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死んだら神になりました。  作者: イントレット
第1章 神ライフ始動します
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8話 バカップルゲーマー・3

 街へとたどり着いた。

 だがそこで、見た光景は思っていたものとは大きく違うものだった。


 街の建物はある。

 だがその住人が一人もいないのだ。

 それだけではない。

 建物は蔦で覆われていてやたらと古めかしい。

 おまけにいくつかは倒壊していた。


 壊されたというよりも風化して耐え切れなくなったという感じだ。


「もしかしてゲーム時代からはかなりの時間が立ってるのか?」


「それでもこれだけの建物があるなら何としても利用するんじゃあないかな?まあ人が生きているのなら、だけど」


「となるとこの世界で人は死んだか……もしくは逃げた、か」


 ゲームでは先のエリアほど敵が強くなる。

 実際ここまできた道中の敵はゲームのときと同じモンスターだった。

 確かゲームの時は街に敵は入ってこなかったが、その敵が入ってこないという状態に対して明確な背景……結界があるとかそういった設定はなかった。

 つまりゲームとしては街にまで敵が入ってきたら楽しめないっていうことからシステムに設定されたものだと言える。

 じゃあこの今もそのシステムが生きているのか?

 一部の機能は未だ生きていることがわかる。

 ステータスの確認なんかがそうだ。

 だが虚空にアイテムをしまうという機能はなくなっていた。

 ステータス確認はこの世界特有の法則で虚空のインベトリはゲームのシステムであったと考えれば現実の世界となってシステムは消えたと捉えられる。


 そういえば……


「巨人のドロップアイテム自動で入手されなかったよな?」


「そういえばそうだね。今更巨人のドロップアイテムなんていらないって思ってたから気にしなかったけど」


「よくよく考えれば死体が残ったしな。現実の世界になったんだから解体も自分でやるのが普通だよな」


 これは迂闊だったな。

 未だゲーム感覚でいたみたいだ。

 でもこれでシステムは死んでると推測できる。

 そうなれば強いモンスターが街へと入ってくることになるから住人は殺された逃げたかとなってもおかしくはないと思う。

 案外最初のエリアのほうには人もいるかもしれないな。 


 システムといえば……


「<斬首>」


「え、なに?」


 だめか。


「スキルもだめっぽい。なんの手ごたえもなかった」


 スキルもダメってことはこれもシステムだったってことか。

 でもこの肉体のスペックはゲームのステータスが反映されてるんだよな。

 どこまでがシステムでどこまでがこの世界でも有効なのかがよくわからんぞ。

 あ、神の能力制限解除の時エラーになって一部解除ってなったんだっけか。

 それで設定されたのがゲーム時代のステータスだったのかもしれんな。


「まあ、このステータスだけでなんとかするしかないな」


 考えすぎてもしょうがない。

 まずは目先の問題だ。


「街が機能してないとなるとモンスターを狩って食うしかないか」


「さっきの巨人食べに戻る?」


「いやそれもめんどくさいし……あ、ちょうど食料が来たな」


「あれはハイオークだね」


 ハイオーク……小説なんかだとオークは豚肉の味だったりそれよりもおいしい肉だったりするから期待できるかな?

 ついでに街にはモンスターが入ってくることも確認完了である。

 まあ、なんにせよ食料の確保しなければな。

 そう思い、あっという間に駆けていきハイオークの横を通り抜けた。

 通り抜け際に首を狩りあっさりと倒し終わった。

 普通に弱いな。


「解体……どうしようか」


「生で食べるわけには……いかないんだろうね」


 自分の身体をみながらサクラはそういった。

 狼や神狼時代とは身体が違うことはわかってるようだ。

 

 その様子に苦笑しながらも


「適当に皮剥げばいいか。解体は……悪いがサクラの短剣貸してくれないか?」


 さすがに刀じゃやり辛いだろう。


「いいよ。はい」

 

 サクラもそれに了承して短剣を渡してくれた。

 描かれた神狼は刀を咥えている。俺の方のか。


 解体のやり方なんぞわからんのでまずは胸から腹にかけて切り込みをいれそこから臓物をかき出す。

 それから内臓と皮の間の肉を適当にブロック状に切り出していく。

 商品にするわけでもないしとりあえずはまず食えるだろうって部分だけだ。

 

 アイテムボックスなんて便利なものもないので持ち運べる量も限界があるしね。

 あとはこれを焼けば食えるようになるだろう。



「これが終わったら解体の知識仕入れておくか……」


「私も一緒に覚えるから頑張ろう」


「おう」


 今後も受けた依頼によっては解体を自分で行うこともあるだろうということで解体の知識を仕入れることにした。

 サクラといっしょにやるならすぐ覚えるだろう。

 それがなくても神補正あるしな。

 




 

 さて、次は火だなあ。

 ライターない。火魔法……使えない。

 

 そういえば俺って死因が雷だからかやたら雷系の魔法だけ強力だったりしたよな……?

 雷魔法ならいけるか……?


 バチッ


 お、いけた。

 と言っても大した威力はないなあ。

 少し威力の高い静電気だ。


 戦闘では使い物にならんが火を起こす分には十分かな。

 枯れ草を集めて何度も何度も静電気を当てる。

  

 バチッ

 バチッ

 バチッ

 バチッ

 バチッ


 あ、ついたか!?

 息をゆっくり細く吹きかけて……


 ついた!

 用意しておいた枯れ枝を枯れ草の上にそっと乗せて再び息を吹きかける。

 酸欠気味になりながらも何とか着火。

 

 枯れた木とかあってよかったな。


「火ぃ用意できたぞー」


「こっちもいろいろ見つけたよ」

 

 サクラには俺が火を用意している間に建物のなかから使えそうなモノがないか探してもらっていた。

 結構、いろいろあったらしくその手に色んな物を抱えていた。


「うーんと 背負い袋?結構でかいしよくあったなこんなの。袋の中には密封できる容器ってなんかこれ新品っぽいな。他には刃の欠けた包丁に何故か錆のない鍋に木の皿などが多数か。お、鉄串がいっぱいあるじゃん。これも錆びてないしコレに肉刺して焼けばいいか」


「あと、これ」


「え?これ水筒じゃん。しかもどこも傷んでないし……というか新品みたいだし水も入ってる?」


「うん。背負い袋とその中身とか、鍋と鉄串と水筒とかは全部同じ場所っていうか同じ箱から見つけたんだけどね。これ、一緒に入ってたやつだけど読めばわかると思う」


 ほう?


『<端末>見ろ』


「は?<端末>?」


 疑問に思いつつも画面を開く。


「えーっと、異常事態・介入できない――――なん・・・物資・・・た・・その・界・・死は存在が・・える・・・?なんじゃりゃところどころ抜けてよく分からんぞ。」


 うーんと読める単語から考えて穴になってるところを推測すると異常事態で神様の介入ができなかったと。

 介入できない、の後長々と書いてあるようだが全部文字化けしてるわ。

 んでなんとか物資は送った……かな?

 そしてなにより物騒なのが最期の文章だな。

 この世界で死ぬと存在が消えるって書いてあるよなこれ……

 つまりこの人の肉体を失うだけでなくて神としても消滅するのか?

 

「なんだか面倒な話になってきたな……」


「どうしようか?今回は失敗とかしちゃダメみたい……」


「とはいってもこれ成功させないと神界に帰れなくてジエンドだからやるしかないだろうな」


 ステータスは縛りプレイ。

 他の神が介入できないほどの何か。

 多分この世界には俺たちだけ。

 死ぬと神としても終了。


 うーむ気楽な神ライフが壊れてきてんな。

 ま、やるしかないんだから頑張ろう。

 サクラと出会う前なら「ま、消えてもいいやそれなり楽しんだしー」で終わったが今は永遠に生きてキャッキャウフフしたいからな。


「オッケー。まあ頑張ろう。それにしても物資が背負い袋に密封容器、そんでもって鍋と串と水筒ってなんなの?簡単なキャンプセット?」


「鍋と串はわからないけど水筒は無限に水が出てくるから便利だよ」


「え、これサクラが水入れてきたわけじゃないのか」


 ちょっと飲んでみる。

 

 ゴクッゴクッ……


「っはーーーー!なんだこれうまいし冷えてるし最高じゃん」


「他の依頼受けるときとかにも持って行きたいよね」


 確かに。

 他の依頼受けて別の世界にも持っていけたらどんなに便利だろうか。

 世界によっては水汚かったりするからなあ。

 まあ基本神モードで世界行くなら水とか食事とか考える必要もないんだけど。

 

「んじゃとりあえず肉焼いて食べようか」


「適当に切り分けるね」


 サクラが切り分けてくれた肉の塊を鉄串に刺していく。

 一個辺り4cmくらいの立方体な肉である。

 サクラさんもう少し薄くしません?しない?了解です。

 

 それなり長い(30cmくらい)鉄串だったので4つ程刺すことが出来た。

 やっぱり分厚すぎませんか?


 ……チラッ


 ダメだ。肉が楽しみなのかめっちゃだらしない顔してる。

 マンガの登場人物だったら今頃サクラの目はしいたけみたいに描かれてる感じだ。

 そのうち涎でも垂らしそうだ。


 そんなカワイイサクラにもっと薄くしようなんて言えない。

 自分のだけ薄くすればいいかもしれんがせっかくサクラが切り分けてくれたわけですし。


 まあ分厚いのでなかなか火が通らないんですが焦らずじっくり焼く。

 少しずつ串を回転させつつじっくりじっくり火を通していく。

 肉汁が落ちてそれがややもったいないがまだ駄目だ。


 サクラを見れば同じように焼いている。

 だがその目をみればわかる。

 あれは己のなかで様々な戦いが行われているのだ。

 今すぐ食べたいという気持ちとじっくり焼いて最高の瞬間を待つ気持ちがせめぎ合っている。

 ああ!涎垂れてますよ!


 まあ、獣チックなサクラも超絶にかわいいので言いませんが。


 お、そろそろいいだろう。

 4cmのブロック肉だったが少し縮まって3cmぐらいのものになっている。


「もうい―――」


「ん~~~~~♪」


 サクラにもういいよと言おうとしたがもう、の時点で肉にかぶりついていった。

 よほど待ち遠しかったんだな。

 味も良かったのか顔が緩みまくっている。

 

 苦笑しながらも一口。

  

「!?」


 な、なんだこれは。

 ただ焼いただけで調味料は一切使っていないというのにほんのり塩味が効いている!

 それが肉の旨みを引き出して口の中いっぱいに広がっていく……。

 じっくり焼いたおかげで外側は少し固めになったがその分内側には肉汁が閉じ込められ噛めば噛むほど溢れ出てくる。

 肉の旨みをしっかり楽しんで飲み込めばスーッと風味が引いていく。

 

「めっちゃうまい……」

 

 これはサクラの顔が緩むのも仕方ないと思える味だった。

 ハイオークまじリスペクトしちゃう。


 すぐにもう一つ食べる。


「んな!?」


 あ、ありえん……ありえんぞ……

 塩味じゃない!これはタレだ!

 タレを染み込ませたかのような濃厚な味……

 かと言ってタレの味しかしないということもなくうまく肉そのものの旨みとマッチしている!

 タレ味も、いい……ッ!


「って、なんでだ!?味付けしてないのになんで塩味にタレ味!?」

 

 思わぬ肉の味に俺は驚いていた。

 その横でサクラは細かいことは気にせず美味しそうに噛み締めながら食べている。

 

 少しフリーズしていたがひたすら美味しそうに幸せそうに食べているサクラを見たら考えるのが馬鹿らしくなった。

 おいしいは正義。ただそれだけのこと……

 

 ……あむ……もぐもぐ……っ!?










「わさび風味だとォーーーー!?」









 思いの外極上のものだった食事を終え今、街から少し離れた場所に来ている。

 そこで俺たちは複数の不思議なものを発見し、その見つけたものに俺たちは唖然としていた。

 いや、唖然としていたのは俺だけでサクラはうわーこんなのあるんだーなんていう感じで楽しそうだ。

 

 岩塩は、いい。なんか岩塩に囓られた痕跡があって若干思うところもないではないがまあ、いい。別にあっても不思議じゃあない。

 わさびもまあ、いい。なんでここにわさびがあるのかって気にはなるしコレもやはり一つ囓られたものがあるのが気になるが自生してても不思議じゃないだろう。

 問題はこの黒っぽい液体の溜まった池だ。

 いや黒く見えるが少し掬ってみると濃い赤茶色している。

 試しに少し舐めてみたが……タレだ。

 タレの池なのである。

 わけがわからない。

 

 ここまでくると一つの答えが得られる気がする。

 そう、ハイオークの肉の味である。

 

 あいつ岩塩食べてわさび食べてこのタレを飲んだんじゃ無かろうか。

 それがファンタジーな行程を経て肉の味になったと……

 じゃあなんでブロック毎に味がハッキリ分かれてたんだろうッて思ったが切り分けてくれたのは他でもないサクラである。

 神狼から神になったサクラなのだ。

 神になって以降サクラは結構味に拘るようになってたし、獣の勘と神の勘が合わさって肉の味の境目を見抜いていたとしてもなんら不思議なことではないかもしれない。

 そもそも味が分かれるってどうなんだって思ったりするがそこはもうファンタジーだからって投げてしまおう。

 そんなこと考えてると頭がおかしくなりそうだ。

 

 これ以上俺を混乱させないでください。


 あるんだから仕方ないよねってことで岩塩を10cmブロックで一個確保。

 わさびはパスしとこう。おろせないし。タレは容器に入れて密封しておく。

 

 まあこれで食事については希望が出てきたな。


 








 その後、さらに辺りを散策すれば人参やら大根やらがじゃがいもやらが自生していてその付近には味噌スープ、つまりは味噌汁の池(具無し)もあった。

 思わず、味噌汁を鍋に入れて温め人参、大根、じゃがいもに残っていたハイオークの肉を入れて豚汁を作ってしまったのは仕方のないことだと思う。

飯食っただけ。

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