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「本日のニュースです。昨夜未明クレセント地区で複数の男性の遺体が発見されました。遺体の損傷が激しく身元確認が取れていません。警察は、行方不明となっている原田さんと原田さんのボディーガードではないか?と、総龍会と共に身元確認と同時に同日から行方不明になっている女性の捜索と犯人の特定を急ぐとの事です。」
ガタガタと揺れる車内にはラジオが流れ、それを聞く二人はニヤニヤと笑みを浮かべる。
「あのおっさん原田って言うのか。」
「名前なんて興味無さすぎて今の今まで知らなかったね。」
「おっさんの護衛も呆気なかった。あれでボディーガード?笑わせるなよ。」
「俺ら二人が近寄った時は強気だったくせに、仲間達も集まれば急に弱気になりだしたのは笑いを堪えきれなかったね。あっさり言うこと聞いて車に乗り込んでそのまま遊ばれて終了。」
二人は楽しげに笑った。
「懍、あの女は?龍も一緒に捜しているらしいけど。」
「ああ、もう大丈夫。2日でここまで堕ちた女は初めてで俺も少し困惑してるんだ。シシッもう俺専属の玩具だから家族には自分で連絡をさせるよ。」
「ふーん。じゃあ俺は女の方は何も考えなくていいか。龍はクレセント地区を中心に捜索すんだろ?その間にパパッと情報集めちゃおうぜ。」
「そうだね。アザミ達は動きにくくなったって怒ってたけど。」
「今度会った時ぶん殴られそう。アザミと香が好きなケーキでも買って行くか。」
輝血と懍はケラケラと笑い声を響かせながらアビス地区へと車を走らせ、不気味な森を抜け荒れた道を進むと疎らに灯る明かりが目に入る。
「アビス地区到着!」
懍はニコニコと笑い車のスピードを上げた。
「中に入ったらとりあえず情報収集な。懍、女がいても今日は連れ帰らないぞ。」
「分かってるって、かーくんこそ気に入らないからって殺しちゃ駄目だよ。」
「殺しはしないよ、約束は出来ないけど。」
「ちょっと!約束してよ!」
二人は目を合わすと幼い子供のように笑い合う。
アビス地区への入り口はゴミが散乱し酷い悪臭を放っていた。
車から降りた二人は顔を歪める。
「これは俺らが住む場所より酷い。さすがこの辺で一番荒れてると言われてるだけはあるな。」
輝血が足元に転がる空き缶を蹴ると、カラカラと音を立て転がる空き缶はアビス地区の中へと入っていく。
「かーくん、見てあれ。シシッ歓迎されてるよ。」
「ああ、目ん玉ギラギラさせて歓迎してくれるなんて嬉しいね。」
空き缶が転がる先に座っていた集団は立ち上がると輝血と懍を睨み付ける
「ねえ、かーくん。情報収集するんだよね?」
「そうだよ。へへっ、その目的を果たす為なら少し手荒になっても構わないよな?」
二人がニヤニヤと笑みを浮かべながらアビス地区の中へと入ると、二人を睨み付けていた集団はそんな二人を見て笑い声を上げた。
「全員で新人の歓迎会をするぞー!!出てこーい!!!」
集団の内の一人が大声で叫ぶと目をギラリと光らせた人が荒れた家の中から次々と顔を出し歩く二人を視界に捉える。
「ワァオ、本当に歓迎されてるよかーくん。」
「手荒な歓迎、かな?ははっ、俺達もそれに応えよう懍。」
二人は集団の先頭に立つ男の前で足を止める。
「こんばんは、迷子の子猫ちゃん。」
男が二人にそう声をかけると周りの男たちが笑い、輝血と懍は顔を合わせニタニタとした表情を見せると、そんな二人を見た男からは笑顔が消えた。
「これだけの人数に囲まれて笑う余裕があるのか?子猫ちゃん。」
男は輝血と懍の顔をマジマジと見つめながら問う。
「これだけの人数?ははっ、笑わせるなよ。うちの半分にも満たない。たった数人だろ。」
「そうそう。それに全員大したこと無さそうだしね。」
ケタケタと笑いながら話す二人を見て周りの男達の笑い声は止み罵声が飛び交う。
輝血と懍は家の中から罵声を浴びせる男達を舐めるようにして見る。
「そういう所だよ、大したこと無いって言われるの。」
「安全な場所から人を傷つける言葉を投げかけ、その言葉を元に俺達がこの場で命を絶ったとしてもお前らは、自分は関係ない。とか言い出すタイプだろ?卑怯で弱虫な連中が集まると強くなった気になってキャンキャン吠えてうるせぇんだよ。まずはその家から出てこいよ、話はそれからだろ?弱虫。」
「俺達が子猫ちゃんなら弱虫なんて遊び道具でしかないじゃんね?かーくん。」
「ははっ、気が済むまでいたぶって道端にでも捨てるか?」
何も言い返せない男達は口を閉じ笑い合う二人を睨み付けた。
「子猫ちゃん達は口が達者だね?でもまあ確かに安全な場所からの罵声、良くないね。代わりに俺が謝ろう。気を悪くさせてすまなかった。」
男は二人に頭を下げた。
「お前に謝られてもなぁ?一言でもつまんねー言葉吐いた奴が一人一人謝りに来いよ。許すとは言ってないけど。」
「イシシッ。弱虫がそんなこと出来るわけないじゃん。」
「でもまあアンタがこの弱虫率いてるって事は分かった。躾はちゃんとしな?」
輝血が男に近付き頭をポンと叩くと、男は閉じていた目を開き拳に力を込め輝血の腹に打ち込んだ。
「っ…!」
腹を殴られた輝血は後ろに倒れ込むと腹を押さえる。
「あんまり調子に乗るなよ?子猫ちゃん。ココは俺らの縄張りだ。勝手に入り込んできて偉そうな事抜かしてると殺しちゃうよ?」
男はニタニタと笑う。周りの男達は「いいぞー!」「もっとやれー!」「殺せー!!」と盛り上がる。
男は両手を上にあげ周りに笑みを見せる。
「俺はアンフェイスフルの柏木 総一郎。俺の名を覚えて逝ける事を有難く思えよ、子猫ちゃん。」
男は懍と倒れたままの輝血にそう言うと再び拳に力を込めた。
「あーあ、折角かーくんが殴るのを我慢してあげていたのに。馬鹿だねぇ?」
懍は柏木にそう言うと手をヒラヒラと振った。
「何を言ってるんだ子猫ちゃん?仲間の子猫ちゃんは……。」
男は輝血に視線を向けると、拳を震わせた。
倒れ込み空を見上げる輝血は不敵な笑みを浮かべる。
目に光は無く、据わっている。
「子猫ちゃん子猫ちゃんってうるせぇんだよ。ははっ、仕方ねぇな。遊んでやるよ。」
輝血は上半身を起こすとその目で柏木を捉えた。




