08
「はっはっ、はぁーあ、お客さん本気かい?はっはっ、そりゃすげェや。漢だねェ。」
「そ、そんなに笑わなくても……。」
「悪い悪い。いやぁでもよくもまぁあんな火の海に飛び込めるねェ。で、その少女ってのは俺が殺ったアイツかい?」
「多分……そうだと思います……。」
「あら。じゃあ俺が殺っちゃって怒ってるんじゃないかい?」
「いえいえ!助けて頂きありがとうございます。それに、アレは俺が思っていた人では無かったです。知らない人でした。」
「そうかい。残念というか良かったというか。ま、医者を呼んでるから足も手の指も診てもらって帰んなァ。仲間達が心配してるだろうよ。」
輝血は下を向き口を閉じた。
「どうしたんだい?痛むかい?」
「いえ……あの……なんていうか俺駄目だなぁって……。」
「駄目、ねェ……。」
「俺はまた一人で行動して仲間達に心配かけて…何も学んでいないというか……。あの時食われて死んだ方が良かったのかも……。」
「それは違うと思うよ。お客さんがやった事はそりゃァ褒められたもんじゃないと思うがね、生きて帰った方がみんな叱りはするけど喜ぶだろうよ。仲間が死んで嬉しい奴なんていないからねェ。」
「失礼致します。」
キョウが話終えるとドアが開き白衣を着た男が入ってきた。
「おぉ、悪いねェ。ちょっとこの子診てやってくれ。」
白衣を着た男は輝血の足と指を見ると手に持つ鞄を床に置き広げる。
消毒や包帯に糸や針を取り出す。
「ここに横になって。少し痛むかもしれませんが我慢してください。」と輝血を簡易ベッドの上に寝かすと最後に取りだした注射器を輝血の腕にプスリと刺す。
横になる輝血の隣に椅子を運んできて座ると医者が治療している箇所をジッと見つめるキョウ。
キョウの後ろには赤城が立っており輝血の緊張度が高まる。
麻酔をされた輝血は痛みを感じなくなると急に眠気を感じ始めた。
ウトウトとしている輝血に気付いたキョウは目を細めて微笑んだ。
「少し休みなァ。」
頭をポンポンと叩くその手と微笑む目は優しさに溢れているように感じた。
輝血はそのままゆっくりと目を閉じた。
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「助けて」
「助けて」
「助けて」
「助けて」
真っ白な空間に一人佇む輝血に聞こえる声。
「助けて」
「痛い」
「怖い」
「助けて」
輝血はその場にしゃがみこみ耳を塞いだ。
「助けて」
「助けて」
「痛いよ」
「怖いよ」
「どこにいるの?」
「どこ?」
「どこにいるの?」
「幸輝……依睦……。」
ごめん
「どこ?」
ごめん
「怖いよ」
ごめん
「痛い痛い痛い」
ごめん
「………」
ごめんなさい
「………」
ごめん……ごめん……本当に……ごめんなさい。
「………なーんてね」
……え?
「大丈夫だよ。」
大丈夫って……だってあの時……
「大丈夫だから。」
でも……
「私達はみんなね、依睦が生きてくれていて嬉しいよ。」
……。
「幸輝だって喜んでいるよ」
……でも俺は……救えたはずの幸輝まで……
「大丈夫、大丈夫だよ。」
……………。
「私達が高い高い所から依睦を見守っているから、依睦は今一緒にいる家族を守ってあげてね。」
家族を……でも俺は……
「……………………」
……………………。
「依睦は良い子だし強いよ。大丈夫だ。」
っ……!!幸輝…?
「ははっ、何を泣いているんだ?みんな心配しているぞ。」
幸輝……幸輝……!ごめんなさい。あの時俺、ごめんっ、ごめんなさい……。
「いいんだよ。お前が生きててくれて俺は嬉しい。だからもう泣くな。なっ?」
だって、だってあの時俺……アイツにさえ頼まなければ!俺が助けを求めてたら!そしたら幸輝はっ!!!
「……依睦。あの時こうしていればっていうのは人間みんな思うんだよ。こうしていればもっと良い方向に向かっていたとか、ああしていれば上手くいっていたって。人はそうして成長していくんだ。」
でも俺は何も成長していない。
俺は……あの日から俺はもっともっともっと駄目な人間になってしまった。
「はは、そうだな。褒めは出来ないな。でもな依睦、お前の行動のおかげで奪われた命の数も多いが、救われた命もあったことを忘れるな。」
救われ……た……?
「家族の命だよ。やり方は悪かったけど幼い子を救い出せただろう。」
でも俺は沢山の人の人生を奪ったんだ……
「ああ。それは反省しなさい。毎日空に向けてでいい、相手を思い心から謝りなさい。決して許されるようなことでは無いけれど、思いはきちんと伝えなさい。」
……うん。分かったよ。
「良い子だな、依睦。」
幸輝……
「ん?」
俺はこれからどうしたらいいんだろう?
「……どうしたら、か。」
やりたい事も、どうすべきなのかも、何もかも分からないんだ。
「まずは今すべき事を見つけ出しそれをやり遂げてみよう。依睦が今すべきことはなんだ?」
……食屍鬼の討伐……?
「じゃあそれに集中しよう。その後のことは終わってから考えればいい。それに今の依睦の傍には頼れるお兄さんがいるだろう。頼ればいいんだよ。きっと導いてくれるから。」
頼れるお兄さん……会長の事?それとも……。
「……依睦、俺は……俺たちはいつでも何があっても依睦の味方だ。」
幸輝
「お前がこの先どんな道を歩みどんな事をしようと、お前の味方だ。忘れるな。」
幸輝!
「……愛してるよ、依睦。」
幸輝!待って!
「…………………」
幸輝!!みんな!!!
……俺を、置いていかないで。




