05
「輝血と懍はお父さんから何も聞いてなかったの?」
「聞いてないよ。ね、かーくん。」
「うん。糸を張り巡らせたってのは龍への復讐準備が出来たって捉えられるけど今の所大橋っていう研究者がいないと詳しいことは分からないし、龍もそれを知る為に大橋が必要っぽい。だから俺達だけが大橋に接近する事は出来ないし、俺達が真実を知る前に大橋が殺される可能性もある。」
「で、あんた達二人は龍の言いなりになったわけ?」
「償いの為だよ。かーくんだってそうだよ。ね?」
「……うん。」
「ふーん。あんた達の事だから上手いこと裏で動いてるのかと思ってたけど違ったって事ね。」
「俺たちがいるのは総龍屋敷で会長が身近にいるのにそんな事出来るわけないだろ。それにかーくんは会長に気に入られてるから少しでも変なことしたらすぐにバレるよ。」
「私は諦めてないわよ。」
アザミの発言に輝血と懍の目が大きくなる。
「私はやっぱり育ててくれたお父さんが大事だもの。それに龍に良い感情は今も持っていないし、お世話になっている青龍と赤龍には少し罪悪感は湧くけど会長とか黒龍白龍にはなんの思い入れもなければ憎しみしか無いのよ。私はいつか龍を潰す覚悟をしてるわ。」
「私も私も~!」
輝血と懍は目を合わせた。
「そりゃあね、会長が身近にいる輝血と懍の考えが変わっても仕方ないとは思うわよ。でもお父さんと最期の時を過ごしたのは貴方達二人でしょ。私達より龍を憎しんでいると思っていたわ。」
「そりゃあの時は殺してやろうと思ったよ!でもその後、家族が食屍鬼になった。そんなアイツ達に何も出来ない俺達の代わりに楽にしてくれたのも会長だ。感謝する気持ちもあるよ。」
アザミと香はあまり納得がいっていない表情をする。
「元はと言えば龍が家族を連れて行かなければ輝血達が食屍鬼の復活を願うこともなかったわけでしょう?」
「そうだけど。」
「家族を楽にしてくれたって、そもそも家族が食屍鬼になるキッカケを作ったのは龍じゃない?」
「うーん。」
「まっ、輝血達がこれから先も龍と仲良くしようが私にはどうでもいいわ。いつか私達は敵になるかもしれないわね、輝血、懍。」
「敵って……アザミ本気でまだ潰そうと思っているのかよ。」
「そうよ。冗談で言うわけないでしょ。」
アザミと香は立ち上がり輝血と懍に背を向けた。
「二人が敵になったらその時はもう家族じゃない。私達の敵として扱うからよろしくね。まっ、今はまだ動かないしこの食屍鬼討伐ってのも協力はするけれど。」
アザミと香は青龍赤龍が集まる場所へと向かって歩き出し、輝血と懍は再び目を合わせため息をついた。
「アザミ達はああ言ってたけど本気っぽかったね。」
「うん。本気だろうな。でもどうするつもりなんだ?」
「協力者がいるんじゃない?」
「協力者……龍の中にって事か?」
「分からないけど……。糸を張り巡らせたって意味はそうとも捉えられる…?」
輝血と懍は頭を抱える。
考えても考えても、コレだという答えが見つからなかった。
二人が考え唸っていると招集がかかり、全員が湖中央へと集まり膝をついた。
「これから一斉見回りに出る。食屍鬼は見つけ次第その場で殺せ。大橋がいた場合は殺さず捕獲、この場に連れてくるように。怪我をしたものはここで治療を受けること。食屍鬼からの攻撃での怪我の場合は必ず申告してくれ。感染しているか研究者が判断してくれる。」
凱斗が話終えると桜庭が班分けと見回る場所を発表した。
発表された班から順に見回りへと向かう。
輝血と懍達は羽鳥と共に見回りへと向かった。
青龍赤龍の方を見ると、アザミと香が手を振っていたので輝血達も振り返した。
輝血と懍は食屍鬼に集中すべく一旦食屍鬼討伐以外のことを考えるのをやめた。
一分がとてつもなく長く感じる。
一時間が一日に感じる程に長い長い夜を過ごした。
見回り中に他の部隊と会う事もあった。
お互いの情報を提供し合いたかったが、輝血達も別部隊も特にこれといった収穫は無かった。
日が昇り始める。
全員湖に集合と連絡が入った為、輝血達は別部隊と共に一度湖へと戻る事にした。
輝血達が湖に戻ると湖の近くで隊員達が騒いでいた。
「騒がしいな。何かあったのか?」
羽鳥と別部隊が騒ぐ隊員達に近付き、その後ろを輝血達が追った。
「どうしたんだ?」
羽鳥が近くにいた隊員に声を掛ける。
「羽鳥さん、お疲れ様です。見回り中に怪我をした隊員がいまして……動物に噛まれたと言っているのですが、別部隊が食屍鬼じゃないのか?と疑い騒ぎ立て、噛まれた隊員と共にいた隊員達と口論を始めてしまいまして……。」
「そういう事か。噛まれた隊員は?」
「はい、研究者と医療チームと共に向こうの簡易テント内で検査と治療をしています。」
「わかった。ありがとう。……お前達そこまで!あまり騒ぐな。」
羽鳥が声をかけると騒いでいた隊員達が口を閉じ敬礼をした。
「へぇー、羽鳥さんってちゃんと幹部なんだね。」
懍は感心したように言うと、懍の言葉が羽鳥の耳に届いたのかこちらに振り向き睨まれた。
暫くすると凱斗が姿を現し隊員達に緊張が走る。
「怪我人が出たんだって?」
気怠そうに歩きながら問いかける凱斗は少し機嫌が悪そうだった。
「はい。今治療をしています。」
怪我をした隊員と同部隊の一人が報告をすると、凱斗は真っ直ぐテントを目指す。
凱斗が外から声を掛け少しして中から白衣を着た女性が出てきた。
凱斗と白衣を着た女性が話している最中隊員達は誰一人と言葉を発さなかった。
話し終えた凱斗はテント内に声を掛けこちらに戻ってくる。
「怪我をして直ぐに戻ると判断したお陰で治療が間に合った。お前達は仲間を救った。」
噛まれた隊員と同部隊の隊員達にそう言うと凱斗は桜庭の隣へ行きまた話し始める。
「どういう意味だ?」
「命に関わるほどの大怪我だったか?」
「足を掠った程度じゃないのか?」
隊員達がザワつきだす。
その光景を見ていた輝血の心臓が大きく跳ねる。
でも、理由は分からなかった。
輝血は胸を押さえて深呼吸をした。
何か悪い予感がする。
心臓が跳ね続ける。
不快感に襲われる。
息苦しい。




