04
「あの……。」
輝血は二人になり黙ったままでいる女性に声をかける。
「えーと……話って?」
女性は黙ったまま輝血を見つめると涙を浮かべる。
「え?!どうして?!どこか痛いんですか?」
慌てふためく輝血を見てクスリと笑う女性。
「久しぶりだね、よりちー。」
輝血の心臓が大きく跳ねた。
「え……?」
輝血は女性の隊服を見る。
胸元には青龍と刺繍が入っていた。
「私が誰だか分かる?」
「施設の……?」
「そう。桃香だよ。顔見ても分からなかった?」
「うん……なんだか大人っぽくなってて……。」
輝血の心臓は大きく音を立てる。
「ははっ、それは褒めてるってことでいいの?よりちーも凄い変わったけど……あの時と同じ優しい目のままだね。」
「優しくなんてないよ。」
「またまたぁ。よりちーは誰よりも優しいよ。」
「俺は……優しくなんてないんだ……。」
桃香は輝血の頭を撫でる。
「よしよし。いい子だね。」
「ちょっ、やめろよ!」
輝血は桃香の手を払い除け後ろに一歩下がった。
「なぁに?よりちー照れてるの?」
桃香がイタズラに笑う。
「ねえ、よりちー。私ね、よりちーが生きてくれてて嬉しかったんだよ。」
「俺も……最近会長から生きてる人がいるって聞いて嬉しかった。……けど、ごめん。助けられなくて。」
「ううん。謝ることなんてないよ。助けられなかったのは私も同じだし。」
「俺は……俺は光輝の事も助けられなかったし。」
「……仕方ないよ、私達は子供だったし力も無かった。だからせめてあの子達の分まで生きなきゃって思うよ。」
輝血は下を向き黙ってしまった。
「よりちー。私ね、あの日のあの時間たまたまトイレに行ってたの。そしたらすごい叫び声がしてね、慌てて外に出たんだけど、トイレ前の廊下でね……一人の子が捕まってね……その場でアイツに……うっ……。」
桃香は涙を流し言葉を詰まらせる。
「無理に話さなくていいよ。何となく分かったから。大丈夫だよ。」
輝血はそっと桃香を引き寄せた。
「ごめん、ごめんねよりちー。ごめん。私がすぐに誰かに助けを求めていたらもっと生きてる人がいたかもしれないっ。でも私怖くて……その場で声を押し殺すのが精一杯で……本当にごめんなさい……。」
「謝らないで。何も悪くないから。悪いのはあの化け物だから。大丈夫だから。」
桃香は輝血の腕の中でずっと我慢していた思いを吐き出した。
「あの時私を一番最初に見つけて助け出してくれたのが会長なの。」
少し落ち着きを取り戻した桃香の言葉に輝血は頷く。
「パニックになって叫んだ私をね、今のよりちーみたいに会長が抱きしめて落ち着かせてくれたの。」
「そっか。それでそのまま龍に入ったの?」
「すぐにじゃないけどね。青龍の人達の所で身の回りの世話をしてもらっていくうちに恩返ししたいなと思ってそのまま青龍に入らせてくださいってお願いしたの。……あの時よりちーが高校に行かずに施設で働きたいって言ってた気持ちが分かった気がしたよ。」
「……そっか。」
「今では私も青龍の一員だから、龍の仲間としてこれからもよろしくね。」
桃香は輝血から離れると笑顔を見せる。
「青龍の……上級層なのか?」
「え?ううん、違うよ!私は戦闘能力が無いから治療班。青龍と赤龍は女性が多いから治療とかサポートが多いの。やっぱり食屍鬼相手になると戦闘能力は必須になってくるし……。」
「そうか。でもくれぐれも気を付けるんだぞ。危ないと思ったらすぐに逃げろよ。」
「へへ、今日はよりちーが助けてくれるんでしょ?」
「え?俺が?」
「うん、よりちー強そうだもん!」
「俺なんて弱いよ。会長の足元にも及ばない。」
「ふふ、会長の足元にも及ばないのは大体の人がそうでしょ。」
「そうだけど……とにかく俺は守れるとは言いきれないから。」
「そっかぁ。うん、わかった。よりちーも無理しないでね。危なくなったら一緒に逃げよう。」
「はは、一緒にね。分かったよ。」
「約束ね、よりちー。」
「うん、約束。」
「じゃあ私は準備しに戻るから。ごめんね、急に呼び出して。討伐が終わったらまたゆっくり話そうね。」
「うん。話そう。」
桃香は輝血に手を振り青龍の部隊の元へと走る。
輝血は桃香が戻ったのを確認し、振り返ると懍とアザミと香がニタニタと笑いながら見ているのが視界に入り大きくため息をついた。
「何をニタニタしてるんだよ。」
輝血が懍達の所に戻ると懍達はまだニタニタしたままでいた。
「かーくん、あの人と知り合い?可愛いねぇ?あの人。彼女?」
「違うよ。昔一緒に暮らしてたってだけ。」
「一緒に暮らしてた?!」
香が食いつくと輝血は香の頭をはたく。
「施設な。変な意味じゃないから静かにしろ。……アザミと香も討伐参戦?」
「私達は治療だけどね。青龍赤龍から討伐参戦するのは隊長と幹部位じゃない?」
「そうなのか。お前達も龍に協力をしているのか?」
「協力というかまあ罪の償いみたいな。ね、アザミさん。」
「そうね。それに輝血が言う通りあの男は怖いわねぇ。女相手でも容赦しないって目を見ただけで分かるわぁ。あぁ、怖い怖い。」
「あの男って会長の事か?」
「そうよ。時々来るのよ。何か情報は知らないか?って。知らないって言ったら、そうか。って帰るんだけど、その時の目がもう全て見透かしているように感じてね。私は青龍と赤龍の隊長の言う事しか聞かないつもりよ。」
「そ、そうなのか。」
アザミはツンとした態度でそんなアザミに香がくっつき、懍が呆れたように笑う。
この光景を見るのが懐かしくて、少し不思議な感じがした。




