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食屍鬼 -蜘蛛の糸-  作者: 藤岡
リーヴ地区
93/123

05

保育園周りでは龍対食屍鬼の戦いが繰り広げられていた。

各龍が外側から内側へと追い込んだ結果、保育園周りに食屍鬼が集まり、食屍鬼の逃げ場は無くなった。

だが、食屍鬼は龍に見向きもせずずっと保育園への侵入を試みていた。

「どうして俺達に向かってこない?」

凱斗は不思議に思いながらも食屍鬼の首を目掛けて剣を振った。

ゴロリと転がる首の数は増え、悪臭が漂う。

数が減ってきたのを確認し、凱斗は上級層に転がる食屍鬼の後始末を任せた。

上級層達は息が上がった状態で食屍鬼を一箇所へと集める。

凱斗、隊長、幹部で残りの食屍鬼に向かうが、それでもこちらに一切興味を示さない食屍鬼に対し、凱斗を含む隊長と幹部達も疑問に思う。

「会長、なんだか様子がおかしくないですか?」

羽鳥が凱斗の隣に立ち声をかけると、凱斗は頷く。

「此方に興味が無いとなれば都合は良いし助かるが……この保育園に食屍鬼の気を引く何かがあるのか?」

「避難者の中にって事ですか?」

「避難者の中またはこの施設自体に何かが……?」

凱斗と羽鳥はそんな事を話しながらも、保育園に入り込もうとする食屍鬼の首を狙う。

そして、あと数体で終わる……そんな時、保育園の中から小さな影が飛び出したと思えば、門前に居た食屍鬼が目を大きくしてより大きな声を上げ騒ぎ出す。

「なんだ?!」

突如興奮し出した食屍鬼に龍の隊長達が驚く。

龍の目に映ったのは、保育園運動場に一人佇む小さな子。

その子は今にも泣き出しそうな顔をしていた。

「あの子に反応……したのか?」

凱斗は今にも門を飛び越えそうな食屍鬼目掛けて高く飛び上がると、力いっぱい剣を振り下ろした。

「アアァアアアアアアアッッッ!!!!!!」

耳が痛くなる程の叫び声を上げながら宙を舞う食屍鬼の顔が、凱斗の事を睨み付ける。

それは、楽しみにしていた豪華な食事を横取りされ、怒りに満ちた者の目だった。

凱斗は地をコロコロと転がる首を横目に門を飛び越えた。

そして、運動場で座り込んでしまった子供の元へと行くと、その場にしゃがみこみ子供を強く優しく抱きしめた。

「来るのが遅くなってごめん。もう大丈夫だ。」

優しい声を聞いた子供は凱斗にしがみつき声を上げて泣き始めた。

凱斗は子供を優しく抱きしめたまま立ち上がり、龍が中に入ってくるのを待った。

「……大人もいたのか。」

一室の窓から外を見つめる大人達と目が合った凱斗は、息を切らしながら走ってきた桜庭に子供を預けその部屋へと向かう。

「会長?!どこへ?!」

急に渡された子供に戸惑いながら桜庭が叫ぶ。

「生存者がいる。そいつらを外に出す。……総龍も来てくれ。」

「はっ」

総龍幹部が凱斗の後ろに続き、保育園内へと姿を消した。

「まったく……。怪我はしていませんか?」

桜庭は自分の腕の中で泣く子供に優しく問いかける。

「ゔん……だいじょぶ……。」

子供はグスグスと鼻を啜りながら答えた。


「……ここだな。」

凱斗は大人達がいた部屋の前に到着し、ドアをノックした。

「総龍会会長の燈龍と申します。安全圏への移動を願います。」

凱斗が声を掛けると勢いよくドアが開き、凱斗は一人の男に胸ぐらを掴まれた。

「お前が!お前がちゃんとしないから!俺達がこんな目に遭うんだろーが!!きっちり詫びろ!!!」

男は凱斗に怒鳴りつけた後、後悔をした。

男を見る凱斗の目は酷く冷たく、息が止まりそうになる。

「……安全圏への移動を願います。」

「……。」

男はゴクリと喉を鳴らし、ゆっくりと凱斗から手を離すと目を逸らした。

「そ、外は安全なのでしょうか?」

一人の女性の問い掛けに凱斗は頷いた。

「見える範囲内の食屍鬼は討伐済み。仮にまだ残っていたとしても俺達が一緒に移動するので大丈夫です。安心してください。」

女性はホッとした表情を見せると、ゆっくりと部屋から出た。

「……ここにいる人たちで全員ですか?それとも他の部屋にもいますか?」

凱斗は部屋の中をのぞき込みながら近くにいた男性に聞いた。

「分からない。俺も慌ててここに駆け込んで……他の人は見ていない。」

「そうですか。……あなたはこの保育園の先生ですか?」

子供達と隅で座る女性に尋ねる。

「はい。そうです……。」

「園児は……ここに居る子達で全員ですか?部屋数に比べて人数が大分少ないように感じますが。」

「違います。他の子達は他の先生と一緒に外に避難しました。私はこの子達の担任で、逃げる前に保育園前に化け物がいるのを見かけこの部屋で待機しました。」

「なるほど。では、あの運動場まで走ってきた子も貴女の生徒さん?」

「そうです。」

「どうしてあの子だけが外に?」

「突然飛び出して行ったんです。これをあげればお腹が膨れて大人しくなるかも、と言って……。」

「お菓子か何かを持っていたんですか?」

「はい、飴を持っていました。」

「なるほど。……たまたま俺達がすぐそこに居て、たまたまアイツらを殺れたからよかったが、俺達が来る前にそんな事をしていればきっとあの子だけじゃなくここにいる全員が喰われていた。……ま、もう終わった事だしとやかく言うつもりもないけど、大人が守ってやらなきゃいけねーよ。」

凱斗は子供達においでと手招きし、子供達を二列に並ばせるとそのまま桜庭達がいる場所へと向かい歩き始めた。

その後ろを子供達が少し戸惑いながらもついて行き、最後尾には担任がついて行った。

「僕達も行きましょうか。」

羽鳥は中の人たちに声をかけ、凱斗達に続いた。


桜庭達は保育園内に居た人達を囲むようにしてリーヴ地区入口を目指した。

途中まで迎えに来た龍のワゴン車数台に分けて乗り込み、入口まであっという間に到着した。

「アニキィー!!!」

凱斗が車から降りると、陽平が走って凱斗の元へ向かってきた。

「うるさい。」

「だって!」

凱斗は陽平が指を指す方を見る。

「あぁ、そういや来てるって言ってたな。」

「忘れてたの?!」

「……。」

凱斗は陽平の肩をポンと叩くと、自車にもたれながら手を振るキョウの元へと向かった。

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