07
「……飴ねぇ。」
凱斗はキョウから受け取った、瓶の中に入っている飴を見つめた。
「カラフルで少し小さいサイズ。……飴?」
凱斗は目を大きく見開くと、急いで子供達の所へと向かう。
運動場に出てきた子供を見つけると、凱斗は子供の肩を掴んだ。
「いっ…」
「飴を持ってるんだよな?どこにある?見せてくれ。」
「えっ……あっ……。」
肩を掴まれた子供が指を指す方向には、別の子供達がいて、全員があの瓶に入っていた飴と同じ物を持っていた。
「食うんじゃない!!!」
凱斗が大きな声で叫ぶと、飴を口に入れようとしていた子供達が飴を落とし、泣き始めた。
「か、会長!どうしたんですか?!」
突然大声を出した凱斗に龍の者達が慌てて駆け寄る。
「この飴はどこで手に入れた?誰かから貰ったのか?!」
凱斗に肩を掴まれた子供は、恐怖で声が出なかった。
「……ごめん、怖かったし痛かったよな。ごめん……でも、教えてくれ。この飴はどうやって手に入れた?」
凱斗は子供からゆっくり手を離し、優しく抱きしめながら再び質問をする。
子供は泣くのを我慢しながらゆっくりと口を開く。
「知らない人……みんなもらってたんだ。」
「みんな?」
「うん……友達みんなもらってたんだ。」
「それは誰から貰ったんだ?」
「飴売りの人。お金はいらないから、美味しいキャンディーを食べてみんなで楽しく過ごしてね。って。」
「飴売り……この街に住んでいる人……とかって分からないよな。」
「ぅん……ごめ……なさい……。」
「いや、謝らなくていい。有難う。助かったよ。……でもあの飴は危険だから食べちゃいけない。他にお菓子をあげるから、龍の人にもらってそれを食べて待ってて。……みんなもいいね?」
子供達は涙を拭いながら頷いた。
凱斗は陽平を呼び耳打ちすると、陽平は頷き子供達を連れて龍の車へと向かう。
「凱斗さん、どうしたんです?」
子供達が去った後、凱斗の隣に桜庭が並んだ。
「あの飴は大橋が作ったものだ。……アイツは食べ物に含ませるのが好きなのか?……キョウが教えてくれなけりゃあのまま子供達が飴を食べていても何とも思わなかっただろう。そしてまた後悔することになったんだ。……本当に腹が立つな。」
「あの飴を大橋さんが……。それに聞こえた話だとそれを持ってきた人物がいる……大橋さんはキョウさんの所に居たので他の協力者がいるという事ですね。……にしてもまたどうして子供を?」
「大人にも渡している。キョウの所の人間にも渡していたようだ。その者達が避難後感染が発覚、そして今に至る。」
「老若男女問わず……って事ですか。もしかするとこの場所だけじゃなく他の場所でも……。」
「その可能性はある。ただ範囲が分からないとどうしようも無い。だから、全国民に検査義務を果たしてもらう。」
「国に頼むのですね。分かりました、私から連絡を入れます。」
「あぁ、頼むよ。俺はコレの成分を詳しく調べてもらう。それと、大橋にもちゃんと聞かないとなぁ?」
「はは……凱斗さん、その顔絶対に子供達に見せないでくださいよ。泣きますよ。」
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翌日。
テレビ、ラジオ、新聞、SNSは検査の話題でもちきりとなった。
学生は学校で、社会人は職場で、その他の者は自宅または近くの施設で検査を受ける事が義務付けられた。
検査費用は全て無料であり、問診を含め一人辺り約五分程で検査が終わった。
検査から十五分ほどで検査結果が出る。
陰性だった者はその場で帰ることが出来、陽性だった者は研究者が在籍する病院へと運ばれる。
素直に従わない者はその場で拘束され、総龍会屋敷へと連れて行かれる。
そして全国民には、カラフルなキャンディは絶対に食べない事。と伝えられた。
もし誰かから渡された場合はすぐに警察へ届け出ること。
もし道で拾ったらそれも警察へ持っていく事。
知らずに食べてしまった場合はすぐに研究者へ連絡を入れる事。
小さな子供や御老人から目を離さない事。
この問題を解決するには全国民の力が必要だという事。
ある地域で食屍鬼が復活したという事。
朝から夜までこの内容がテレビで放送され続け、夜には総龍会の記者会見が行われた。
「食屍鬼問題は約三年前に終止符を打ったと伺いましたが、どのようにして復活したのでしょうか?」
数十人の記者が集まる会場。
明るいライトに照らされながら、マイクを手に持つ凱斗。
「食屍鬼の研究者が復活させました。」
凱斗の発言に会場がザワついた。
「その研究者はどうしてそんな事を?」
「総龍会はその研究者を捕まえたんですか?」
「今回の全国民一斉検査に関わっている研究者とその研究者に関わりはあるのですか?」
数人の記者が一斉に話し始める。
「ご質問はお一人ずつ順番にお願い致します。守られない場合は申し訳ございませんが退場して頂きます。」
司会者の言葉を聞き記者を口を閉ざす。
「……研究者は今総龍会屋敷にいます。研究者の考えは未だに不明。これから尋問に入ります。……検査に関わる研究者とこの研究者には関わりはありません。ご安心ください。」
凱斗はゆっくりとマイクをテーブルの上に置いた。
その後約一時間半の間質疑応答が繰り返され、凱斗は全ての質問に対し真摯に向き合った。
質疑応答が終わり、凱斗を始め各龍の隊長全てがカメラへ向け深く頭を下げた。
放送後、メディアは再び総龍会の話題で持ち切りとなった。
屋敷へと向かい走る車の中で凱斗は一つ、二つと大きく欠伸をした。
運転する桜庭に寝ていても良いと言われるが、凱斗はそれを断り煙草を一本取り出し火をつける。
「早く終わらせねぇとな……。」
凱斗は白い煙を吐き出した。




