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死んだら神になりました。  作者: イントレット
第1章 神ライフ始動します
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9話 バカップルゲーマー・4

 豚汁を美味しく頂いた後、街へと戻りある程度形が残っている建物に入りその日は寝た。

 近くまで魔物が来たのがわかり一度起きたが、そのまま通りすぎていった。

 別段気配に敏感であるとかそういったことはないようだ。




 さて、翌日。

 今後街に行っても人がいないだろうということでどんどん先へと進むことにした。

 そんなわけで現在ボスとしてワイバーンが現れる場所へと向かっている。

 途中出てくるモンスターは出てきた傍から斬り倒している。


「普通に命の危険あるから油断しちゃダメなんだろうけど……こう弱いとなあ」


「肉……肉……食えない奴……肉……」


 出てくるモンスターはハイオークが中心でたまにゴーレムが出てくる。

 っていうかブツブツ言いながら淡々とモンスター倒してるサクラ怖いぞ。


 いくつか肉を確保してやがてゲームでワイバーンのエリアへと近づいてきた。

 そこで直感的に横へ大きく避けた次の瞬間には元いた場所を炎が薙ぎ払っていった。

 あぶねえ……。


 サクラはと見ればあちらも同じように回避していたようで一安心。


「ボスエリアとか関係なしか まあそれはそうか」


「ここじゃ戦い辛いね」


 今いる場所は両側が木で覆われた古びた街道でワイバーンは木の影から影へ隠れてしまう。

 その為こちらから見えない。 

 ある程度の場所は気配でわかるがそれでもコチラにとって不利である。


「一気に走りぬけよう」


「りょーかい!」


 ボスエリアは広い空き地だったはずだ。

 ワイバーンに取ってはこちらを狙いやすくもなるがこちらも多少はやりやすくなる。


 全力で走りながらもワイバーンの攻撃を掻い潜りようやくボスエリアへと辿り着いた。

 予想通り広い空き地となっていてワイバーンの姿がよく見える。


 さて、ゲームと違ってわざわざ降りてきてくれることはない。


 ずっと飛んでてすばしっこい。

 ゲーム時代、俺たちに遠距離攻撃の手段はなかった。


 今も近距離主体で強いて言えば<神器>を投げるくらいだろうな。

 とりあえず<神器>を球のまま投げつけてみるが簡単に避けられる。


「っ!? っぶねえ!」


 ブレスが来たのでソレを躱しながら


「アポート!」


 わざわざ大声で叫んで<神器>を引き寄せる。

 一連の動作をワイバーンに見せつけるようにしながら再び投げつける。

 やはり避けられた。


 それを数回繰り返し、また投げる。


「げっ!」


 手からスッポ抜けてしまい投げた<神器は>丁度ワイバーンの目の前で止まり落ち始めた。

 そこでワイバーンが口を空けて<神器>を食べてしまった。


「ああ俺の<神器>が!」


 表情など読めないがどことなくワイバーンがしてやったり顔をしている気がする。

 俺もしてやったり顔をしている。


「チェンジ:棘玉 サイズ最大!!」


 やっぱり俺の戦いはこんなもんだよ。うん。


 そういえばワイバーンずっと俺に攻撃してたけどサクラは?


「あ、終わったー?こっちも終わったよ」


 そこには満面の笑みを浮かべたサクラと、なぜか輪切りにされてるワイバーンの死体があった。


「2匹目……いたんだ。で、なんで輪切り?」


「ワイバーンって竜だよね?竜のお肉って多分おいしいよね?」


 この世界きてからサクラが食いしん坊になってる気がするなあ。

 まあ俺も興味あるけども。


 火を用意して肉を切り取って串に刺して焼きました。




 ハイオークのがうまかった。






 結局ボスとか<神器>でスパスパと切れるし下手にHPなんてものがないからサクサクと進んだ。

 中には自分の周囲に毒を撒き散らかして近づけないなんてボスもいるにはいた。


 遠くから棘玉シュートで余裕でしたが。

 棘玉の汎用性がすごいな。

 当初はネタで作ったようなきがするんだけど。


 この分だとなんだかんだで今回のラスボス楽勝なんじゃないかな?




 そしてゲームではデーモンロードがいた場所にやってきた。

 だがそこにいたのはデーモンロードではなく……


「人……?」


「なんでこんなところに?」


 そこにいたのはなんと人間だった。

 こちらからは見て後ろを向いてるので顔は分からないが男っていうのはわかる。


「っ! ねえ、足元のあれ!」


 サクラが何かに気付き驚いた声を上げた。

 足元?



 ……え?


「デーモンロード……死んでる、のか?」


 デーモンロードが真っ二つになって地面に倒れている。

 どうなってる?

 この男が殺したのか?

 じゃあなんで神界に帰れない?

 デーモンロードが原因だったはず……

 いや、そもそも原因は不明だったか。


「あれェ?なんでここにカミがいるんだァ?」


「っ!?」


 急な展開に混乱していると突如男が口を開いた。

 男の顔はいつの間にかこちらを見ていた。

 それは高校生ぐらいのまだ幼さの残る顔つきだったが、目があった瞬間背中がゾッと寒くなり思わず<神器>を刀にして構えた。

 なん、だ、こいつは。

 別段その顔がおぞましかったとかいうわけじぁない。

 表情もただ子供が疑問に思ってなんでだろうって考えてるようなものだ。

 なのに。

 嫌な悪寒がした。

 こいつはやばいって直感が言ってる。

 こいつは狂ってるっていうのが手に取るようにわかる。


「お前……何者だ!」


「ンん~?カミじゃないかァ?でもソレはやっぱりカミの……だよなァ?」


 こちらの言葉には答えず何か言っている。

 クソッ なんかイライラする……

 なんなんだよこいつは。


「アあ!わかったァ……ぷれいやァの中にィ紛れてたんだナァ?キヒヒッ」


 笑っている。

 その笑った姿が気持ち悪い。

 気持ち悪くて刀が震える。

 いや、違う。

 恐怖……?


 俺はこいつが怖いのか?







「レイ!しっかりして!」


 サクラの声にはっとして我に返った。

 刀の震えも収まっている。

 サクラを見ればこちらを心配そうに見ながらも男のことを警戒しているようだ。


「あ、ああ、大丈夫だ。助かった」


 さっきのはなんだ?

 状態異常とか精神魔法とかそういう感じじゃなかったが。


 男を観察する。

 未だ男は狂ったように笑っているがさっきみたいな恐怖は感じない。

 だが改めて冷静に観察すればあいつからは異常な存在感を感じる。

 それに伴う威圧感もやばい。


「落ち着いたのはいいが……あいつヤバイな」


「うん……あの存在感、まるでタロウ様やハナコ様みたい」


 サクラのその言葉にまさかと思う。

 つまりあいつは神と同格なのか……?

 神っていえば存在としては最高のもののはずだ。

 それと同格ってことはこいつも!?

 しかもタロウ達って俺たちより格がかなり高かったはずだ。



「ヒーヒッヒッ……ハー……めんどくせェなァ?さっさと殺っちまうかァ!」


 それを聞いた瞬間俺たちはすぐに動いた。

 こいつ相手に縛りプレイは厳しいと思うがそれでも俺たちはゲームの世界では最強って言っていい強さを持ってた。

 そのステータスはスピード特化でかなり速い。

 そのスピードで<神器>があるならなんとかなるはず!


 一瞬で敵を間合いに入れてサクラと同時に斬りかかった。

 奴は何も持ってない。

 どこかに隠してるかもしれないがそれを出す隙も与えないっ!


「なっ!?」


 当たる!


 と、確信した瞬間奴の姿は消え空を斬った。

 どこに、と思う前に直感で背中をなんとか刀でガードした瞬間凄まじい衝撃を感じて受け流せずに吹っ飛ばされた。


「ぐぅ――っ!?」


 衝撃で空気が吐出され呼吸が中々出来ない。


「うっ……げほっ……はぁはぁ……」


 やっべえな。

 マジでこいつ強え。

 ゲームステータスだからとかそんなんじゃないんじゃないか?

 マジで神レベルなのかよ。


「そうだ……サクラはッ!?」


 周囲を少し見れば俺と少し離れたところでサクラの姿は見つけた。

 かなりボロボロで俺と同じように吹き飛ばされたようだが一応生きてる。

 サクラもなんとか防御したんだろうけど短剣だったからか俺よりダメージは大きそうだ。


「くそっ!」


 男を睨む。遊んでいるのかこちらをニヤニヤと見ている。

 その手にはいつの間にやら大剣が握られていた。

 どうやらあの大剣で攻撃されたようだ。

 いったいどこから出しやがった……しかも俺の刀をぶっ叩いたのに傷一つないってのか……。

 まさか……


「<神器>……?」


「ブッブーー!!キヒヒッ!こいつはァ、<神殺し>つってなァお前ら神に対抗するために用意されたとっておきって奴だァ」


 神殺しってこいつ何企んでやがるッ!


「それにしても一撃でぶっ殺すつもりだったが案外やるじゃねぇかよォ……気に入ったぜェ少し遊んでやるよ」


 狂った笑みを浮かべて男はそう言った。


「なめんじゃ……ねえ!」


 一気に駆け出して刀を振る。

 が、男が大剣を振るって簡単に弾き飛ばされる。


 それも構わずすぐに地面を蹴って再び襲いかかる。

 何度も何度もそうやって攻撃をするが全て大剣に阻まれ弾かれてしまった。


「キヒヒッ何だよおい、結構速えじゃねえかァ。おらァもっと頑張れ頑張れェ」


「くそがっ!」


 思わず悪態をつくも状況は最悪だ。

 こっちは必死で連撃するが相手はそれを簡単に防ぎやがる。

 悔しいが今生きてるのはこいつが遊んでるからだ。


 フェイントを入れて背後から攻撃しても同じ。


「おらおらァ!今度はこっちから行くぞォ!」


 そういって男は大剣で攻めてきた。

 ぎりぎりのところを回避したり刀でガードしてしのいでいく。


 こいつわざと対応できる速度で攻撃してきてやがる。


「どうしたどうしたァ!へばってのかァ!?」


 刀でガードして体勢が崩れたところに大振りで大剣が振られる。

 そんな隙だらけなモーションも体勢が崩れているのとその振られる速度がかなりのもののため避けることも出来ず刀で受けるしかなった。

 再び大きく吹っ飛ばされたが地面に刀を突き刺してなんとか止まる。


「ぜぇ……ぜぇ……つッ!」


 片膝をつきながら男を睨み息を整えつつ立ち上がる。

 痛む身体を気合で動かして再び走って連続で攻撃する。


「いいねェ!まだまだ元気じゃねえかァ!楽しくなってきたぜッ!!」


 最初と同じどんだけフェイントを入れても連撃を続けてもそれら全てがあっさりと防がれる。

 男の顔は何の苦も感じていないようで戦いを楽しんでいるようだ。


「おらァ!もっ―――ッ!?」


 余裕だった顔が歪み男は大剣を背後に回してガードの体勢を取った。

 その瞬間に鋭い金属音がしたかと思えば男の後ろから人影が抜けてくる。


 男はこちらを睨みつけ大剣を戻して大きく薙ぎ払ってきた。

 その薙ぎ払いに合わせてこちらも全力で刀を振るった。

 激しい金属音がして大剣と刀がぶつかり合い一瞬だけ拮抗する。


 が、やはりこいつの力は半端なものではなく吹っ飛ばされる。

 その際自分から後ろに飛ぶようにしてダメージを抑えつつ距離を取った。


「―――ごめん。首も狙ったんだけど防がれて左腕しか取れなかった」


 そう言ってきたのは先ほど男の後ろから現れた人影……サクラだ。


「充分だろ。元々相手は格上だぞ」


 男を見ればなるほど、とっさにサクラの気配に気づいて首をガードしたはいいが左腕が肘のあたりから無くなっている。

 男と剣戟を結んでる時にサクラとアイコンタクトをして相手の注意を集めていたのだ。

 まあ、本来はいくら注意を集めていてもこいつの実力なら不意などうたれなかったろうが遊んでくれてたからな。

 おやさしいことで。


「貴様らァ!……ヒヒッ面白ぇ、面白えぞぉおおおお!!!」


 一瞬こちらを怒りに満ちた顔で見たかと思えば狂ったようにまた笑い始める。

 そして自分の斬られた腕に自分の剣を刺した。


「な!?一体何を!?」


「特別だァ!こいつの……<神殺し>の真の力ァみせてやるぜェ!!!!」


 あいつの剣は大量の血を被り、そしてそれを吸収して赤黒い刃へと変わっていく……。


「こいつはァ使用者の血を吸うことでその力を増すんだァ、ヨッ!!」


 男は近づくでも無くその場で大剣を振りかざした。

 そしてそのまま振り下ろす――――



 これはやばっ!?

 全力で真横に回避した。


 ――――――ズガァアアアアアアン


 凄まじい轟音が響く。

 直撃は避けたが衝撃波で吹っ飛ばされてしまった。

 何が起こったのか確認するため周りを見渡せば


「マジ、かよ……」


 男が大剣を振るった先は大きく地面が割れてしまい遠くの山までぶった斬っていた。


「よく避けたなァ……どうだァコレが<神殺し>の力だ スゲェだろォ?」


 そういって男は笑っている。

 よく笑う男だ。


 だが、状況は最悪だな。

 こちらの攻撃は防がれる。

 不意打ちももう無理だろう。


「お前……名前とかあるのか?」


 状況を打開するためのなにかを思いつくまで時間稼ぎとして会話を試みてみる。


「アァ?そーいえばお互い自己紹介してないなァ冥土の土産だ、教えてやるよ俺はヴァーンズだ。お前らはァ?」


「俺はレイだ」


「サクラ」


 ヴァーンズって名前らしい。


「一体お前何者なんだ……なんで<神殺し>なんて武器を持ってる?何が目的なんだ?」


「それをお前に話してどうすんだァ?死ぬ奴が知るのは俺の名前だけで充分だろうがァ」


 再びあの一撃が襲ってくる。

 なんとか横っ飛びで大きく回避して奴の方を見れば既に二撃目を放とうとしてた。


「やっべ!」


 大きく回避して未だ空中にいるため避けられない。咄嗟に刀を前に構えでガードする。

 そこに二撃目が放たれた。


 ――ギィィィィ


 奴の大剣から放たれたエネルギーと刀がぶつかりあう。

 さすがは<神器>といったところかエネルギー自体は散らせることに成功するもその衝撃で俺は後ろに大きく吹っ飛ばされた。


 

 今日はよく吹っ飛ぶな……。


 ふと、そんなことを思った。



「ぐっ…!」


 吹っ飛んだ先の岩壁に思いっきり背中を打ち付けた。

 苦しい……息が出来ない……体中が痛い……

 なんとか呼吸して気合で目を開いて見れば……


「やってらんねえ……」




 目の前に三撃目が迫っていた。

ヴァーンズはドイツ語のWahnsinnから取りました。


名前に困ったらとりあえずドイツ語にするといいっていうのを何かで見た気がする。



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