先読み悪役令嬢
「クラウディア、君との婚約は破棄する」
学園のサロンで、大声で宣言する王太子。
その場にいた生徒たちがざわめきながら注目する。
公爵令嬢である私は、名指しで宣言されたので、どう答えるか考えた。
(破棄ということは私に瑕疵があるということだと思うけれど、
何も思いあたることがない、ということは冤罪を着せようとしている)
(でも殿下も隣にいる男爵令嬢もバカだから、たぶんよくある
悪役令嬢もののお話のように、男爵令嬢をいじめただの池に落としただの
ないことないこと言って、王太子妃にふさわしくないとかなんとか
言うつもりなんだろう、バカだから)
(しかし幸いなことに、父も兄もそこまでバカではないので、
バカが考える冤罪などすぐに晴らしてくれるに違いない)
(でもこの場には父も兄もいないし、殿下の後ろにはとりまきが
並んでるし、バカの味方で固めた中でとっとと断罪して国外追放して、
陛下には事後報告でごまかす気だろう。後先考えないバカだから)
(今から冤罪を読み上げられて断罪されて追放されるのか。
冤罪が晴れるまで待つの面倒だなあ。断罪だのとりまきの証言だの
バカの茶番につきあうのも苦痛だから、とっとと婚約破棄を
承諾しちゃおうかなあ)
(でもそうすると私が慰謝料を払うことになるかもしれないから、
ちゃんと『王太子と男爵令嬢ととりまきが冤罪をかぶせて、王命の
婚約を破棄した上で公爵令嬢を勝手に追放した』って事実が
ないとまずいわよねえ。そんでバカたちを一掃してもらわないと…)
(よく見たらとりまきって宰相の息子とか公爵令息とか騎士団長の
息子とか…なにこれ国の重鎮ジュニアがこんなバカなの?)
(もうこの国に未来はないから隣国にでも…でも隣国の第2王子も
とりまきにまざってるわ~~。隣国もバカっぽいわ~~)
(そうなると革命起こして国をのっとるほうがいいのかな…
でもバカ相手だから逆恨みとかバカなことしそうで怖いなあ。いっそ…)
ここまでを30秒ほどで考えた私は、
「わかりました。では我が領は独立国家になりますね」と言うと
「なぜ破棄かというと…って独立???なんでそうなる!??」
嬉々として断罪しようとしていたバカがあわてふためく。
「そう言うと思って貴族からの承認を受けてきたよ妹よ」
いつのまにか兄が来ていた。
「男爵令嬢に踊らされて公爵令嬢に冤罪をかぶせ、王命の婚約を
自分有利で破棄しようとする愚行、さらに国の重鎮たちの令息が
そんな浅はかな愚行を手伝おうとしている。学園に忍ばせた影が
そんな情報をキャッチしたので、すでに我が公爵家はこの国を見限った。
さあ行こう妹よ」
「さすがですわお兄様」
「えっちょっと待ってどういうこと?」
「断罪! 断罪の時間は?」
「愚行ってひどくない?!」
「俺たち偉いはずだよな?」
「えんざいってなに? どういう意味?」
バカが混乱して騒いでる中、私は兄にエスコートされ、
静かにサロンを出て行った。




