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食屍鬼 -蜘蛛の糸-  作者: 藤岡
キョウ
88/123

04

集められた隊員達は凱斗が来るのを静かに待った。

その中に輝血達も居た。

「聞いたかよ?」

「ああ、やっぱり大橋はすぐに殺しとくべきだったんだ。」

「会長は何を考えているんだ?」

「でも仕方ないだろ、当時の会長はまだ未熟で失う者が多すぎた。」

「でもその結果がこれじゃあなぁ……。」

隊員達がヒソヒソと話しているのを輝血達は黙って聞いていた。

「そうだな、あの時殺しておくべきだったな。本当にそう思うよ。」

話していた隊員達は背筋が凍る。

「ごめんな、未熟で。」

隊員達はポンと肩を叩かれ顔が青ざめた。

「会長、失礼しました!」

隊員の一人が凱斗に頭を下げると、凱斗はニコリと笑った。

その笑顔を見た隊員は声を失う。

あの当時よく見た笑顔だった。

全てを食屍鬼相手に費やしていた頃の、黒龍隊長時代の凱斗がそこに居た。

凱斗が隊員達の前に立つと羽鳥がマイクを渡す。

「今の状況はもう知っていると思うから詳しくは話さない。総龍からは俺と幹部が、各龍からは隊長と幹部と上級層と治療班から一部の人間が向かうから、残った隊員達は普段通り各地区の見回り、協力要請の対応を頼む。」

凱斗は話終えるとマイクを羽鳥に渡し扉へと向かう。

マイクを受け取った羽鳥はそれを隊員に渡すと凱斗に続いた。

他の幹部達も扉へと向かい歩き出す。

残された隊員達はそれを見送った。

「俺達は残る……側だよね?」

懍が輝血に問いかけた。

「そうだろうな。……何があったんだ?」

「なんだろうね?」

輝血達は今何がおこっているのか把握していないようだった。

「食屍鬼が出たんだよ。」

コソコソと話す輝血達の前にいた隊員が呆れた顔をして話した。

「森が全焼し、そこに残った者は誰一人として見つからなかった。近辺地区は前もって調査されていて問題は無かった。終わったと思っていた。……が、あの街から避難した人間が集められた地区で一気に食屍鬼が現れたって話だ。」

「それって……あの街の人が食屍鬼だったって事?」

懍の問いかけに隊員は頷く。

「そう考えた方が良さそうだな。俺達龍が食屍鬼を放ったって騒いでいる市民達もいるらしいし、これで全滅させられなければきっと会長は国から呼び出しをされるだろう。」

「国からの呼び出しって……会長はどうなっちゃうの?」

「俺にも分からない。ただ年に一度か二度会長は国のお偉いさん達が集まる場所に顔を出しているって聞いた事があるから、酷い目に遭うとかそういうことでは無いと思うけど。」

「そっか……残された俺達はとりあえず総龍地区を見回っていればいいんだね?」

「そう。俺達に出来ることは普段通りの活動。余計な事をせずに大人しく会長達の帰りを待っていればいいんだよ。……分かったな?輝血」

隊員と目が合った輝血は頷いた。

「って言ってもお前達は屋敷内待機だろうけど。まだ総龍地区での活動もした事がないし、そもそも輝血のその足じゃ何も出来ないだろ。」

隊員はそう言うと輝血と懍の肩をポンと叩き扉へと向かって行った。

「そうだよね。俺達が一番何も出来ないんだ。」

「俺のせいなのに何も出来ないのが悔しいよ。」

「かーくんだけのせいじゃないでしょ。……一回部屋に戻ろう?」

「……うん。」

輝血は懍に支えられながら歩いた。

あの街の人間が食屍鬼に……キョウさんは大丈夫なのだろうか?もしかしてキョウさんも今頃……?

輝血の頭の中はキョウの事でいっぱいになっていた。

どうしてなのかは、輝血にも分からなかった。

──────────────

「黒龍が一足先に向かっていると連絡がありました。」

車を運転しながら話す羽鳥。

後部座席で外を眺めていた凱斗は「分かった。」とだけ返事をして、そのまま外を眺め続けた。

助手席に座る幹部の一人は各龍と連絡を取り情報を集めていた。

凱斗は街中で、車に向かい指を指す住民を見かけ溜め息を漏らす。

「どうしてこの短時間で一般人にまで広がっているんだ?」

「はい。今回の件につきましては、これから向かう先、食屍鬼が発生した街に住む親戚から助けを求める連絡があったと言う通報で発覚しました。」

「向こうの警察からじゃないのか?」

「はい。警察から連絡もありましたがその前に……なので、恐らく向こうの状況は最悪だと思われます。」

「食屍鬼と判断するのが遅れたか、それとも警察内で連絡が回る前に殺られ遅れたか……どちらにせよ急がないといけないな。羽鳥、もうここからでいい。サイレンを鳴らせ。」

「承知しました。……到着予定時刻は今から約二時間後です。」

総龍地区にサイレン音が鳴り響く。

龍が乗る車から発せられるサイレンは救急車や消防車、パトカーと同様に緊急事態を表し、市民は必ず道を開けなければならない。

そして、龍のサイレンが鳴った時はどんな状況であろうと市民は全て建物内待機となる。

これは各龍地区で食屍鬼が発生した際に新たに追加された法律である。

──────────────

「あ?強制避難だァ?」

「はい。どうやらうちの者達の中から食屍鬼が現れたようで……。」

「で、俺達にも避難しろってか?どこにだよ?」

「それが……龍の地区に向かうようにと。その前に検査は必須らしいですが。どうしますか?」

「検査って……そもそもどうして食屍鬼になったのか教えてくれねェとなァ?」

「それはまだ解明されていないようです。龍が到着次第警察と捜査、討伐が行われるようですが。」

「そうかい。……赤城ィ。」

「はい。」

「その食屍鬼になっちまった奴らが誰か分かるかい?」

「全てでは無いですが一部なら……。」

「大橋に飯を運んでた奴らじゃないのかい?」

「よく分かりましたね。ただ、そうじゃない人間もなっているので……。」

「はっは、赤城ィこれを見ろ。」

キョウはポケットから瓶を取り出し赤城に見せる。

「それは?」

「大橋を匿っていた部屋に置いてあった飴だよ。この飴を美味そうに食ってる奴を見かけた事があった。俺じゃない他のやつから薬を買ってそれを堂々とこの街で食うなんて俺に喧嘩売ってんのかァ?と思っていたが……大橋から渡されていたとは思わなかったなァ。」

「これを大橋が作ったと?」

「そうだろうよ。俺には難しくてよく分からなかったが、散らばっていた紙に色々と書いてあった。凱斗に連絡して取りに来てもらおうと思ってたが遅かったかァ。」

キョウは瓶をポケットへとしまう。

「さァて、赤城ィ……行こうかァ。」

「はい。」

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