだけどさいい加減スカッとしたいわけだよ」

「スカッって……」

「で、そこにこのお祭りが来たのにこのダラダラとした前置きだよ」

「いや、お祭りじゃないし今のやってることも士気を高めるのに必要なことなのよ?」

「それは分かってる。分かってるんだけどでももう耐えられないんだ」


 ほんと目の前にエサがあるのに待てって言われてるようなもんだよ。

 我々が守らねば街がーとかここで迎え撃つだとかそういう口上はいいからさっさと行って吹っ飛ばしたいんだ。

 それにエルザもごちゃごちゃと……もう無理やり一緒に連れてくか。

 そうしよう。


「というわけでもう限界だ。そして気が変わった。やっぱりエルザの強化レッスンも一緒に進めよう」

「え?ちょ、ちょっと待ってよ。分かったから!もうレイを止めないから!だから私はここで―――きゃあ!?」


 ごたごたというエルザを抱きかかえて魔物の群れへと突進していく。

 後ろから勝手な行動をするな!なんて叫ばれてるけど知ったこっちゃねえ。




「最悪だわ……ほんと最悪だわ……なんで私、あの時止めたのよ……放っておくべきだったのよ……」


 ぶつぶつと青い顔で呟くエルザを横目にもう200mも離れていない魔物の群れを見る。

 オーガやオークが主体の大軍勢で後ろにはトロールの行列も見える。

 まとめてるのはどんな魔物かねえ?

 ウォーウルフもいるようだがさすがの俺でもここまで明確に敵になった以上容赦しない。

 たった二人で現れた俺たちに最初こそ困惑した様子を見せたが今はバカにするようにこちらを見て接近してくる。

 

「おいしっかりしろっていつもと変わんねえよ。危なくなったら助けてやるって」

「もうだめだ……私ここで死ぬんだわ……」


 ダメだこりゃ。

 最近慣れてきたと思ってたのにまだまだだったか。


「仕方ねーな。まあ今回はそこで見学だな。しっかり見とけよ?つってもあまり参考にはできんだろうがな」


 普段ならともかく今、戦意失ってるのをどうにかすんのは面倒だ。


「てことで、ピッチャー振りかぶって第一投……せいっ!」


 投げたのは<神器>の通常形態だ。

 投げた後すぐさま直径1mくらいの棘玉になるように念じて棘玉にする。

 昔刀で試したときは回転せずまっすく飛んでったが棘玉はジャイロ回転して飛んでいる。

 多分脳裏でそうイメージしてたのが原因だな。


 ジャイロ回転で地面と平行に飛んでいく棘玉が魔物の群れと衝突する。

 猛烈な勢いと凄まじい回転の力により触れた魔物はミンチにされ息絶えていく。

 魔物に衝突しても棘玉の勢いは衰えずそのまま群れを突き抜けた。


 棘玉の軌道上にいた魔物はすべてミンチとなり群れの中に一筋の空白地帯が生まれた。

 まあそれもすぐに埋まったが。

 魔物は突然のことに困惑しその後怒りに燃えた目でこちらを見てくる。

 ふーむ別段恐れは見られないか。


「い、今のは一体……?」


 ついでに横でもぽかーんとしてる子がいたが今は無視する。


「うーんそれにしても群れが多い。これはさっさと処理せんと一人じゃ後ろに漏らしちまうか……じゃあ次はこれだ」


 いつの間にか俺の手元には銃形態の<神器>が握られている。

 それを見てエルザがえ?いつのまに?っていうかなにそれ?とか呟いてるがやはり無視だ。


 俺は引き金を連続で引いて7発の弾丸を打ち出した。

 7発の弾丸は魔物の軍勢の目の前の地面横一列に4m間隔で突き刺さった。


「フレイムバースト」


 魔物がその一線を超えたときに魔法を発動すると周囲2mの範囲を巻き込むように弾丸が爆発した。

 爆発に巻き込まれて範囲内の魔物は吹っ飛びまたもやミンチ。

 範囲外にいた魔物も爆発の熱で多大なダメージを受けている。


 この魔法銃、魔法の威力増強効果などはないが魔法の指向性や基点操作に特化した性能を持っている。

 銃から打ち出される魔法は普通に放つよりもはるかに速いし撃ち出した弾を基点にした魔法も今のように可能なのである。


「だいぶ減ったがそれでもまだ半分は残ってるか」


 今度は槍にして再び投擲の構えをとる。


「ヴォルテックレイン!」


 放たれた槍からは雷が発せられてそれは無数の雷の槍と化し魔物へと降り注ぐ。

 槍が突き刺さった魔物はもれなく電撃を浴び電機はその周囲へと感電し巻き込んでいった。

 内側から焼かれた魔物の山ができた。

 肉の焼けるにおいがしてきておなかが減ってきた。


「槍ってなんだかんだで広範囲殲滅にちょうどいい魔法になるなあ」


 もはや残っているのは再生力の強いトロールが数体のみだった。

 それもグングニルの連続投擲によって片付いた。

 エルザは弾丸が爆発した時点で考えるのをやめたようでボーっしながら俺と魔物とを何度も見返していた。


 魔物はすべて片付いたので帰ろうとしたが巨大な魔力の塊が迫るのを感じたので左腕の<神具>を展開して真上からの攻撃を受け止める。

 受け止めたのは直径10mはあろうかという巨大な火球だったが手を握るようにすると<神具>にすべて吸い込まれていった。


「ようやく親玉の登場かっ!」


 魔法が飛んできた方向つまり真上を見ると上空30mほどのところにこちらを忌々しそうに睨み付ける者の姿があった。

 それは背中に蝙蝠のような翼を生やした鬼だった。

 まるで悪魔だな。


「貴様が我が軍勢を消した奴だな!そのような馬鹿げた力……貴様一体何者だ!」


 驚いたことにその悪魔は話ができるようだ。

 

「話すことはないな」


 そういうとその悪魔は爪を鋭く伸ばしたかと思うと一気に急降下して接近しこちらを貫こうとしてきた。

 回避ついでに顔面を蹴っ飛ばしてすぐさま追う。


「グガッ!?」

「雑魚が一体で来たところで暇つぶしにもならんわ」


 なんとか体勢を立て直した悪魔に対し俺は既に接近し捉えていた。

 そして刀にしていた<神器>で一閃し悪魔を縦に真っ二つに斬った。



 

 こうして突如訪れたシルフィーの街の危機は迎撃の準備をしていた騎士団や冒険者が動くことなく幕を閉じたのだった。

この神堪え性無し。

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